【宝石展】『七つ屋 志のぶの宝石匣』の二ノ宮知子先生が「美術展ナビ」に描き下ろしイラスト! 先生にインタビュー「本物を味わって」

Ⓒ二ノ宮知子/講談社

Ⓒ二ノ宮知子/講談社

 国立科学博物館(上野公園)で開催中の特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」(6月19日まで)で、漫画家の二ノ宮知子先生が「美術展ナビ」に描き下ろしのイラスト2枚を寄せてくださいました。

二ノ宮先生が『Kiss』に連載中の「七つ屋 志のぶの宝石匣」の主人公、倉田志のぶと北上顕定が宝石展の会場を訪れた際の感想を作品にしてくれました。二人のキャラクターが現れていますね。

二ノ宮先生にインタビュー 「本物の迫力、ぜひ味わって」

宝石展は「七つ屋 志のぶの宝石匣」とコラボ。展示会場には二ノ宮先生の描き下ろし作品が展示され、宝石とともに来場者を楽しませています。先日、二ノ宮先生が展覧会を鑑賞した際、「美術展ナビ」では、案内役を務めた同博物館の門馬綱一研究主幹にも同席してもらい、インタビューしました。小さいころから宝石に強い関心を持っていたという二ノ宮先生。さすがの観察眼を見せてくれました。(聞き手・読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)

「ネタの宝庫」の展覧会

――展示をご覧になった感想をお聞かせください。

二ノ宮 宝石の「いろは」というか、どこで作られるかから始まり、科学的なものもあり、展示の数がとにかく多くて楽しかったです。宝石の勉強したい人たちも皆楽しめる展示になっていて、私もすごく楽しんで見ました。

――門馬さんは一緒にご覧になって、二ノ宮先生の反応はいかがでしたか?

門馬  本当に宝石がお好きなんだな、っていうのが伝わってきました。ご一緒して楽しかったです。

二ノ宮 「これがほしい!」しか言ってなかったですけど(笑)

――先生は「七つ屋 志のぶの宝石匣」ですでにたくさんの種類の宝石を描いていますが、まだ取り上げていない宝石があるようですね。

二ノ宮 そうですね。これまだ描いていないな、っていう視点でも見ていましたね。あと何冊描けるかな?(笑)

――ご覧になって作品の構想が変わりましたか?

二ノ宮 変わることはないですけど、連載が長引けばいいな、と(笑)

――出版社さんも喜びますね。

二ノ宮 私にとってはネタの宝庫となる展覧会になりました。

「光る石」のインパクト、マリー・アントワネットの美意識

—―その中でも印象に残った展示を挙げてください。

二ノ宮 「光る石」は楽しいですね。あんなに光る石はなかなかないです。

—―門馬さん、あれは展示の中でもかなり工夫したセクションですよね?

門馬 やっぱりインパクトがあって、好きな人は多いだろうということで、光る石を集めよう、っていう構想は最初からありました。やはり宝石展なので、必ず宝石になるものでないといけないし、原石が出ているだけだと、「これは鉱物標本でしょ?」と見られてしまうので、磨いた「ルース」(原石を研磨し、カットした裸石)をすべて隣に置くことにこだわり、頑張って物を探しました。

—―二ノ宮先生のイラストが展示に添えられてました。あのアイディアも門馬さんが考えたのですか。

門馬 漫画読んで、そのままのカットで展示に使えそうなところをまず抜き出して、どこに配置しようかと考えました。蛍光コーナーは室内を暗くするので、漫画を置く予定はなかったんですけれど、「光る石」のそばに置いてみたら、見ることができたので、あのようにしました。

――後半の第5章では、歴史的な宝石が並びました。

二ノ宮 そうですね。生を見るとやっぱり感動します。マリー・アントワネットゆかりのブレスレットなど、実物で見ると迫力が違いました。

ルビーとダイヤモンドのブレスレット 1816年以降 フランス 個人蔵 協力:アルビオン アート・ジュエリー・インスティテュート マリー・アントワネットの長女の旧蔵で、アントワネットの美学を継承しているとされる

――やはりアントワネットのイメージに合致していましたか?

二ノ宮 彼女らしいキャラクターが出ていました。本当に可愛らしい繊細なもので、美的感覚というか、美意識の高さがとても分かるものでした。

河原で出会った「きれいな石」で目覚める

――二ノ宮先生は、音楽(のだめカンタービレ)と宝石(七つ屋 志のぶの宝石匣)のどちらを先に描こうか考えたというほど、以前から宝石をテーマにした作品の構想をお持ちだったそうですね。どういうきっかけで宝石に関心を持ったのでしょうか。

二ノ宮 私は山や川の自然に恵まれた埼玉県の秩父の生まれで、小さいころは河原遊びをして、化石やきれいな石を見つけるのが好きだったのです。そのころから「宝石が出たらいいのに」とか、そういう妄想にふけっていました(笑)。いつか鑑定などを学べる学校に行ってみたいなあ、とは思っていたのです。でも具体的な作品に使うモチーフにするのでない限り、なかなか機会がありませんでした。それでまず音楽のもの(のだめカンタービレ)を描いたあと、少し時間ができたので、取材を兼ねて宝石のことを学ぶ学校に行ってみたのです。

――実際に行ってみていかがでしたか?

二ノ宮 そういう学校で勉強すれば、本物かどうかくらい分かるんだろうと思ったら、分からなくて。何回やっても見分けられなかったです。才能がなかったのかな。短い期間だったのですけれど、そういう事がすごい面白かったです。

――志のぶみたいにはいかないわけですね?

二ノ宮 そうなんですよ。あんな風にかっこよく描いてますけど…(笑)

会場のあちこちに二ノ宮先生のイラストが展示されている

――すると先生にとって、志のぶのようなスーパーマンのキャラクターはひとつの理想なのですね。

二ノ宮 あれはズルいですよね(笑)。普通機械を使わないと分からないものが分かっちゃう、っていうのは。

――門馬さんは、研究者の立場から見て、「七つ屋 志のぶの宝石匣」のような作品を通じて、宝石に関心が集まるのはいかがですか?

門馬 石への入り口として、宝石が好きで…っていう方、それなりに多いと思いますので、非常に嬉しいです。本当にたくさん取材されて、色んな事描かれているので、そういうので好きになった方が、また会場に来てくださったらすごく嬉しいなって思います。

「気合い」で色彩感を表現

――宝石は、展示でも「彩り」がテーマになっていたほど、色がとても大事ですが、漫画だとどうしても色彩に限りがある難しさがあると思います。どのように「本当はカラーなのだよ」という表現をするのでしょうか。

二ノ宮 「のだめ」の時もテーマが音楽だったから、本来は描けないものだったのですが、でものだめも何とかなったし、気合で描いたら色が見えてくるはず、と思っています(笑)。幻が見えてくるんじゃないかと。具体的にはトーンの使い方などで、白黒でも違いが出るようにはやっていますね。あとはみんなが幻が見えてくれれば、と思っています。

「宝石離れ」にも一石投じたい

——最後は気合ですか。

二ノ宮 そうなんです。思っていれば伝わると思います。実際は、宝石も音楽も実物があります。音楽は聴こうと思えば聴けるし、宝石も見ようと思えば実物を見られる機会はたくさんあります。そこは幻じゃなく実物を見てほしいです。若い世代の「宝石離れ」が言われているようですが、買える値段のものもあるよ、と伝えたかったところもあります。「宝石なんて買えるわけない」って思っている若い人たちが結構いるようなので、いやいや、買えるものはあるよ、ということは示していきたいです。

——人間は有史以来、宝石に惹かれ続けて今に至っていますが、先生はなぜ人は宝石に惹かれるのだと思いますか?

二ノ宮 河原を歩いていて、きれいな石があると、みんな「うわー!」って声が上がるじゃないですか。小さいころから、体験的にありませんか?海に行って、きれいな貝があったら持って帰るとか。そういうキラキラしたものを見つけると、「わ!」って、宝物のように思うのは、人間の性だと思います。

——最後に、宝石展に足を運んだらこんな風に楽しめるよ、というメッセージをお願いします。

二ノ宮 鉱物ファンも宝石ファンも、アンティークファンも、みんな楽しめる展覧会だと思うので、絶対来た方がいいです!

二ノ宮知子(にのみや・ともこ):埼玉県出身。1989年、『London  ダウト・ボーイズ』でデビュー。『トレンドの女王ミホ』『天才ファミリー・カンパニー』など次々にヒットを飛ばす。『のだめカンタービレ』は2004年の講談社漫画賞の少女部門を受賞、ドラマや映画化され社会現象に。『七つ屋 志のぶの宝石匣』は2013年にスタートし、現在も連載中。

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