【プレビュー】生誕90年、画業60年 現代アートの巨匠、待望の個展 「ゲルハルト・リヒター展」 東京国立近代美術館で6月7日から

ゲルハルト・リヒター展 |
---|
会場:東京国立近代美術館 |
会期:2022 年6 月7 日(火)~2022 年10 月2 日(日) |
休館日:月曜日[ただし7 月18 日(月・祝)、9 月19 日(月・祝)は開館]、7 月19 日(火)、9 月20 日(火) |
アクセス:東京メトロ東西線「竹橋駅」1b 出口 徒歩3 分 |
観覧料:一般 2,200 円 大学生 1,200 円 高校生 700 円 ※中学生以下、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1 名)は無料。 |
詳しくはhttps://richter.exhibit.jp/へ。 |
現代アートを代表する巨匠、ゲルハルト・リヒター(1932~)の待望の個展が開催されます。日本では2005年~06年にかけて金沢21世紀美術館とDIC川村記念美術館(千葉)で開催されて以来16年ぶりとなり、東京の美術館での大規模な個展は今回が初めてです。作家が90歳を迎えた今年、自身の手元に置いてきた初期作から最新のドローイングを含む約110点で、60年にわたる画業を振り返ります。同展は愛知県の豊田市美術館にも巡回(2022年10月15日(土)~2023年1月29日(日))します。
近年の大作《ビルケナウ》、日本初公開
幅2メートル、高さ2.6メートルの作品4点で構成される巨大な抽象画《ビルケナウ》はホロコーストが主題。ドイツ生まれのリヒターにとって重要な位置を占める作品が、初めて日本で公開されます。長年、このテーマに適切な表現方法が見つけられず、断念してきた作家がようやくたどりついた到達点ともいうべき大作です。見た目は抽象画ですが、絵具の下層には、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所の囚人が隠し撮りした写真を描き写したイメージが隠されています。

© Gerhard Richter 2022 (07062022)
テーマでたどるリヒター作品
油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用いて、具象表現と抽象表現を行き来してきたリヒター。会場では多種多様な作品を紹介し、特定の鑑賞順に縛られず、来場者が自由にそれぞれのシリーズを楽しめる空間を創出します。初期のフォト・ペインティングから始まり、カラーチャート、グレイペインティング、アブストラクト・ペインティング、オイル・オン・フォト、そして最新のドローイングなどを展示します。

© Gerhard Richter 2022 (07062022)

© Gerhard Richter 2022 (07062022)

ゲルハルト・リヒター財団蔵 油彩、キャンバス 200×200cm
© Gerhard Richter 2022 (07062022)

油彩、キャンバス 55×50cm © Gerhard Richter 2022 (07062022)

油彩、キャンバス 41×51cm © Gerhard Richter 2022 (07062022)

ゲルハルト・リヒター財団蔵
エナメル、アルディボンド、196枚のパネル 680×680cm パネル各48.5×48.5cm
© Gerhard Richter 2022 (07062022)

作家蔵 油彩、キャンバス 40×31cm
© Gerhard Richter 2022 (07062022)

アンテリオ・ガラス、スチール構造 230×160×350cm
Photo: Takahiro Igarashi © Gerhard Richter 2022 (07062022)

ゲルハルト・リヒター財団蔵 油彩、キャンバス 200×200cm
© Gerhard Richter 2022 (07062022)

ゲルハルト・リヒター財団蔵 油彩、写真 10.0×14.8cm
© Gerhard Richter 2022 (07062022)

油彩、写真 10.0×14.8cm © Gerhard Richter 2022 (07062022)

グラファイト、紙 21×29.7cm © Gerhard Richter 2022 (07062022)

グラファイト、紙 21×29.7cm © Gerhard Richter 2022 (07062022)
2012年のオークションで存命作家の最高落札額(当時)を更新するなど、世界のアートシーンで注目を集め続けてきた巨匠。今年の夏、見逃せない展覧会です。公式ホームページ(https://richter.exhibit.jp/)
ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)
1932年、ドイツ東部、ドレスデン生まれ。「ベルリンの壁」が作られる直前の1961年に西ドイツへ移住し、デュッセルドルフ芸術アカデミーで学ぶ。コンラート・フィッシャーやジグマー・ポルケらと「資本主義リアリズム」と呼ばれる運動を展開し、そのなかで独自の表現を発表。その後、イメージの成立条件を問い直す多岐にわたる作品を通じて、世界的な評価を得た。ポンピドゥー・センター(パリ、1977年)、テート・ギャラリー(ロンドン、1991年)、ニューヨーク近代美術館(2002年)、テート・モダン(ロンドン、2011年)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク、2020年)など、世界の名だたる美術館で個展を開催。現代で最も重要な画家としての地位を不動のものとしている。
(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)