【レビュー】大阪中之島美術館 開館記念「Hello! Super Collection 超コレクション展―99 のものがたり―」で大阪の美術を堪能する

佐伯祐三 《郵便配達夫》 1928年 大阪中之島美術館蔵

2月2日(水)、1983年に構想が発表されてから約40年の時を経て、大阪中之島美術館がオープンしました。
オープンを祝し、開館記念「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99 のものがたり― 」が2月2日(水)から3月21日(月・祝)まで開催されています。
本展では、6000点を超える収蔵作品のなかから、選りすぐりの約400点を3章構成で紹介。洋画や日本画、海外の近代絵画、現代美術、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン――。多彩な作品が一堂に会し、見応え抜群の展覧会です。

大阪ゆかりの画家の名品

特に印象的だったのが、第1章 Hello! Super Collectors。佐伯祐三の名作《郵便配達夫》をはじめ、北野恒富や島成園など大阪にゆかりのある画家の作品が展示されています。「大阪の美術」を明らかにすることを指針に掲げる、同館の熱意が伝わってきました。

そこでこの記事では、第1章の見どころを中心に紹介します。
※展示内容全体をさらに知りたい方は、開幕時の記事やプレビューもご覧ください。

《郵便配達夫》 だけでない! 圧巻の佐伯祐三の作品群

第1章の最初の展示室には、佐伯祐三の作品がずらりと並びます。
佐伯祐三(1898〜1928年)は、大阪市出身の洋画家です。東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業後、1923年に渡仏。一時帰国(1926年)の後、1927年に再び渡仏しますが、1928年に30歳の若さで客死しました。

【左】佐伯祐三《壁》1925 年【右】佐伯祐三《レ・ジュ・ド・ノエル》 1925 年 共に大阪中之島美術館蔵

わずか数年の画業の中、異国の地で生みだされた作品は、独創的。特にパリの街角やレストランを描いた作品には、佐伯祐三の情感が漂っているようで、見入ってしまいます。

佐伯祐三 《レストラン(オテル・デュ・マルシェ)》 1927 年 大阪中之島美術館蔵
佐伯祐三 《郵便配達夫》 1928 年 大阪中之島美術館蔵

本展の目玉のひとつ《郵便配達夫》は、佐伯祐三が亡くなる約4ヶ月前に描いた作品です。体調を崩した佐伯祐三は、郵便配達に来た配達夫に創作意欲をかき立てられ、モデルを依頼したのだとか。
配達夫のたたずまいや床、壁の筆致が同じ方向に傾き、ところどころかすれています。これらはまさに、佐伯祐三が渾身の力を絞りしぼり、勢いよく振るった証しなのかもしれません。佐伯祐三のパワーが留まり続けているような作品でした。
本展で紹介されている佐伯祐三の作品は、大阪の実業家・山本發次郎はつじろう蒐集しゅうしゅうしたものです。佐伯祐三の死後、彼の芸術に魅せられた山本發次郎は作品を熱心に蒐集し、《郵便配達夫》などの代表作を空襲から守り抜いたそうです。

また山本發次郎は、墨蹟や染織なども蒐集し、膨大なコレクションを築きました。約580点の「山本發次郎コレクション」は、同館の構想が発表された1983年に遺族から一括で寄贈され、同館のコレクションの礎となったのです。

第1章 山本發次郎のコレクションの展示風景

第1章では、そんな山本發次郎コレクションにも光が当たります。幅広いジャンルの作品が並びますが、展示風景を眺めていると、作品同士に関連性があることがわかります。山本發次郎の視野の広さや審美眼に尊敬の念を抱きました。

北野恒富・島成園 そうそうたる「大阪の美術」

第1章の中盤からは、北野恒富や島成園をはじめとする、大阪で活躍した画家の作品を紹介。大阪の地で多様な作品が生み出されてきたことを感じ取ることができます。

【左】北野恒富《淀君》1920年頃【右】菅楯彦《赤日浪速人》1955年 共に大阪中之島美術館蔵
島成園《祭りのよそおい》 1913 年 大阪中之島美術館蔵
【左】小出楢重《裸女の3》1929年【右】小出楢重《菊花》1926年 共に大阪中之島美術館蔵


絵画だけではなく、写真や版画の展示も充実しています。
戦前・戦後をまたいで大阪で活動した前田藤四郎の版画には、各時代の大阪の世相が色濃く反映されています。

前田藤四郎《屋上運動》1931年 大阪中之島美術館蔵。舞台は、大阪市中央区の船場ビルディング

「具体」の黒壁

第1章のクライマックスでは、大阪と関わりがある戦後美術を紹介。日本画の革新を目指した「パンリアル美術協会」の三上誠らや、戦後の前衛美術グループ「具体美術協会」のリーダー・吉原治良などの作品が並びます。

第1章 展示風景
第1章 吉原治良の作品などの展示風景。黒い壁面は、具体の展示施設「グタイピナコテカ」に黒い壁があったことにちなんでいる

 

大阪の街並みを味わう

第1章では、大阪の街並みを描いた作品も展示されていました。

池田遙邨 《雪の大阪》 1928 年 大阪中之島美術館蔵

中でも、池田遙邨ようそん 《雪の大阪》は同館の”推し”作品のひとつだそうです。
描かれているのは、雪が積もった中之島。ため息が出るほど美しい……けれど、中之島にこんなにも雪が積もるのだろうか……?と思い、解説を確認したところ、本作が描かれた1928年、大阪に22年ぶりの大雪が降り積もったことがわかりました。

難波橋や天守台だけの大阪城など、当時の中之島周辺の様子が細やかに描かれており、中之島に愛着がある筆者にとっては、いつまで眺めていたくなる作品でした。この情景を頭に描きながら中之島を散歩してみても面白いかもしれません。

【左】国枝金三《中之島風景》1927年【右】青木宏峰(大乗)《中之島風景》1923年 共に大阪中之島美術館蔵 。中之島を描いた作品が並ぶ

大阪で築かれた充実のコレクション

第1章だけでも充実の内容ですが、まだまだ見どころが続きます。

第2章 Hello! Super Stars では、アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》など近代・現代美術の代表的作品、第3章 Hello! Super Visionsでは約200点に及ぶグラフィック作品や家具作品を堪能できます。

アメデオ・モディリアーニ 《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年 大阪中之島美術館蔵
倉俣史朗 《ミス・ブランチ》デザイン1988年、製造1989年、大阪中之島美術館蔵

圧巻のボリューム、多様なラインナップから、「美術館の建設よりも先に充実したコレクションを築く」という方針でコレクション収集を続けた同館のこだわりが垣間見られます。

関西在住の方はもちろん、アートファンは必見の展覧会です。堂々たる約400点の作品は、明日への活力だけではなく、新たなジャンルに関心を寄せる機会や、推し作品・作家との出会いをもたらしてくれることでしょう。

(ライター・三間有紗)

大阪中之島美術館 開館記念「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」
会場:大阪中之島美術館 4、5 階展示室(大阪市北区中之島4-3-1)
会期:2022年2月2日(水)〜 3月21日(月・祝) 月曜日休館(3月21日を除く)
開館時間:10:00〜17:00 ※入場は 16:30 まで。
※3月5日(土)、6日(日)、12日(土)、13日(日)、15日(火)~21日(月・祝)は10:00〜18:00 ※最終入場は 16:30 まで。
観覧料:一般 1,500 円/高大生 1,100 円ほか
日時指定事前予約《優先》制
公式ホームページ:https://nakka-art.jp

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