【レビュー】祝完結!関連資料とイラストからひもとく「ゴールデンカムイ展」の魅力をたっぷり紹介

「ゴールデンカムイ展」キービジュアル

東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)にて、「ゴールデンカムイ展」が開催中です!
2022年4月28日にフィナーレを迎えた、野田サトル氏による漫画『ゴールデンカムイ』。
舞台は明治末期の北海道・樺太。網走監獄の死刑囚が秘蔵した埋蔵金を巡って、主人公の杉元佐一とアイヌの少女アシㇼパが金塊争奪戦へと挑む、アクションあり、ギャグありの“和風闇鍋ウエスタン”な物語です。

本展覧会は物語の完結を記念し、イラストや関連資料を用いてその魅力を追う構成となっており、コアなファンから、一気読みで興味を持った人まで幅広く楽しめる内容です。

関連資料と豊富なイラストから広がる『ゴールデンカムイ』の世界

展覧会は全部で6つのゾーンから成り立っています。

第1ゾーン 「金塊争奪戦の開幕」(会場風景)©野田サトル/集英社

第1ゾーン「金塊争奪戦の開幕」では、象徴的なシーンや関連資料を交えながら主要キャラクターの人物像を、第2ゾーン 「24人の刺青囚人」では、金塊の在処ありかを示す刺青いれずみが彫られた24人の囚人たちをそれぞれ通覧していきます。続く第3ゾーンは「命を繋ぐものたち」と称し、北海道アイヌや樺太アイヌをはじめ、作中に登場した様々な文化と生活を紹介します。

第5ゾーン 「黄金色名画廊」(会場風景)©野田サトル/集英社

物語の中でも節目となる3つの戦いを、名場面を通じて振り返る第4ゾーン「それぞれの役目」。連載初期から今までを飾った50点以上ものカラーイラストが楽しめる第5ゾーン「黄金色名画廊」を経て、最終ゾーンの「そして未来へ」へと至ります。

このように第1ゾーンから第3ゾーンまでは主に資料性の高い内容、第4ゾーンからはビジュアルに軸を置いた内容となっており、「関連資料で読み解く設定と背景」、「イラストで追う物語」という2つの柱で作品をひもといているのがわかります。

資料によって活きる設定

ヒグマの剥製(国立科学博物館蔵) ©野田サトル/集英社

『ゴールデンカムイ』の魅力のひとつに、豊富な知識に裏打ちされた物語の深みが挙げられます。アイヌの文化から武器の描写、植物の特性や動物の習性──テンポの良い活劇の中に盛り込まれた様々なエピソードから、本作のファンになった方も多いことでしょう。

会場では登場人物が作中で所有していたもの、身につけていたもののモデルとなった資料を、実際に展示。さらには物語の影の主役ともいえるヒグマの剥製も紹介しています。
おおよそのサイズ感は把握していたつもりでも、実際にヒグマの姿を見ると、その大きさに圧倒されるはず。あらゆるものを剥いでいく爪も、ご覧の通りです。

ヒグマの剥製/部分(国立科学博物館蔵) ©野田サトル/集英社

それでは主人公・杉元佐一の持ち物を見てみましょう。軍帽や背嚢、味噌を入れていた曲げわっぱなど作中に登場したもののモデルとなった資料が展示されています。214話で書影が登場した『少女世界』もありますね。『少女世界』は実際に明治期に発行されていた雑誌で、執筆陣には川端康成らが名を連ねていました。

すべて作者所蔵 ©野田サトル/集英社

また、杉元の相棒であるアイヌの少女アシㇼパが身につけていたマタンプㇱ(鉢巻き)や弓、マキリ(小刀)などの資料も展示。本展に出陳されている関連資料は、モデルに近い資料および、作中に登場したもののモデルとなった資料をもとに構成されています。

テタラぺ(草皮服・小樽市総合博物館蔵)、カリンパウンク(弓・平取町立二風谷アイヌ文化博物館蔵)、その他はすべて作者所蔵 ©野田サトル/集英社

こちらは杉元とは対立する立場にある、第七師団・鯉登音之進のサーベルのモデル。作中でサーベルのグリップ部分がアップになった際、鮫革のような質感で描かれていましたが、実際に作者が資料としたサーベルも同様のグリップとなっています。

作者所蔵 ©野田サトル/集英社

作劇に限らず、綿密な取材や資料にあたっている作品は優れたものが多いですが、本作もしかり。こうした現実とフィクションが交わる描写によって生まれるリアリティは、囚人たちの設定にも活かされています。

海賊房太郎は実在した⁉ 当時の新聞記事もあわせて展示

第2ゾーン 「24人の刺青囚人」(会場風景)  ©野田サトル/集英社

網走監獄の囚人たちが紹介されている第2ゾーン 「24人の刺青囚人」で注目したいのが、なんと言ってもキャラクターのモデルとなった実在する人物が載った新聞記事のパネル。
海賊房太郎や稲妻強盗のモデルとなった人物の記事、そして牛山辰馬のモデルとなった牛島辰熊氏の記事が並びます。

「不敗の牛山」のモデルとなった牛島辰熊氏の新聞記事(読売新聞 昭和60年5月28日 朝刊)も展示 ©野田サトル/集英社

作中には土方歳三など、実在する人物をなぞったキャラクターも登場しますが、こうしたフィクションとノンフィクションの狭間へ誘う資料を見ると、よりいっそう物語に引き込まれますよね。
しかし改めて登場した囚人たちを見渡すと、いずれも一筋縄ではいかない人物ばかり。それぞれのエピソードが甦ります。

チタタㇷ゚!アイヌの食文化も

本作は金塊を巡って激しい争奪戦が繰り広げられますが、血生臭い戦いばかりではなく、日常的な暮らしの描写が多いことでも知られています。

第3ゾーン 「命を繋ぐものたち」(会場風景)※料理は実物をもとに作成されたサンプル ©野田サトル/集英社

中でも食事のシーンは印象的。北海道アイヌのコーナーではその食文化を、食品サンプルを用いて紹介しています。
また、旅の途中で出会ったウイルタ民族、ニヴフ民族、ロシアの文化も、パネルを用いて解説。民族や文化は、一面的なものではありません。って知るきっかけを作っていくことが大切であるように感じます。

そのほか「金塊争奪戦に見る当時の文化」として、マタギやサーカス、シネマトグラフなどについても触れられています。それぞれ今も残る文化ですが、100年前と現代とでは、その技術も大きく変わりました。そういったことに思いを馳せることができるのも、この作品の醍醐味と言えるでしょう。

第3ゾーン 「命を繋ぐものたち」(会場風景) ©野田サトル/集英社

全てじっくり読みたい!作者コメント

本展では展示作品に、作者である野田先生のコメントがキャプションとして付されているものが多数あります。こちら、できれば全て目を通してほしい……! というのも、関連資料や各シーンの描写に対し、「これらをどういう文脈で物語に落とし込んだのか」、「このシーンをこういった表現にしたのはなぜか」などが書かれているからです。

第4ゾーン 「それぞれの役目」(会場風景) ©野田サトル/集英社

コメントはいずれも簡潔に書かれた短いものですが、とくに第4ゾーン 「それぞれの役目」では、物語の進行や重要なシーンに対する言及が多数あり、「家に帰ったら1話から読み返したい」という欲求が湧いてくるはずです。

大団円をぜひ会場で

会場には展覧会のために描きおろされたイラストも複数展示されています。物語を完走した後に見るこれらのイラストは、きっと胸に迫るはず。ぜひこの場所で、大団円を改めて味わってみてください。

来場者特典  左から(火曜)「鶴見篤四郎」、(金曜)「尾形百之助」、(日曜)「杉元佐一&アシㇼパ」 ©野田サトル/集英社

また、展示のほかにも曜日替わりの「描きおろしミニ色紙」のプレゼントや、火曜日の「鶴見中尉ナイト」と木曜日の「脱獄王 白石ナイト」に配付されるお面など、楽しい来場者特典も満載です(「鶴見中尉ナイト」は鶴見中尉または鯉登少尉のお面をランダムで配付します)。特筆すべきは、およそ90点にものぼる展覧会オリジナルグッズ。

こちらはオリジナルグッズのほんの一部。すでに公式Twitterなどでも紹介されていますが、かなりインパクトの強いグッズが多数あります。*商品画像は最終サンプルを撮影しております。 ©野田サトル/集英社

展覧会はこの後、京都文化博物館、福岡アジア美術館へも巡回します。
作品の屋台骨となるあらゆる要素が詰まった、超特盛闇鍋展覧会。ぜひこの機会をお見逃しなく!(ライター・虹)

 

ゴールデンカムイ展
会期:2022年4月28日(木)~6月26日(日)※会期中無休
会場:東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
開館時間:11:00~20:00
 *5月20日(金)より平日のみ開館時間を10:00~20:00
(最終入館は閉館30分前)
入場料:一般・大学生1,800円 中学・高校生1,500円 小学生1,000円 ※土日祝日は日時指定券
公式サイト https://goldenkamuy-ex.com
公式Twitter  https://twitter.com/goldenkamuy_ex
お問い合わせ:東京ドームシティ わくわくダイヤル: 03-5800-9999
(受付時間 平日・土日・祝日ともに10:00~17:00)

『ゴールデンカムイ』担当編集の集英社・大熊八甲さんへロングインタビューしました。