【開幕】「阿弥陀如来 -浄土への憧れ-」根津美術館で7月3日まで

阿弥陀八大菩薩像 朝鮮・高麗時代 14世紀 根津美術館蔵

企画展「阿弥陀如来 -浄土への憧れ-」
会場:根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)
会期:2022年5月28日(土)~7月3日(日)
休館日:月曜日
アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」下車、A5出口から徒歩8分
入館料:一般1,300円、学生1,000円 *中学生以下は無料 オンライン日時指定予約制。予約の定員に空きがある場合のみ当日券(一般1,400円)を販売
詳しくは美術館の公式ホームページへ。

開幕前日の内覧会を取材しました

地獄でなく極楽がいいーー。そんなシンプルな人々の願いは日本も高麗も一緒でした。根津美術館(東京・南青山)で5月28日(土)から始まる企画展「阿弥陀如来 -浄土への憧れ-」の内覧会に伺いました。

日本の阿弥陀信仰は飛鳥時代から。斉明天皇4年(658年)の光背の裏側には亡き夫が「恒(つね)に浄土に生まれ」(読み下し文)るように祈りを込めて仏像を作ったことが刻まれています。単眼鏡をオススメ。

光背 飛鳥時代 斉明天皇4年(658年)根津美術館蔵

この頃(古代)の阿弥陀像としては昨年、東博の「聖徳太子と法隆寺」展で展示された国宝の伝橘夫人念持仏(法隆寺蔵)があります。阿弥陀三尊の足元に広がる池の模様がまさに浄土世界だそうです。

平安時代になり密教が入ってくると、むしろ阿弥陀信仰は盛り上がります。その立役者の一人が天台宗の円仁だったそうです。重文「金剛界八十一尊曼荼羅」(鎌倉時代)の中心の大日五尊の上(西を示す)に阿弥陀五尊が描かれています。ここでは「最澄と天台宗のすべて」展とつながりました。

重要文化財 金剛界八十一尊曼荼羅 (部分) 鎌倉時代 13世紀 根津美術館蔵

平安時代から鎌倉時代にかけて、貴族や武士、そして庶民にも浄土信仰は広がります。浄土信仰のオリジンとされたのが、唱える念仏は口から阿弥陀仏になった中国・唐の僧侶 善導でした。今月まで東博で開かれていた「空也上人と六波羅蜜寺」展にもつながりました。

善導大師像 室町時代 15世紀 根津美術館蔵

浄土信仰ブームで、阿弥陀の古い仏像や仏画が「再発見」されます。現在ご開帳中の善光寺(長野)の本尊や、7月に奈良博で「中将姫と當麻曼荼羅」展が開かれる當麻寺(奈良)の曼荼羅などです。その複製などが多く作られました。

当麻曼荼羅縁起絵巻模本 冷泉為恭筆 (部分) 江戸時代 19世紀 植村和堂氏寄贈 根津美術館蔵

そんな善光寺式の阿弥陀三尊で、鎌倉時代に造られた観音菩薩立像(神奈川県立歴史博物館、写真右)と勢至菩薩立像(根津美術館、写真左)が本展に伴う調査の結果、セットだったことが分かり、並んで展示されています。

右:観音菩薩立像 鎌倉時代 13世紀 神奈川県立歴史博物館蔵 左:勢至菩薩立像 鎌倉時代 13世紀 根津美術館蔵

朝鮮・高麗時代の阿弥陀信仰の展示も興味深いです。日本では阿弥陀さまは画面左からお迎えに来ますが、高麗は右からがスタンダードとのこと。

阿弥陀三尊来迎図 鎌倉時代 14世紀 根津美術館蔵
阿弥陀如来像 朝鮮・高麗時代 14世紀 根津美術館蔵

本展のオリジナルグッズは1点。オリジナル香「阿弥陀」(1200円)。白檀をベースに丁子、乳香などの伝統的な香料にスズランをイメージした香りが加えられています。

企画展「阿弥陀如来 -浄土への憧れ-」は根津美術館で5月28日から7月3日まで。オンライン日時指定予約制です。


(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)