【プレビュー】パリが最も華やいだ時代――「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」 SOMPO美術館で7月13日開幕

「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」 |
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会場:SOMPO美術館 |
会期:2022年7月13日(水)~10月10日(月) |
休館日:月曜休館、ただし7月18日、9月19日、10月10日は開館 |
アクセス:東京都新宿区西新宿、JR新宿駅西口から徒歩5分 |
入館料:一般1,600円、大学生1,100円、高校生以下無料。 |
※詳細情報は公式サイト(https://www.sompo-museum.org/)で確認を。 |
フランス近代絵画を中心に豊富な美術作品を収蔵するプチ・パレ美術館。スイスのジュネーヴにあるこの美術館は、1968年に実業家オスカー・ゲーズ氏(1905-1998)のコレクションを公開することを目的に設立された。そのコレクションの中心になるのは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランス絵画。この時代、パリでは、多くの画家たちが実験的な表現方法を探究し、さまざまな美術運動が展開された。印象派、新印象派、ナビ派、フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ・・・・・・。今回の展覧会では全体を6章に分け、それぞれの絵画動向を分かりやすく紹介する。

第1章と第2章は、「印象派」と「新印象派」。19世紀後半、因習的なサロン(官展)に不満を抱いて自主的に展覧会を開いていった画家たちが起こした運動だ。鮮やかな色彩と軽やかなタッチで自然や日常を描いていったルノワールやカイユボットなどの「印象派」、より大胆なタッチと色彩表現を探求したスーラ、シニャック、クロスらの「新印象派」。彼らの作品を幅広く紹介する。

第3章は「ナビ派とポン=タヴァン派」。ポン=タヴァンはフランス北西部、ブルターニュ地方にある小さな町。ここに滞在としたゴーギャンとその周りにいた画家たちのことを「ポン=タヴァン派」という。その影響を受けたパリの若い画家たちが結成したのが、「ナビ派」。現実をそのままに描くのではなく、装飾的な表現を好んだ。第4章は「新印象派からフォーヴィスムまで」。大胆なタッチと鮮やかな色彩で「フォーヴ(野獣)」と批評された作家たち。象徴主義に学んだマティスらは新印象派の分割主義に感化され、さらなる実験的な表現を模索した。一方でヴラマンクらはゴッホやゴーギャンらの重々しい色彩と激しい筆遣いを受け継いだ。数年間の活動の後、フォーヴィスムは終焉を迎え、画家たちはそれぞれ独自の道を歩んでいく。

第5章は「フォーヴィスムからキュビスムまで」、第6章は「ポスト印象派とエコール・ド・パリ」。フォーヴィスム最後の展覧会とされる1907年秋のサロン・ドートンヌではセザンヌの回顧展も併せて開かれ、それを機に画家たちの関心は色彩から空間と量感の表現へと移っていった。複数の視点から空間を捉え、イメージを組み合わせることで現実を再構築しようとしたのがキュビスムだ。そういった前衛的な運動から距離を置き、特定の芸術運動に属さず活動したのがエコール・ド・パリの画家たち。複数の絵画表現を融合させるなどして、それぞれが独自の絵画表現を探究した。

プチ・パレ美術館は1998年以来休館しており、今回の展覧会は、日本では約30年ぶりとなるコレクション展。その特徴は、ルノワールやユトリロなどの著名な画家たちに加え、才能がありながらあまり世に知られていなかった画家たちの作品も数多く収蔵していることだ。今回の展覧会では38人の画家による油彩画65点を展示、印象派からエコール・ド・パリに至るフランス近代絵画の流れが幅広く楽しめそうだ。

(読売新聞美術展ナビ編集班)