会期後半「鏑木清方展」の注目作品5選! まるで別の清方展 一度見た方もリピートオススメ

東京国立近代美術館で「没後50年 鏑木清方展」が開催中です。会期後半に入った本展を美術展ナビが取材しました。展示作品は会期前半から多くが入れ替わり、まるで別の清方展を見ているかのような印象でした。前回の「前半に見ておきたい5選」に引き続き、数ある作品の中から特に注目したい作品を「会期後半の注目作品 5選」として紹介します。(写真は取材許可を得て撮影)

その1「薄雪」(展示期間:4/1~5/8)

「薄雪」大正6(1917)年 福富太郎コレクション資料室(展示期間:4/1~5/8)

近松門左衛門の戯曲「冥途の飛脚」に取材した作品です。幼い頃から近松の世話物に深く興味を持っていた清方が、最も深く同情する女性は、この梅川であるといいます。

描かれているのは、遊女梅川と馴染みの客である忠兵衛です。遊女梅川を身請けするために、他人のお金に手を付けてしまった忠兵衛は梅川と二人、追手から逃れようとします。

物語の結末がどうなるか、既にお気づきではないでしょうか。「薄雪」という題名は、「やがてはかなく消え行く身の青春の、二人の運命」を象徴していると清方は語っています。

その2「春の夜のうらみ」(展示期間:4/12-5/8)

「春の夜のうらみ」 大正11(1922)年 新潟県立近代美術館・万代島美術館 (展示期間:4/12~5/8)

清方の自己評価で最も高い「会心の作」(会場では星3つで表示)とされた作品です。清方が繰り返し描いた道成寺をモチーフにした作品で、高さは約185センチ、描かれた人物は平均的な女性の等身大くらいでしょうか。目の前にするとドキッとするほどの存在感に圧倒されます。

見上げる視線の先には、愛するがあまりに蛇体となり、安珍を焼き殺したあの道成寺の鐘が見えてくるようです。

その3「道成寺(山づくし)鷺娘」(展示期間:4/5~5/8)

「道成寺(山づくし) 鷺娘」大正9(1920)年 福富太郎コレクション資料室 (展示期間:4/5~5/8)

歌舞伎の舞踊演目である「鷺娘」と「京鹿子娘道成寺」を描いた作品です。彼女たちに怪しい美しさを感じるのは、彼女たちが恋の妄執にとらわれ化身となった、異界の人物だからでしょうか。

左隻の鷺娘には雪、右隻の道成寺には桜が舞う様子がうっすらと描かれています。ぜひ会場で近くでじっくりと見てください。

その4「たけくらべの美登利」(展示期間:4/5~5/8)

「たけくらべの美登利」昭和15(1940)年 京都国立近代美術館 (展示期間:4/5~5/8)

描かれているのは樋口一葉の小説「たけくらべ」の主人公、美登利です。大人びた表情、力なく開いた左手、幼馴染の信如が別れの日に残した水仙の造花を右手に、美登利は何を思うのでしょうか。羽織に描かれたかえでは、若々しい緑色から少しずつ赤く染まっているようです。

美登利が急に子供らしさを失ったとりの市の日を思い起こさせるモチーフとして、おかめの面をつけた熊手の髪飾りが描かれています。

右:「一葉」昭和15(1940)年 東京藝術大学 (展示期間:通期)

右の絵は作者である樋口一葉自身を描いたものです。清方は生前の一葉に会うことは叶いませんでしたが、一葉の随筆「雨の夜」の一節から、針仕事をする一葉の姿を描いています。左右非対称の眉や、固く結んだ口元など、美人画の型を越えた人間らしい表情で描かれています。

足元に広げた小切れには、隣の作品「たけくらべの美登利」の羽織とよく似た楓模様の切れ端を見つけることができます。

その5「讃春」(展示期間:4/12~5/8)

昭和天皇即位の記念として、三菱財閥の岩崎家は清方を始めとする日本画家5人に、屏風の制作を依頼しました。そのうちの一つが清方が描いた「讃春」(昭和8(1933)年 宮内庁三の丸尚蔵館  展示期間:4/12~5/8)です。

ほかの4人の画家が吉祥画題を描くなかで、清方が大画面に描いたのは、右隻に皇居前広場で憩う雙葉女学校の学生。左隻に隅田川で暮らす水上生活者の親子でした。

右隻にはタンポポ、左隻にはバケツに活けられた1本の桜で春の訪れを共通して描きながら、左隻に描かれた水上生活者が鑑賞者に強い印象を与えます。移りゆく時代の中でも清方のまなざしは、市井の人々の生活を忘れることはありませんでした。

会場の東京国立近代美術館を後にすると、目の前には「讃春」の右隻で描かれたような皇居のお濠の石垣と松に出会いました。清方も同じような風景を目にしたのかも、と美術館の帰り道に思いをはせるのでした。

(左)「浜町河岸」昭和5(1930)年,(中央)「築地明石町」昭和2(1927)年,(右)「新富町」昭和5(1930)年 全て東京国立近代美術館 (展示期間:通期)

幻の「築地明石町」3部作だけでなく、ドラマチックな芝居絵や、小説を読んでいるような物語絵など、没後50年という節目にふさわしい充実の展覧会です。そして、清方が大切に描いた市井の人々の何気ない日常。清方の絵を見ると、日々の何気ない小さな幸せに気づかされるのです。まだ訪れていない方も、すでに訪れた方も、ぜひ会場で清方の世界にひたってみてはいかがでしょうか。

没後50年 鏑木清方展
会場:東京国立近代美術館(東京・竹橋)
会期:2022年3月18日(金)~5月8日(日)
休館日:月曜(3月21日、28日、5月2日は開館)、3月22日(火)
開館時間:午前9時30分~午後5時(金曜・土曜、5月1日(日)~5月8日(日)は午後8時まで開館)*入館は閉館の30分前まで
アクセス:東京メトロ東西線竹橋駅より徒歩3分
観覧料:一般1,800円 大学生1,200円 高校生700円 中学生以下無料
京都展 会場:京都国立近代美術館 会期:5月27日(金)~7月10日(日)
詳しくは公式サイト

(美術展ナビ編集班スタッフ・彩)

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