【BOOKS】鈴木堅弘『「隠しアイテム」で読み解く春画入門』 なぜ?それが描かれているのか

『「隠しアイテム」で読み解く春画入門』(インターナショナル新書)が2月に集英社から刊行されました。著者は、日本美術史や江戸文化論などを専門とする京都精華大学特別研究員の鈴木堅弘けんこうさん。人気テレビ番組「タモリ倶楽部」の「輝け!春画脇役大賞」で見たことがあるという人も多いのでは?

「春画」というと、その“行為”にどうしても目が行きがちですが、本書は春画に描かれたアイテムに焦点を当てて、春画を美術史学における図像学から読み解きます。「何がそこに描かれ、なぜそれが描かれたのか」という視点で春画を見ることで、その絵の背景にある物語が立ち上がり、より深く楽しめるとのこと。たまたま描かれたように見えるアイテムも、実は意図的に、ときには作者の洒落しゃれたメッセージが込められて描かれているというのです。

本書の目次を見てみると、

雛祭り、蛍狩り、蚊取り豚、手鏡、ヨーヨー、天狗のお面、猫、犬、金魚、松茸、西瓜、刺身、位牌、三味線

現代人も想像がつきやすいものから、あまり色っぽく感じないものまで、様々な“アイテム”が並んでいます。春画ではどんな意味や役割があるのか、興味をかき立てられませんか?

例えば、歌川国芳の春画「花結色陰吉はなむすびいろのほどよし」(どんな絵か気になる方は国際日本文化研究センターの艶本資料データベースで探してみてください)の一角には、熱く接吻をする男女の傍らに「握りばさみ」が描かれています。女が裁縫でもしているところに男がやってきて……ということなのかと思いきや、江戸時代には握りばさみが体の毛の手入れにも使われていたんだとか。どうやら湯上がりに女がお手入れしているところを、男が誘ってきたようです。

モノクロとはいえ、本書には図版がたっぷり145点も掲載されているのがうれしいところ。関連する浮世絵も交えて江戸の風俗や文化について解説しているので、春画だけでなく浮世絵を見る際にも役立ちます。江戸の人々のリアルな暮らしぶりを知ると同時に、本書を読めば自分なりの解釈もできそうです。

かつては<「18歳以上」という年齢制限がありましたが、春画をめぐる社会的環境が変化してきたことを踏まえ、より多くの人々に活用していただくために制限の解除>がされた日文研の艶本資料データベースとあわせて参照しながら読んでいけば、春画の世界をもっと深掘りできるでしょう。

書籍は990円。書店または集英社のHPから各インターネット書店で。3月11日には、 丸善ジュンク堂書店のオンラインイベントが行われます。
(ライター・岩本恵美)

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