【開幕レビュー】「和宮ゆかりの雛かざり」4月3日まで、国立歴史民俗博物館で

和宮ゆかりの雛かざり |
---|
会場:国立歴史民俗博物館 第3展示室(近世)特集展示室(千葉県佐倉市城内町117) |
会期:2022年2月22日(火)~4月3日(日) |
休館日:月曜日(休日にあたる場合は開館し、翌日休館) |
開館時間:2月末までは、9時30分~16時30分(入館は16時まで)
3月からは、9時30分~17時(入館は16時30分まで) |
入館料:一般600円、大学生250円、高校生以下無料 |
詳しくは展覧会公式サイト |
雛祭りの行事は江戸時代に広がり、多くの女性から支持されました。幕末から明治の動乱期に、波乱の生涯を送った和宮も数多くの雛人形を手元に集め、3月3日の節句には雛人形を贈り合った記録が残っています。

和宮のものと伝えられる雛人形は、有職雛(直衣雛)という貴族的な上品な面立ちの人形です。徳川宗家第16代当主の家達の形見分けで、その娘たちに譲られ、現在は同博物館が所蔵しています。女雛の紫地の表着の模様である「亀甲繋に八葉菊」は、文久元(1861)年に和宮に納められた赤地の唐衣の裂にもみら、和宮ゆかりの品であることを示します。


興味深かったのは、約80点の婚礼調度をミニチュアとして作った雛道具。当時流行していたギヤマン(ガラス)製の器なども取り入れられています。江戸の上野池之端にあった有名な雛人形店、七澤屋製と推測されます。揃えれば、家一軒にも匹敵するような高価なものも作っていたそうです。

すごろくのサイコロには目が入っていたり、百人一首の札も細かく描かれていたり、とても精巧です。現在、子供たちが夢中になって遊ぶシルバニアファミリーの家具や食器などにも通じるものを感じました。細かいところまで作りこんだミニチュアは時代を超えて愛されます。

現在では、段飾りが普通ですが、同博物館の澤田和人准教授によると「身分の高い和宮を雛人形が見おろすのは良くないと、緋色の毛氈の上に平らに飾られていたという伝承があります」と教えてくれました。

今回、初公開されるのは、長州藩士の家系に和宮から拝領したと伝わる人形。2020年度に同博物館に寄贈されました。和宮ゆかりの内裏雛と非常に似ていて、ほぼ同時期に同じ工房で作られたと考えられるものです。女雛は、白小袖の上に着けた単の色に違いがあり、徳川家伝来品が萌葱に対して、長州藩士伝来品は紅となっています。


ほかには、三頭身ぐらいの子どもに似せた御所人形や、腕や足の付け根、ひざなどが動く三ツ折人形も展示されています。御所人形は男性も飾って楽しむ、現在のフィギュアのような存在。三ツ折人形は着せ替えをして楽しむ人形だったそうです。
桃の節句の機会に、和宮が愛した、優れた手わざによる雛人形や雛道具に触れて、昔も今も変わらない人形の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。(読売新聞美術展ナビ編集班・若水浩)