【レビュー】いろいろかわいいネコを楽しもう――「東京・区立美術館ネットワーク連携事業 東京の猫たち」展 目黒区美術館

「東京の猫たち」の展示風景

「東京・区立美術館ネットワーク連携事業 東京の猫たち」
会場:目黒区美術館(東京都目黒区目黒二丁目4-36)
会期:2022年4月23日(土)~6月12日(日)
休館日:月曜日
アクセス:JR山手線・東京メトロ南北線・都営三田線・東急目黒線 の目黒駅から徒歩約10分
入館料:一般800円、高校・大学生、65歳以上600円、中学生以下無料、障がいのある方と介添者手1人は無料
※詳細情報はウエブサイト(https://mmat.jp/)で確認を。

ネコとヒトはとても長い付き合いである。なにしろそれは、古代エジプトの時代に始まるというのだから。とても長い付き合いなので、古今東西、様々なファインアート、ポップアートの素材にもなっている。絵画や彫刻、マンガやテキスタイル・・・・・・、私たちの周りはたくさんのネコで彩られている。

展示されている中野素昻《猫》(豊島区)

東京都内の11区立美術館で作る「東京・区立美術館ネットワーク」の「連携事業」として開催された「東京の猫たち」は、そんな「ネコのアート」を集めたものだ。ネットワークに参加している美術館は規模こそ大きくはないが、それぞれ明確な特徴がある。世田谷美術館は「素朴派」のコレクションで有名だし、板橋区立美術館は江戸絵画を重点的に集めている。台東区立朝倉彫塑館や大田区立龍子記念館は、名前の通り彫刻家の朝倉文夫、画家の川端龍子の作品を収蔵。そして“ホスト役”の目黒区立美術館は近現代作家の作品を収集、というふうに。そして、今回の展覧会には、それぞれの美術館の個性を生かした、なかなか味のある作品が集まっている。

展示されているオルネオーレ・メテッリの《楽師と猫》(世田谷美術館)

世田谷美術館が出品した《楽師と猫》。がらんとした街の中、1人の男性がネコの前でトロンボーンを吹いている。ジョルジョ・デ・キリコの《通りの神秘と憂愁》を思わせる不思議な光景だ。ただ、よく見ているといろいろおかしい。ネコの体はなんだか建物にめりこんでいるし、男が吹くトロンボーンの角度も少し変だ。シュールレアリスムのようで何だか違う。よく分からないのだけど、妙に心に残る絵なのである。

市川甘斎《葛飾真草画譜 上》 画帖、すみだ北斎美術館 (4月23日~ 5月22日の展示)

葛飾北斎とその一門の作品を中心に収集しているすみだ北斎美術館から出品されている市川甘斎の《葛飾真草画譜 上》。甘斎は、葛飾北斎の弟子の弟子である。「これはネコやなくて、トラやんけ」というツッコミが来そうだが、まあ、そこは同じネコ科ということで。上空ナナメ45度を見上げているトラの表情が、何とも言えず楽しい。目黒区美術館からの《シロ 1》。鉛筆画の名手、木下晋らしい緻密で繊細なタッチで、うずくまった姿から生命のエネルギーが溢れ出してくるようだ。

木下晋《シロ 1》1988年 鉛筆・ケント紙 目黒区美術館

しかしまあ、アーティストという人たちは本当にネコが好きなようだ。構おうとするとぷいといなくなる。そのくせに、パソコンで仕事をしようとするとキーボードの上に寝っ転がってくる。わがままで気分屋。それでいて甘えん坊。ちょっとだけ野性の匂いもする。そんなところが、制作意欲をくすぐるのだろうか。各美術館の所蔵品にも、藤田嗣治、朝倉文夫、熊谷守一・・・・・・そうそうたる面々の作品が並ぶ。「この人は本当にネコが好きなんだろうな」と思うのは朝倉文夫で、子ネコが団子になっていたり、人間に首ねっこをつかまれていたり、制作されている塑像には実にいろいろな表情が刻まれている。

朝倉文夫《たま(好日)》1930 年、ブロンズ 台東区立朝倉彫塑館

世田谷美術館から出品されている稲垣知雄の版画も魅力的。何と言っても印象的なのは、そこにある「ネコの目」だ。何を考えているのか、分かるような分からないような。こちらの言っていることを理解しているような、そうでもないような・・・・・・。凜々しかったり、かわいらしかったり。「これがネコだよね」という表情の数々が、いろいろな角度から描かれている。

展示されている稲垣知雄の版画。左から《あうんの猫(あ)》、《ボス猫(ア)》、《あうんの猫(うん)》(世田谷美術館)

なるほど、区立美術館には魅力的な作品がたくさんある。ひとつの館だけでは難しくても、複数の館が協力すれば、面白い美術展がいろいろと出来そうだ。今回の展覧会は、そんなことを改めて見せてくれた。まあ、そんな難しいことを言わなくても「ネコのアート」はかわいくて楽しい。都会で手軽にいやしを味わおうと思ったら、ちょうどいい感じの展覧会である。

(事業局専門委員 田中聡)

柴田是真《猫鼠を覗う図》 1884 年、絹本著色(一幅) 板橋区立美術館

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