【開幕】「人のすがた、人の思い-収蔵品にみる人々の物語-」大倉集古館で5月29日まで

企画展「人のすがた、人の思い-収蔵品にみる人々の物語-」
会場:大倉集古館 東京都港区虎ノ門2-10-3(オークラ東京本館正面玄関前)
会期:2022年4月5日(火)~5月29日(日)
開館時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月曜日
入館料:一般1,000円、大学生・高校生800円、中学生以下無料
詳しくは同館のホームページ

大倉集古館の企画展「人のすがた、人の思いー収蔵品にみる人々の物語」が4月5日に始まりました。高橋裕次副館長兼学芸部長にご案内いただきました。個性的な人物描写や作品にまつわる物語がたくさんありました。(5月29日まで、写真は許可を得て撮影)

久隅守景の描きたかった絵

重要文化財「賀茂競馬・宇治茶摘図屏風」(左隻の部分) 久隅守景筆(江戸時代・17世紀)

中央の鼻をかむ男と、その隣でなんとも嫌な顔をしている男が描かれているのは、重要文化財の久隅守景「賀茂競馬・宇治茶摘図屏風」(江戸時代・17世紀)の部分です。

「賀茂競馬・宇治茶摘図屏風」(左隻の部分)

国宝「納涼図屏風」(東博)で知られる久隅守景は狩野探幽の弟子で「狩野派四天王」。ところが狩野派を飛び出して京に出て好きな絵を描きます。本作でも馬は緻密な描写ですが、乗ってる人はゆる〜い表情です。

狩野探幽の鑑定メモ

一方、久隅の師匠で御用絵師の狩野探幽。大名らからたくさんの絵画の鑑定も依頼されており、それらをミニサイズに模写し鑑定の所見をメモしたのが「探幽縮図(和漢古画帖)」です。

重要美術品「探幽縮図(和漢古画帖)」狩野探幽作 江戸時代・17世紀
重要美術品「探幽縮図(和漢古画帖)」狩野探幽作 江戸時代・17世紀

「酒と飯はほどほどが良い」図

「酒飯論絵巻断簡」桃山~江戸時代・17世紀

こちらは、食べ過ぎず、飲み過ぎず、ほどほどの良い食生活を送りましょうと天台宗の「中庸」の教えを解く「酒飯論絵巻断簡」(桃山〜江戸時代)。

これが無いと北斎や広重の浮世絵は生まれなかった?

葛飾北斎の「冨嶽三十六景」や歌川広重の「東海道五十三次」は、浮世絵の代表作です。そのアイデアの元となったのが、こちらの版画、鶴岡蘆水「両岸一覧」だそうです。

「両岸一覧」鶴岡蘆水作 江戸時代・天明元年(1781年)

鶴岡のオリジナルではなく、御用絵師の狩野派が将軍のために描いたものがオリジナル。それを鶴岡が版画として刊行し、世間に流通させました。「これがずっと将軍家から出なかったら、私たちが知っている浮世絵は存在しなかったかもしれません」と高橋さん。

江戸の旅行ガイドの下書き

江戸の旅行ガイドブック「江戸名所図会」。その挿絵の下絵である「草稿」という珍しい資料も展示されています。建物の位置や向きが、微妙に修正されたことがわかります。

「江戸名所図会挿絵草稿」長谷川雪旦筆 江戸時代・19世紀
「江戸名所図会」斎藤長秋・莞斎・月岑編、長谷川雪旦・雪堤画 江戸時代・天保5、7年(1834、1836年)

こうした作品にまつわる背景や物語が聞ける高橋裕次副館長兼学芸部長によるギャラリートークは、4月14日(木)、28日(木)、5月12日(木)、19日(木)の午後2時から。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)