【プレビュー】モダンデザインと装飾芸術、ファッションを一堂に集め、その関わりに注目――「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」展 豊田市美術館で6月7日開幕

フェリーチェ・リックス=ウエノ(上野リチ)《 テキスタイル「クレムリン」》 1929年 島根県立石見美術館

「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」展
会場:豊田市美術館(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)
会期:2022年6月7日(火)~9月4日(日)
※前期(~7月24日)、後期(7月26日~)で一部展示替えあり
休館日:月曜日、ただし7月18日、8月15日は開館
アクセス:名鉄豊田市駅、または愛知環状鉄道新豊田駅から徒歩約15分
入館料:一般1400円、高校生・大学生900円、中学生以下無料。
※詳しい料金、最新情報は公式サイト(https://www.museum.toyota.aichi.jp/)を参照

1910年代から30年代は、西欧を中心に日本を含む各地で、様々な「モダン」の形が現われた。機能主義に基づく「モダニズム」は当時の中心的な動向、と現在でもみなされる。一方でこの時期は、巨大化した大衆消費社会を背景に「常に新しくあるために装飾する」ことに価値を置いた「モダニティ」も発展した。対立的に捉えられてきた2つの「モダン」。実はそれは、さらにいくつもの「モダン」を内包し、複雑に関係しながら濃密な時代を作り上げていったのである。当時の作家たちは時間差なく情報を共有し、国やジャンルを越えて同期した。絵画、彫刻に加え、家具や食器、洋服、さらに建築や都市――、その範囲は生活空間、身体活動全般に及んだのだ。この展覧会では、急速に変化していった社会の中で、作家たちが共鳴し合いながら探求した「モダン」の数々を約400点の作品展示で紹介する。

ブルーノ・パウル《ダイニングチェア》 1908年 織田コレクション、北海道東川町

まずスポットライトを当てるのは、第一次世界大戦後、応用芸術の分野で活躍した女性作家たち。1903年設立のウィーン工房は、初期の厳格でソリッドな表現にかわり、1910年代後半以降、女性作家たちによる愛らしくロマンティックな作品を次々に生み出した。その生活全般への眼差しは、日本で新しい生活様式を模索した森谷延雄や斎藤佳三らにも共有されるものだった。1919年にドイツで設立されたバウハウスでは女性作家たちが織物に新たな光を当て、同時主義絵画の作家だったソニア・ドローネーは同じ時期、ファッションの仕事に専心して抽象絵画の理論を深めた。

ソニア・ドローネー《 リズム》 1915-30年 京都国立近代美術館 ©️Pracusa 20220322

また、ドイツで応用芸術教育を実践したブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校には、バウハウスと袂を分かった作家たちが教員として多数着任。より職人的な観点から実際の生活にふさわしい応用芸術を模索した。フランスでは1929年、ロベール・マレ=ステヴァンらが中心となって現代芸術家協会(UAM)が結成され、バウハウスが下火になっていく時期に、それと入れ替わるようにフランス独自のモダンデザインを展開した。

マルセル・ブロイヤー《クラブチェアB3》 1925年 豊田市美術館

さらに、装飾芸術家、デザイナーたちは、この頃から、ただ単に家具調度をデザインするのではなく、部屋全体の統一的なデザインを重視するようになった。新しい時代にふさわしい生き方、暮らし方自体をデザインしようとしたのだ。この考え方は、都市全体の在り方も変えていく。ファッションはそれを着る人、商品はそれを使う人だけの問題ではなくなった。人々の消費意欲を促すショーウィンドウや広告デザイン、新しいファッションに身を包んだ女性たちが、街自体の表情を作り変えていった。新しい時代は、それらが総合的に絡み合って、目に見える形で変化していったのである。

ガブリエル・シャネル《イブニング・ドレス》 1927年頃 島根県立石見美術館

(読売新聞美術展ナビ編集班)

新着情報をもっと見る