【BOOKS】今こそ知りたいウクライナの文化がわかる3冊

今年2月まで「ボルシチ」や「コサック」はウクライナの文化と知らずにいました。日本では、あまり知られていない国であっても、知りたいと思ったら、複数の日本語で書かれた本を読むことができます。ウクライナの文化や美術に触れることができる3冊を紹介します。

ウクライナを知るための65章


服部倫卓、原田義也編著『ウクライナを知るための65章』(明石書店、2018年)は、ウクライナの国名の由来、国旗の青と黄色の意味から、黄金の騎馬民族スキタイ、キエフ・ルーシとビザンツ帝国、コサックなどの歴史・地理、刺繍などの伝統工芸、ボルシチなどのウクライナ料理、現代の若者たちに人気のサブカルチャーやポップカルチャーといった文化まで、ウクライナについて幅広く網羅しています。
「あの人もウクライナ出身」(光吉淑江・執筆)の章では、意外な人たちが実はウクライナ出身だったことが紹介されています。
例えば『死せる魂』『狂人日記』などでロシア文学の文豪として名高いゴーゴリ(1809~52)は、コサックの末裔として、キーウ(キエフ)とハルキウ(ハリコフ)の間に位置する地域で生まれました。伝説の舞踊家ニジンスキー(1890~1950)はキーウ近郊でポーランド人の両親のもとに生まれました。20世紀最高のピアニストとされる巨匠ホロヴィッツ(1903~89)はキーウ西のジトーミル出身のウクライナ系ユダヤ人でした。アメリカポップアートの代表格アンディ・ウォーホール(1928~87)の両親は、第1次世界大戦期にアメリカに移住したウクライナ系ルシン人(ウクライナ、ポーランド、スロバキアなどに住む人たち)だったそうです。

国境を超えたウクライナ人


今年2月に刊行された『国境を超えたウクライナ人』(群像社)の著者のオリガ・ホメンコさんはキーウ生まれで、東京大学で博士号を取得した日本研究者。
20世紀初頭のパリで活躍した画家でデザイナーのソニア・ドローネー(1885~1979)は、2002年に東京都庭園美術館で回顧展が開催されたこともある日本でも知られた女性です。ルーブル美術館で現役の女性アーティストとして初の個展が開かれるなど、抽象絵画や服飾デザインの歴史に大きな足跡を残した彼女も実はウクライナ出身でした。

あまり知られていないウクライナと日本とのつながりも紹介されています。リヴィフ(リビウ)出身のステパン・レヴィンスキイ(1897?~1946)は、日本に憧れたウクライナ人。その熱意が日本大使館に認められて、建築家の前川國男ら日本人留学生のために建てられたパリ日本館に、唯一の外国人として1年間生活しました。

ウクライナのむかしばなし 空とぶ船と ゆかいな なかま


最後はウクライナの昔話の絵本を紹介します。バレリー・ゴルバチョフ再話・絵 こだまともこ訳『ウクライナのむかしばなし 空とぶ船と ゆかいな なかま』(光村教育図書、2020年刊)の作者は、キーウ生まれでソ連崩壊を機にウクライナからアメリカへ移住した絵本作家です。

(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)