【プレビュー】人はどのように「死」と向き合い、生きてきたのか――「TOPコレクション メメント・モリと写真―死は何を照らし出すのか」展 東京都写真美術館で6月17日開幕

マリオ・ジャコメッリ 〈やがて死がやってきてあなたをねらう〉 1954-1968年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵 Courtesy Archivio Mario Giacomelli © Rita e Simone Giacomelli

TOPコレクション メメント・モリと写真―死は何を照らし出すのか
会場:東京都写真美術館 2階展示室(東京都目黒区三田1-13-3)
会期:2022年6月17日(金)~9月25日(日)
休館日:月曜休館、ただし月曜日が祝祭日の場合は開館し、翌平日が休館。
アクセス:JR恵比寿駅東口から徒歩約7分、地下鉄日比谷線恵比寿駅から徒歩約10分
観覧料:一般700円、学生560円、中高生・65歳以上350円。
※最新情報は公式サイト(https://topmuseum.jp/)で確認を。

TOPコレクション展は、東京都写真美術館の3600点あまりの所蔵品の中から珠玉の名品を紹介する展覧会。今回は「メメント・モリ」をテーマに、死の画像を描いた版画作品や、ウジェーヌ・アジェ、W.ユージン・スミス、ロバート・フランク、マリオ・ジャコメッリ、藤原新也などの写真を紹介。人々がどのように「死」と立ち向かい、たくましく生きてきたかを探っていく。

ハンス・ホルバイン(子)『死の像』より 《老人》(試し刷り) 1523-26年頃 木版 国立西洋美術館蔵

「メメント・モリ」は「死を想え」という意味のラテン語。キリスト教社会では「人々の日常がいつも死と隣り合わせにあること」を示す警句だった。ペストが大流行した中世ヨーロッパで、ガイコツと人間が踊る様子を描いた「死の舞踏」のイメージと結び付き、絵画や音楽など、様々な芸術分野の題材となるようになった。まず展示されるのが、ハンス・ホルバイン(子)の版画『死の像』。約500年前に活躍したこのドイツ人画家の一連の作品は、印刷業者が版権を巡って争うほどの人気だった。

ロバート・キャパ〈フラーガ ア ラゴン前線、スペイン 1938 年 11 月 7 日〉1938 年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

一瞬の「現実」を切り取り、感光剤によってイメージを定着させる「写真術」は、人間という存在がもろく、移ろいやすい時間の中にあることを示すものであるともいえる。中世の人々がホルバインの版画に生と死の意味を見いだしたように、現代に生きるわれわれも、写真表現の中から「メメント・モリ」を見いだすことができるのかもしれない。フランスの哲学者、ロラン・バルトなどの著作をヒントにしながら、「メメント・モリ」と写真の関係を示す作品を展示する。

荒木経惟〈センチメンタルな旅〉より 1971 年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵 ©Nobuyoshi Araki

戦争、飢餓、伝染病……そんな極限状況に置かれていなくても、死を身近に感じる人々は少なくない。故郷を離れ、新たな糧を求めた人々。心の拠り所を見失い、孤独と向き合った瞬間。リー・フリードランダー、荒木経惟らの作品を通じて、「メメント・モリ」と「孤独」の関係性にも着目する。

ヨゼフ・スデック 《身廊と下側の眺め、聖ヴィート大聖堂の新しい部分の南側》 〈聖ヴィトゥス〉より 1928年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

「死」というゴールを見据えることは、日々の生活の中で目に見える「世界」にとらわれがちだった私たちにとって、「生」を捉え直し心の安らぎを得ることにつながるのではないか。今回の展覧会では、ウジェーヌ・アジェ、藤原新也らの作品を通して、「死を想う」きっかけとなり得る写真作品との出会いから、作品がどのように見る人たちの心に訴えるのかをも考察する。

ハンス・ホルバイン(子) 『死の像』より 《行商人》(試し刷り) 1523-26年頃 木版 国立西洋美術館蔵

(読売新聞美術展ナビ編集班)