【開幕レビュー】「華風到来 チャイニーズアートセレクション」 選りすぐりの館蔵品で中国美術と「華風」日本美術を堪能する 大阪市立美術館で6月5日まで

左:島成園 《上海娘》 大正13年 (1924) 右:《石造 如来三尊像》 北魏 景明元年(500) 共に大阪市立美術館蔵

特別展「華風到来 チャイニーズアートセレクション」
会期:2022年4月16日(土)~6月5日(日)
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町・天王寺公園内)
開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(5月2日は開館)
観覧料:一般 1,000円、高大生 700円、中学生以下無料
詳しくは館の公式サイト

【追記】閉幕しましたが、会場をVR(バーチャルリアリティー)で見ることができます。こちらのURLから。

大阪市立美術館で特別展「華風到来 チャイニーズアートセレクション」が4月16日から6月5日まで開催中です。
大阪市立美術館は、中国書画や石造彫刻、工芸など、国内屈指の中国美術コレクションを所蔵しています。本展では、同館が誇る中国美術コレクションや、中国美術の影響を受けたとみられる「華風=中国風」の日本美術を紹介します。全作品撮影可能。同館初の試みです。
また同館は、秋から約3年間の大規模改修工事を予定しています。つまり本展は、長期休館前最後の館蔵品による特別展となります。内藤栄館長は「本展を通して、大阪市立美術館を記憶に留めてほしい」と語ります。

憧れの対象だった中国の書画と工芸

第1章 展示風景

中国の美術は、古来より憧れの的でした。第1章「出会えばきっと好きになる。―中国の書画と工芸―」では、人々を魅了してきた中国美術として、文人(詩・書・画に通じた知識人)による書画や工芸などを紹介します。

《堆朱 牡丹文盆》 明時代 15世紀 大阪市立美術館蔵

まず目に留まったのが、《堆朱 牡丹文盆》。深みのある赤色が印象的でした。この赤は、朱漆と黒漆をミルフィーユのように塗り重ねることで作り出されたそうです。

米芾《草書四帖》(展示期間:4月16日〜5月15日) 北宋時代 11世紀末頃 大阪市立美術館蔵

技巧だけではなく、作品に込められた精神性も尊敬の対象でした。人々は書や書画を前にして、そこに刻み込まれた文人の生き様に想いをはせたのです。

唐寅《待隠園図》清時代 18〜19世紀 大阪市立美術館蔵

中国の文人たちが描いた山水画も、人々を魅了しました。山水画に描かれているのは実在する景色ではなく、文人にとっての理想郷です。煩わしい俗世から離れ隠居したいけれども、叶わない。せめて絵画の中に理想の隠居生活を見出したい。そんな想いが込められた山水画は見る者の共感を呼び、癒しや慰めとなったのかもしれません。

ロマンをかき立てる古きものたち

第2章 展示風景

中国では、金属や石に刻まれた文字を分析する金石学が流行したり、石や金属に刻まれた文字を紙に写し取る「拓本」が生まれたりと、古い時代のものが重んじられてきました。

第2章「古いものにはロマンがある。―中国の拓本と工芸―」では、拓本や青銅、陶俑などを紹介。古い時代へのロマンを掻き立てる展示室となっています。

第2章 展示風景
《三彩 駱駝》 唐時代 8世紀 大阪市立美術館蔵

島成園も!中国美術の影響を受けた日本美術

中国の美術や工芸、風俗などは日本の画家たちに影響を与えました。第3章「恋にはいろんな形がある。―日本の絵画と工芸―」では、中国の影響を受けた「華風=中国風」の作品を中心に紹介します。

島成園 《上海娘》 大正13年(1924) 大阪市立美術館蔵

本展のメインビジュアルでもある島成園《上海娘》は、成園が銀行員の夫の上海勤務に同行し、現地の女性をモデルにして描いたものなのだとか。チャイナドレス、蓮型の提灯など、現地の風俗が細やかに映し出されています。頬を染め、手元の蝋燭ろうそくをふと見つめる女性は何を思っているのでしょう……想像がかき立てられました。

森川曽文《蝦蟇仙人図》明治時代 19世紀 大阪市立美術館蔵

他にも、カエルを従えて妖術を使う中国の仙人・蝦蟇仙人がませんにんをダイナミックに描いた《蝦蟇仙人図》、中国宮廷の女性の暮らしを窺わせる《唐美人図襖》など、多様な作品が並びます。

福原五岳《唐美人図襖》 安永2年(1773)大阪市立美術館蔵

華風の表現は、工芸にも及びました。

小川破笠《九貢象 象嵌 硯箱》江戸時代 18〜19世紀 大阪市立美術館蔵 明代の墨の図案集「方氏墨譜」から図様を取り入れている

日本美術や工芸の「華風」の表現の幅は広く、「中国への恋(憧れ)にはいろんな形があった」ことがわかります。

神秘的な石造彫刻が一堂に会す

《石造 如来三尊像》 北魏 景明元年(500) 大阪市立美術館蔵

同館の中国美術コレクションを支えたのは、関西の経済人の収集活動と言っても過言ではありません。大正から昭和初期にかけて、関西の経済人たちは中国美術を熱心に収集しました。なかでも大阪出身の実業家・山口謙四郎(1886〜1957年)は文献資料を読み解き、良質な彫刻や工芸を集めました。その数は、224点に及びます。

第4章「好きならたくさん集めたい。―中国の石造彫刻―」では大阪市立美術館の礎を築いた山口コレクションを中心に、中国の石造彫刻を紹介します。

第4章 展示風景
第4章 展示風景

荘厳な石造彫刻が並ぶ光景に圧倒されます。由来や文様・文字の意味など詳細を記したキャプションからは、一つ一つ丁寧に研究されてきたことが伺い知れました。
石造彫刻への熱意、尊敬、ときめき。収集者の熱い想いが感じられます。

学芸員の一言コメントやグッズにも注目!

キャプションには担当学芸員の「一言コメント」が記されています。クスッと笑ってしまうコメント、新たな視点をもたらしてくれるコメントもありました。ぜひ着目してみてください。

特別展の公式ミュージアムショップには「青銅 刀剣レプリカ」や「清王朝古銭セット」など、珍しいグッズが販売されています。古代中国へのロマンをかき立てられる出土品、神秘的な石造彫刻を堪能した後に目にすると、なおさら興味をそそられました。(ライター・三間有紗)

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