【BOOKS】ただのムックじゃない! 『古寺行こう』は共に旅する相棒になる

現在、第6号(金閣寺・銀閣寺)まで刊行されています

2022年、小学館が創立100周年を迎えます。その記念企画として刊行された『隔週刊 古寺行こう』。2022年3月にスタートしたこのウィークリーブックは、隔週火曜発売、京都・奈良の名刹を中心に約130の寺を紹介し、全40巻で完結します。
子どもの頃はいまひとつピンと来なかったけれど、大人になってから古寺の良さに気づいたという方は多いと思います。長い時を経て今に伝わる信仰の空間は、私たちを厳かな気持ちにさせてくれますよね。慌ただしい日常を抜け出して、静かな寺を歩いてみたい──。そんな願望に全力で応えてくれる本。
そう、単に古寺を紹介するだけではありません。タイトルのとおり、「実際に行ってみたい!」と思わせてくれる工夫が施されています。現在創刊号から追い続けている愛読者として、その一部を紹介します。

『古寺行こう』には、5つの大きな特徴があります。

1. 長さ80cm! 迫力の大画面で味わう「寺宝ギャラリー」

はい、どういうことかと言いますと、こういうことです。

第4号(興福寺)の綴じ込みの「国宝 無著菩薩立像」のピンナップ。運慶の最高傑作とうたわれている、2メートル近い木像です。ピンナップの反対の面は世親菩薩立像になっています。サイズの注釈は虹が追加。

こちらは国宝 無著菩薩の原寸ピンナップ。各号このような80cmの巨大なピンナップがついてくるのですが、なにしろ4ページ分ですから迫力がすごい!

上の誌面のアップ。この玉眼のきらめき、まるで生きているかのようです。

それだけではありません。このページは原寸で見ることにも力を入れており、肉眼では見過ごしがちな場所にも、目を向けることができるようになっています。東寺(第2号)の曼荼羅のこの部分、こんなに顔が描いてあったとは!

第2号から。東寺の国宝「両界曼荼羅図」のうち金剛界曼荼羅より、成身会部分。

第3号(東大寺)は、広目天ファンにとっては見逃せません。仏像写真界の四天王ともいえる入江泰吉、土門拳、三好和義、小川光三が広目天を撮影。四者四様の迫力が光ります。

第3号(東大寺)の綴じ込みから。東大寺の国宝「戒壇堂の四天王像」のうち広目天。

これから刊行される号ではどんな寺宝がこのページに登場するのか、密かな楽しみになっています。

2. 仏像、伽藍、行事、朱印帳など、拝観のポイントを網羅!

基本情報と創建からの歴史はもちろん、各建築物の紹介に仏像の配置、国宝・重文(重要文化財)は一目瞭然、加えて仏画・仏具の詳細、さらにはご朱印のデザインと、かなりの情報が収められています。

誌面から。ピンクの注釈部は虹が追加。

3. 連載で仏像と伽藍の「見方」がわかる

連載も力が入っています。仏像イラストレーターの田中ひろみさんの「そうだったんだ! 仏像のフシギ」はイラストを使った図解で仏像の特徴や変遷を。ニコニコ美術館でもおなじみのライターの橋本麻里さんが担当する連載「時代で変わる! 寺院建築の見方」は、神社や都の造りを交えながら寺院の姿を読み解いていきます。西山厚さんによる「古仏+1」もあります。それぞれ、古寺めぐりのみならず、展覧会観賞でも存分に威力を発揮する知識が満載です。

田中ひろみさんの連載「そうだったんだ! 仏像のフシギ」(第5号)より。白毫や水かきは知っていたけれど、髪が青いのと舌が大きいのは知りませんでした!

4. 宿やグルメなど旅の情報も

全巻のラインナップを見ると、関西の古寺を中心に名前がならんでいます。遠方に住む身としては、せっかくそこまで行くのならば、美味しいものを食べ、観光もしたいと思ってしまうもの。

東大寺旧境内にあるレストラン「akordu」を紹介するページ。第3号より。

旧境内にあるレストランなど、本シリーズならではの紹介が載っているのも嬉しいです。また、周辺情報として、「銭湯好き」「タイル好き」から愛されている船岡温泉も紹介されていました。こういう情報、もっと載せてほしい!

5. スマホでも見られるオリジナル境内地図

今シリーズで特にオススメしたいのが、スマホにもダウンロードできる境内地図です。
車椅子の拝観ルートや、トイレの種類、道は舗装されているか、勾配はどうか、車はどこまで入れるかなど、必ずしも健脚ではない場合も考慮したマップとなっています。

第3号 「東大寺」境内地図の一部。段差やベンチ、車いす対応トイレなども記されています。ピンクの囲み線は虹が追加。

古刹はバリアフリー化が難しいところもあるため、訪れるのを躊躇することもありますが、このルートで行けば散策できるとわかるだけでアクティブな気持ちになれますよね。
また、スマートフォンやタブレットにマップをダウンロードできるようにもなっているので、旅先でカバンからいちいち本誌を取り出さなくても大丈夫です。

スマートフォンでの境内地図はこのような見え方になります。ピンチイン、ピンチアウトで倍率も自由自在!

共に旅してくれる存在

小学館はかつて『週刊 古寺を巡る』というウィークリーブックを刊行していましたが、本シリーズはさらに「現地へ行く」という視点が強く打ち出されています。

旅行しようかなと思っている人の背中を押すだけではなく、手を取って共に旅してくれるような本。頼もしい相棒と共に、古寺めぐりの旅、いかがですか?

巨大な三門(国宝)でも知られる知恩院。第14号で登場します。自分が行ったことのあるお寺がどのように紹介されるのかも楽しみです(2021年、虹撮影)

『隔週刊 古寺行こう』は隔週火曜日発売。価格は各770円、※創刊号と第2号は特別価格各490円。購入は書店か、小学館のHPから。
(ライター・虹)