温泉だけじゃない!アートもたっぷり楽しめる【箱根&熱海】を旅してきました

箱根と熱海。それぞれ有名な観光地のため、独立した行き先として考えられることが多いですが、意外にも公共交通機関を使ってハシゴできてしまうこと、ご存知でしたか?
箱根湯本駅から熱海駅までは、小田原経由で約50分。日数に余裕があるなら、思い切って周遊も可能です。何日かかけて両エリアのアートスポットを歩いてきました。(ライター・虹)

箱根エリア

モネ、リヒター、国内有数の西洋美術 ポーラ美術館

箱根のアートスポットといえばポーラ美術館は外せません。美術展ナビでもおなじみですね。4月9日に始まった「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」が現在開催中です。

ポーラ美術館
所在:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:入館料:大人1,800円 大高生1,300円 中学生以下無料
公式ホームページ:https://www.polamuseum.or.jp/

一歩足を踏み入れたらそこは別世界 箱根ガラスの森美術館

箱根と言えば、一度はその名を耳にしたことがある「箱根ガラスの森美術館」。年間を通じて多くの来館者が訪れる、人気のスポットです。
同館はポーラ美術館と同じ仙石原エリアにある、日本初のヴェネチアン・グラス専門の美術館。

本場のヴェネチアン・グラスも手に入るミュージアムショップ

15世紀から19世紀にかけて作られた歴史ある品から、現代の作家による作品までを幅広く紹介。美術館を含む敷地内はヴェネチアをイメージして作られており、生演奏を聴きながら食事を楽しめる本格的なカフェ・レストランや、体験型のガラス工房、豊富な品揃えのミュージアムショップも備えています。


さまざまな楽しみ方のできる箱根ガラスの森美術館ですが、白眉はやはり美術館の展示内容でしょう。築き上げられたコレクションは、じっくり鑑賞したいと思わせる見応えです。加えて雰囲気を盛り上げる内装には、思わず感嘆の声があがるはず。

美術館でガラスの製造工程を鑑賞した上で体験工房に行くと、よりヴェネチアン・グラスへの理解が深まるのではないでしょうか。
また、前述のカフェ・レストランは人気が高いため、利用を考えている方は入館後に予約を入れることをお勧めします!

箱根ガラスの森美術館
所在:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
開館時間:午前10時~午後5時30分(入館は午後5時まで)
入館料:入館料:大人1,800円 大高生1,300円 小中生600円
公式ホームページ:https://www.hakone-garasunomori.jp/

究極の足湯も楽しめる 岡田美術館

2013年に小涌谷の温泉郷に誕生した岡田美術館。日本絵画から中国の陶磁器、仏教美術まで東洋美術の本格的なコレクションを擁する同館は、常時およそ450点の作品を展示。全5階、約5,000㎡の展示面積を誇ります。

静岡県産の茶葉で作った和紅茶は、イギリスのグレートテイストアワード金賞受賞商品。ほかに地産の牛乳で作ったソフトクリームも人気だそう

来館者を迎えるのが巨大な風神雷神図。こちらは日本画家・福井江太郎氏による大壁画《風・刻(かぜ・とき)》です。そして壁画に向かうようにして設置されているのが、岡田美術館名物ともいえる「足湯カフェ」。
敷地内から湧き出る温泉を活用した100%源泉かけ流しの足湯は、絶妙な温度はまさに極楽! やわらかい風に吹かれながらカフェのメニューを楽しんでいると、「もう今日は一日このままでいい……」と思えてしまうほど。
とはいえ、美術館を目前にしてそれは勿体ないので館内に入りましょう。

現在開催中の「花鳥風月 名画で見る日本の四季」は、前期を「春夏」、後期を「秋冬」に分け、岡田美術館の名品約100件を前・後期全て入れ替えで鮮やかに展開します。

若冲、抱一、北斎、御舟から、なんと田中一村までをカバーするといった幅広いキュレーションは見ごたえ十分。前期であれば、2016年に80余年ぶりに再発見され話題となった、伊藤若冲の《孔雀鳳凰図》も見ることができますよ。

手前 伊藤若冲《孔雀鳳凰図》 江戸時代 宝暦5年(1755)頃 重要美術品 岡田美術館蔵
菱田春草《薊に鳩》(部分) 明治時代後期 20世紀初頭 岡田美術館蔵/展示室にはこのようなタッチパネルもあり、小さく見落としがちな鑑賞ポイントも学芸員の解説入りで紹介されています

常設展も非常に充実しており、美術が好きな方なら1日ここで過ごせるほど。入館料を見たときは少し身構えてしまった人も、美術館を出る頃には「むしろ安い」と思うはずです。リピーター割引もあるので、賢く使って四季の名品を味わいたいですね。


岡田美術館
所在:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
開館時間:午前9時~午後5時(入館は4時30分まで)
休館日:12月31日、1月1日、展示替期間
公式ホームページ:https://www.okada-museum.com/

箱根の隠れ家的なカフェ「ティムニー」

箱根には魅力的なカフェがたくさんありますが、アクセスしやすい店舗は満席になりがちなのが玉に瑕。
そんな中、アクセス良好なうえに落ち着いて旅を楽しむことができるのが「ティムニー」です。
箱根湯本駅のすぐ近く、早川沿いにあるこの隠れ家的カフェでは、川のせせらぎを聴きながらゆったりした時間を味わうことができます。

喫煙エリア。店内は完全分煙となっています

1階と2階にイートインスペースがあり、2階はソファ席や窓辺のカウンター席、喫煙席が用意されています。

日々の喧騒を忘れ、ここから旅を始めるのも良いですね。
小腹を満たすのにちょうど良いメニューも用意されているので、本格的なランチを控えているときにも重宝しますよ。

グリルドチーズサンド ドリンクセットで1,100円

ティムニー (Timuny.)
所在:神奈川県足柄下郡箱根町湯本706-32
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜日
カード不可、電子マネー不可

熱海エリア

風光明媚な環境で東洋美術を味わう MOA美術館

ヘンリー・ムア≪王と王妃≫1952-1953年

「熱海の美術館」と聞いて「MOA美術館」を真っ先に思い浮かべる方は多いでしょう。
東洋美術を専門とするこちらの美術館は、1982年に開館。その後大規模な改修工事を経て、2017年に現在の姿でリニューアルオープンされました。

最初に来館者の目を奪うのは、なんといっても風光明媚なこの眺めでしょう。壁面に施された彫刻は壮大で、まるで古代遺跡のような印象を受けます。

エミール・アントワーヌ・ブールデル《アポロンと瞑想》1912年

展示室には屋久杉や黒漆喰など吟味した素材がふんだんに使われ、また、蒔絵の人間国宝である室瀬和美による巨大な漆塗りの扉が設けられています。窓からの眺めも壮観。随所で確立された美意識を感じることができます。

海を臨む景色が見事。ロビーや展示フロアを手掛けたのは、現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之が主宰する「新素材研究所」です
美しく整えられた庭のほかに、このような里山のようなエリアも歩くことができます。)
建物だけでなく中庭も見応えある造りとなっており、四季折々の草花を楽しみながら散策することができます
尾形光琳による《紅白梅図屏風》(国宝)を所蔵することもあり、敷地内には復元された「光琳屋敷」も
「花の茶屋」の海老天丼。地産地消をコンセプトにしており、庭園を眺めながら食事ができます。尾形乾山の写しの器が使われた「乾山花見弁当」も人気

食事処も充実しており、カフェ、和食、茶室と、どこで休憩を取ろうか迷うほどです。
現在開催中の「大蒔絵展 漆と金の千年物語」は5月8日まで。平安時代から現代までの蒔絵の変遷が優品によって紹介されています。

MOA美術館
所在:静岡県熱海市桃山町26-2
時間:午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日:木曜日 (祝休日の場合は開館)、展示替え日
ホームページ:https://www.moaart.or.jp/

名だたる文豪が愛した名建築 起雲閣

熱海にはブルーノ・タウトが手掛けた「旧日向別邸(現在休館中)」など、数多くの名邸があることでも知られていますが、「起雲閣きうんかく」もそのひとつ。

縁側と座敷の段差を無くした入側造(いりかわづくり)。今でいうバリアフリーですね
ステンドグラスとタイルが美しいサンルーム

現在公開されている起雲閣は和館と洋館から成り立ちますが、実業家の内田信也が1919(大正8)年に実母の静養のために建てた別荘がもとになっています。
よく見ると極力段差を無くした造りをしており、車椅子で生活をしていた母に対する気遣いが随所に見受けられます。

2代目の所有者は「鉄道王」と呼ばれた初代・根津嘉一郎。根津美術館のコレクションを築いた人物でもありますね。
嘉一郎の時代になってから、和館に隣接した洋館が増築されました。アールデコ調のサンルームや、ローマ風浴室など、洋館好きにはたまらない内装です。部屋ごとに細かい工夫や装飾が成されているので、いくら見ても飽きません。


また、庭も嘉一郎手ずから作ったものだそう。作庭が好きだった嘉一郎は、忙しいなか時間を見つけては、足繁く熱海に通ったといいます。

太宰治が宿泊したといわれる部屋「大鳳」。青い壁は「青漆喰」と呼ばれる石川県加賀地方の伝統的な技法です。兵五郎が石川県の出身であったため、このような装飾が取り入れられたと言われています

起雲閣という名前は、3代目の所有者となる桜井兵五郎が、1947(昭和22)年に旅館を開業した際に名付けたものです。

熱海と言えば『金色夜叉』。尾崎紅葉の部屋もあります

志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治、三島由紀夫など著名な文豪たちに愛され、しばし執筆活動の場となりました。館内には文豪にちなんだ部屋があり、そこでゆかりの品を見ることもできます。
岩崎別荘、住友別荘と並び称される「熱海の三大別荘」の一つ、起雲閣。館内の喫茶室も優美ですが、駅までの道すがら三島由紀夫が愛した喫茶店「ボンネット」に寄ってみるのも一興です。

起雲閣
所在:〒413-0022 静岡県熱海市昭和町4-2
時間:午前9時~午後5時(入館は4時30分まで)
料金:大人610円、高・中学生360円、小学生以下無料
休館日:毎週水曜日(祝日の場合は開館)、12月26日~30日

熱海の魅力を再発見する「ACAO des ART」

2021年に開催された「ATAMI ART GRANT」の会場風景

昨年(2021年)惜しまれながらも宿泊営業を終了したニューアカオ館。
その後開催された「ATAMI ART GRANT」というアートイベントでは、宿泊営業を終了したニューアカオ館も会場の一つとして選ばれました。

メインダイニング「錦」

若い世代にはなじみの薄かったニューアカオ館ですが、その豪奢で非日常的な空間はあっという間にSNSを中心に知れ渡り、展示内容と相まって多くの人が訪れたことでも話題となりました。
「これがニューアカオ館を見る最後のチャンスになるのかも……」
当時そういった声も多く聞かれましたが、朗報です! 2022年4月29日(金・祝)~5月8日(日)に開催される「ACAO OPEN RESIDENCE #6」にて、再びあの空間が展示会場として使用されます!

カレーを通じ、嗅覚や味覚などを使って食とアートを体験できる「エメラダ」のプログラム

前述のイベントは、熱海の魅力をアートで再発見することを目指したアートプロジェクト「PROJECT ATAMI」のプログラムのひとつ。
PROJECT ATAMIでは、ホテルに滞在して作品を制作する「ACAO ART RESIDENCE」と、アーティストをサポートする仕組み「ATAMI ART GRANT」を2本の柱として取り組んでいます。

『女体(NYOTAI)』Model: Aoi Yamada, Art Director: Midori Kawano

今回ゴールデン・ウィークに開催の「ACAO OPEN RESIDENCE #6」に合わせ、「ACAO des ART」というアートにまつわるさまざまなプログラムも企画されているそう。
五感に作用するリアルな体験を通じ、記憶に残るようなプロジェクトを目指しているとのことで、魅力的なパフォーマンスが期待されます。ぜひ公式ホームページをチェックしてみてください。

「ACAO des ART」
開催期間:2022年4月29日(金・祝)~5月8日(日)
※時間や場所はプログラムによって異なります。詳しくは公式ホームページをご確認ください。
https://projectatami.com/

温泉や景色を楽しむだけでなく、アートも充実している箱根・熱海エリア。
少し足を延ばせば、現代美術作家・杉本博司が設計した『小田原文化財団 江之浦測候所』にもアクセス可能です。
時間をかけて回ってもよし、足しげく通ってもよし。四季折々の楽しみ方をしてみてはいかがでしょうか。(ライター・虹)

昨年末、ニューアカオ館の写真が話題となった虹さんのツイート

 

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