「明治のアート」の粋を集めた東京美術学校監造《綵観》、古代から現代までの名品が一堂に――東京藝術大学大学美術館で「藝大コレクション展2022 春の名品探訪 天平の誘惑」

展示されている東京美術学校監造 《綵観》 (部分) 明治38年(1905) 東京藝術大学蔵

藝大コレクション展2022 春の名品探訪 天平の誘惑
会場:東京藝術大学大学美術館(東京都台東区上野公園12-8)
会期:2022年4月2日(土)~5月8日(日)
休館日:月曜日、ただし5月2日は開館
アクセス:JR上野駅公園口、東京メトロ千代田線根津駅1番出口から徒歩10分、京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅7番出口から徒歩15分
入館料:一般440円、大学生110円、高校生以下、18歳未満は無料。
※詳細情報は公式サイト(https://museum.geidai.ac.jp/)で確認を。

東京藝大が東京美術学校時代から135年にわたって収集されてした作品や資料を公開する「藝大コレクション展」。古美術から学生の制作作品まで多彩な作品が並ぶ中、個人的に最も惹かれたのが、《綵観》だ。絵画や木彫から七宝などの工芸まで、10を超える作品を貼り合わせて作った木製の「屏風」。タテ33.3㎝、ヨコ193.0㎝の小宇宙の中に、明治時代の美術の精髄がギュッと詰まっているのである。

《綵観》 に収められている作品の数々。橋本雅邦の「応真」(右端)、荒木寛畝の「錦輪」(左から3番目)など、有名作家の作品ばかり

「東京美術学校監造」とあるから、どなたかの依頼で美術学校監修のもとで作られたものだろう。「監督」は当時、東京美術学校教授だった島田佳矣。だからだろうか、工芸分野のセレクトが多いのは。絵画は橋本雅邦や川端玉章、木彫は高村光雲や竹内久一、漆工芸は白山松哉・・・・・・。参加した作家の名前を見ているだけで圧倒されてしまう。しかも、その作品の質の高さ・・・・・・。まあ、見ているだけで1時間、2時間、軽く過ぎてしまいそうな「屏風」なのである。これを「監造」できた東京美術学校の底力に脱帽。できれば、令和の時代にも、こういう作品を手がけていただけないか、と思ってしまうのだ。

《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》 「弁財天及び四眷属像」 建暦2年(1212)頃 重要文化財 東京藝術大学蔵

さてさて。今回のコレクション展の特集は、「天平の誘惑」である。展覧会場に入って、まず眼前に現れるのは、重要文化財の《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》。京都・浄瑠璃寺にあった木造吉祥天立像(展示されているのは模刻)と、それを収めた厨子の扉および背面板に描かれた絵を立体的に展示して、厨子の中に足を踏み入れる雰囲気を味わってもらおうという趣向である。足を進めると奈良の古社寺調査に同行した狩野芳崖が仏像などをスケッチした《奈良官遊地取》があり、そのすぐ近くに芳崖の絶筆、《悲母観音》が鎮座まします。芳崖は天平美術から影響を受けたのだろうなあ、と自然に納得させられてしまう構成だ。天空に姿を現した観音様の神々しいこと。絢爛豪華、気宇壮大、いろいろな言葉が頭の中に浮かんでくる。なるほど。天平から明治を経て、日本の美の伝統はつながっているのだと思わせる。

狩野芳崖 《悲母観音》 明治21年(1888) 重要文化財 東京藝術大学蔵

再び、コレクションの話。菱田春草の《水鏡》。天女の足元、池の水面には一体何が映されているのか。それを見て天女自身は何を想うのだろうか。竹内久一の《韋駄天》はいかにも走り出しそうなフォルムが楽しい。橋本雅邦の《白雲紅樹》(重要文化財)。雨模様の靄の中、鮮やかな紅葉が印象的だ。長原孝太郎の《入道雲》。雲の中にいるこの“巨人”は何者なのか。静かな面持ちで下界を眺めながら、一体何を想っているのか――。日本画から洋画まで、ひとつひとつ見る者に何かを語りかけてくる、力のある作品がそろっている。

展示されている橋本雅邦 《白雲紅樹》 明治23年(1890) 重要文化財 東京藝術大学蔵

長原孝太郎 《入道雲》 明治42年(1909) 東京藝術大学蔵

「春の名品探訪」という副題にふさわしいコレクション展。短い鑑賞時間だったが、色々な発見や刺激があった。約3万件の収蔵品には、まだまだあまり世の眼に触れていない佳品も数多くあるのだろう。来年以降、どんな作品が展示されるのか。それも、今から楽しみになってきた。(事業局専門委員 田中聡)

「藝大コレクション展2022」の展示風景

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