【レビュー】「兵馬俑と古代中国」兵馬俑の変遷はいかに?副葬品が語る古代中国の文化や風俗とは 京都市京セラ美術館で5月22日まで

「兵馬俑と古代中国」が5月22日まで京都市京セラ美術館で開催されています。古代中国の戦乱の時代、人間の姿を木や土で模った「よう」は死後の世界で死者を守るべく、被葬者と共に埋葬されました。日中国交正常化50周年を記念して開催される本展では、日本初公開となる将軍俑をはじめ、陝西省(秦漢両帝国の中心地域)の出土品を中心とした約200点が来日しました。

日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~
会場:京都市京セラ美術館 本館北回廊2階(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
会期:2022年3月25日(金)~5月22日(日)
開館時間:10:00〜18:00 ※ 入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし5月2日(月)は開館
観覧料:一般 2,000円 高校・大学生1,500円 小・中学生900円
静岡県立美術館、名古屋市博物館、上野の森美術館(東京)へも巡回
詳しくは公式ホームページ

等身大は始皇帝の秦の時代のみ

兵馬俑といえば、秦の始皇帝陵から出土した等身大の兵士たちを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実は、兵馬俑が等身大のサイズで作られたのは、わずか15年で崩壊した秦の統一王朝の時代だけなのです。春秋戦国時代の秦でも、秦滅亡後の漢王朝でも、俑はそれほど大きなサイズでは作られませんでした。
本展では、そんな兵馬俑の変遷を3章構成で辿ることができます。

群雄割拠の戦国時代、騎馬用はミニサイズ

本展は、春秋戦国時代からスタートします。第1章「統一前夜の秦―西戎から中華へ」では、春秋戦国時代の騎馬俑や副葬品を紹介。西方の小国・秦が中国統一を成し遂げるまでの道のりに想いをはせることができます。

《騎馬俑》 戦国秦 咸陽市文物考古研究所蔵 一級文物。「一級文物」とは日本の国宝にあたる中国の文化財

戦国時代の墓から発掘された騎馬俑は高さ22㎝と、随分小ぶりです。騎兵や馬の表情はデフォルメされていて、愛らしさすら感じられます。
副葬品からは、当時の人々の考え方や暮らしぶりをうかがい知ることができました。

例えば、鹿や虎の文様が描かれた秦の瓦当からは、秦の人々の動物への愛着心が感じられます。

酒を注いだり貯蔵したりする器、肉や魚を煮る器などからは、秦の食文化がイメージできました。

日本初公開の将軍俑を含む兵馬俑をダイナミックに展示

第2章「統一王朝の誕生―始皇帝の時代」では、始皇帝陵から出土した兵馬俑がずらりと並びます。
(※会場では、第1章、第3章、第2章の順で展示。等身大の兵馬俑がクライマックスを飾ります)

《戦服将軍俑》 統一秦 高さ196cm 秦始皇帝陵博物院蔵 一級文物。11体しか確認がされていない将軍俑のうちの1体で日本初公開。右手は剣を持つポーズをとっている
《立射武士俑》 統一秦 高さ178cm 秦始皇帝陵博物院蔵 一級文物。まさに弓を射ようとしているような、躍動感が感じられる
《戦車馬》 統一秦 秦始皇帝陵博物院蔵 一級文物

秦の始皇帝は、殉葬の代わりに等身大の兵馬俑を製作しました。表情やたたずまいは、生前の将軍や武士、馬の姿を写し取ったかのようにリアルです。

《跪座俑》 統一秦 高さ64cm 秦始皇帝陵博物院蔵 一級文物

少し小柄なこの俑は、跪座きざ俑。動物を飼育する役人の姿を7割程度の大きさで模ったもので、馬のお墓に添えるようにして埋葬されました。「死後の世界でも馬のお世話を」という、秦の人々の想いが伝わってきます。

それにしても、なぜ始皇帝は等身大の兵馬俑を作ったのでしょうか。謎はいまだに解明されていません。
実は孔子は、兵馬俑について「人間の魂を吹き込んだような俑を作ったから殉葬の風習が生まれた」と批判したそうです。

精巧な複製馬車も

《2号銅車馬》(展示は複製品) 統一秦 秦始皇帝陵博物院蔵

始皇帝が乗った馬車を2分の1のサイズで模した《2号銅車馬》(展示は複製品)も必見です。6000件もの部品がつなぎ合わされているのだとか。御者の手綱や部品が精巧に再現されています。

精巧に再現された御者の手綱部分

再び小さくなった漢の兵馬俑

第3章「漢王朝の繁栄―劉邦から武帝まで」では、前漢時代の兵馬俑や副葬品を見ることができます。

《彩色騎馬俑》 前漢 咸陽博物院蔵
《彩色歩兵俑》 前漢 咸陽博物院蔵

秦滅亡後に再び中国を統一した漢は、秦王朝の法制度などを継承したものの、等身大の兵馬俑は作りませんでした。展示されている騎馬俑や歩兵俑は高さが約50〜70㎝で、人形のようなサイズ感です。

穀物を貯蔵する倉、かまど、井戸などをミニチュアサイズで再現した副葬品も展示。死後の世界を現世と同じくらい充実させたいという願いが垣間見られます。

グッズ売り場もお見逃しなく

兵馬俑デザインの文房具、バッグ、クッション……と、本展ならではのグッズも充実しています。

最後まで”驚き”と”楽しみ”に満ち溢れた展覧会でした。古代中国の壮大なドラマを追体験できる、貴重な機会です。ぜひお見逃しなく。
(ライター・三間有紗)

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