【プレビュー】観客にとっての映画史、振り返る 「日本の映画館」展 国立映画アーカイブで4月12日開幕 

道頓堀 弁天座(1936年) 国立映画アーカイブ所蔵

シネコン(シネマコンプレックス)全盛となり、街のシンボル的存在だったかつての映画館の姿を覚えている人は少なくなっています。コロナ禍もあって映像の配信視聴が勢いを増す中、「映画館で映画を見る」というごく当たり前だった営みも、その基盤が揺らいでいるのかもしれません。東京・浅草に日本初の映画常設館ができてから120年近くになる今、改めて映画館と人々の関わりの歴史を振り返り、あの場が生み出してきたパワーとその意味を捉えなおす展覧会です。

展覧会名:日本の映画館

会期:4月12日(火)~7月17日(日)

会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)(東京・京橋、東京メトロ銀座線「京橋」駅徒歩 1 分、都営地下鉄浅草線「宝町」駅徒歩 1 分、東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅徒歩 5 分、JR 「東京」駅八重洲南口徒歩 10 分 )

休室日:月曜日、5月24日(火)~27日(金)

料金:一般250円、大学生130円

展覧会ホームページ(https://www.nfaj.go.jp/exhibition/movietheatres2022/

展示は映画ファン垂涎の資料が目白押しです。映画興行のあり様は、震災、戦争、復興、経済成長といった社会情勢や、人々の暮らしの変化とともに移り変わってきました。本展では映画館の写真、プログラム、雑誌・書籍、実際に映画館で使われた品々などを通して、映画館の誕生、映画興行の発展期からミニシアターの時代まで、シネコン登場以前の日本の「観客の映画史」に迫ります。

<草創期の映画興行>

1903 年に浅草で開業した日本初の映画常設館・電気館の初期の姿を捉えた写真や浅草六区の模型が登場。映画説明者の人気を反映した「活動写真弁士番付表」や日本初の映画スター「目玉の松ちゃん」こと尾上松之助主演作品のポスターなど、初期の映画館と映画興行の様子を伝える多彩な資料を紹介します。

浅草六区電気館前ステレオ写真[部分](1905年頃) 個人蔵
六区活動写真街模型 東京都江戸東京博物館所蔵
「全國活動寫真辯士番附」(1914年) 国立映画アーカイブ所蔵
『俵星玄蕃』(1916年、尾上松之助主演)ポスター 国立映画アーカイブ所蔵
京橋 第一福宝館(1919年) 国立映画アーカイブ所蔵

<娯楽産業の中心に>

関東大震災から急速に復興し、娯楽産業の中心となった戦前期の映画興行。モダンなデザインの映画ポスターは現在の目から見ても斬新です。

『椿姫』(1927年、村田実監督)ポスター 国立映画アーカイブ所蔵
『キートンの結婚狂』(1929年、エドワード・セジウィック&バスター・キートン共同監督)ポスター 国立映画アーカイブ所蔵

<懐かしい映画館の姿>

映写技師の仕事や、映画が娯楽の王者だった時代の豪勢な大型劇場の様子を紹介。見にいった映画の中身以上に、記憶に残ることも珍しくなかった建物や絵看板の写真も展示します。さらに、1974 年にスタートした岩波ホールの「エキプ・ド・シネマ」など、1960 年代から 1980 年代にかけてのアートシアター/ミニシアターの活動を振り返ります。

アクメ商会映写機カタログ(1931年) 国立映画アーカイブ所蔵
テアトル東京 東京テアトル株式会社所蔵
千日前 OSスバル座(1953年) 貴田明良氏所蔵
エキプ・ド・シネマNo.1『大樹のうた』(1959年、サタジット・レイ監督)パンフレット 国立映画アーカイブ所蔵

<特別コーナー:ある街の映画館>

川崎市で映画館をメインとする事業を展開し、今年創業 100 周年を迎える株式会社 チネチッタ(旧美須興行)と、北九州市の映画・芸能資料館である「松永文庫」が所蔵する映画興行主の旧蔵資料を展示。映画館が人々の日常の暮らしに寄り添ってきた時代を描き出します。

日暮里 第一金美館(1922年) 株式会社 チネチッタ所蔵
映画興行主中村上から占領軍への映画館建設物資使用の陳情書(1945年) 北九州市松永文庫所蔵(中村上コレクション)

満員の映画館で封切り映画をワクワクしながら見る、というのもなかなか難しい昨今ですが、やはり映画館のあの雰囲気、何ものにも代え難いですね。単なる懐古趣味ではなく、映画の何が人を感動させるのか、という原点を考えるきっかけにしたい展覧会です。

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)

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