【開幕レビュー】圧倒的な「白孔雀」――山種美術館で開館55周年記念特別展「上村松園・松篁-美人画と花鳥画の世界-」

展示風景

開館55周年記念特別展「上村松園・松篁-美人画と花鳥画の世界-」
会場:山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
会期:2022年2月5日(土)~4月17日(日)
休館日:月曜休館、ただし3月21日は開館し、3月22日が休館
アクセス:JR恵比寿駅西口、東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口から徒歩約10分
入館料:一般1300円、高校・大学生500円、中学生以下無料ほか。
※詳細情報はホームページ(https://www.yamatane-museum.jp)で確認を。
上村松篁 《白孔雀》 1973(昭和48)年 紙本・彩色 山種美術館 © Atsushi Uemura 2021 /JAA2100291

圧倒的な存在感。神々しいまでの美しさ。「純白」から溢れ出す生命の神秘――。

山種美術館で開催中の特別展「上村松園・松篁-美人画と花鳥画の世界-」。第二会場で展示されている上村松篁の《白孔雀》のインパクトは絶大である。

花の下で佇んでいる一羽の孔雀は、ただそれだけの姿なのに優雅で、気品に満ちている。なるほど、松篁は、「生命」をこのように見ていたのか。「生命」に対する思いをこんな風に表現したのか。じっと眺めているうちに、そんな想いが心に染みてくるのだ。

上村松園 《春のよそをひ》 1936(昭和11)年頃 絹本・彩色 山種美術館

近代が誇る女流画家・上村松園と長男・松篁、さらに松篁の長男・淳之。三代の日本画家をフィーチャーした展覧会が、山種美術館と東京富士美術館でほぼ同時に始まった。美人画の名手として人気の高い松園、花鳥画の大家・松篁、淳之。それぞれその作品をどんなふうに展示しているのか。見どころはどこなのか。比較してみようと思ったのだが、まあでも、山種美術館にあって東京富士美術館にないもの、それはこの《白孔雀》に尽きるといえるのかもしれない。

上村松園 《杜鵑を聴く》 1948(昭和23)年 絹本・彩色 山種美術館

何しろ、《白孔雀》の後に松園の美人画を見ると、その世界が今までとはちょっと違って見えて来さえもする。松園の描く女性の魅力は、まずは全身からあふれる気品だが、それと同時に感じるのは、その姿からあふれてくる生命そのものの力である。凜として涼しげ。その「気品」や「生命の力」が、《白孔雀》の描いているモノと重なって見えてくるのだから。「存在」そのものに対する畏敬の念。「いのち」そのものへの憧れ。美人画と花鳥画、描く対象は違っていても、親子で絵を描く根本は変わらないのではないか。そんな風に思ってしまう。

上村松園 《牡丹雪》 1944(昭和19)年 絹本・彩色 山種美術館

松園以外の美人画も多数展示されているが、凜として涼しげな松園の魅力は、彼らとの比較でも際立つ。動的で表情豊かな小倉遊亀の《舞う(舞妓)》絵の隙間から音楽が流れてきそうな伊東深水の《婦人像》……。それぞれに味わいの違う佳品の数々と、直接見比べることができるのが、観覧者としてはとても楽しかったりもする。

上村松園 《砧》 1938(昭和13)年 絹本・彩色 山種美術館

《砧》《牡丹雪》など、松園の作品が名品ぞろいなのは言うまでもない。「日本画と日本文化の素晴らしさを伝え、人々に感動や発見、喜びや安らぎをもたらすことのできる美術館を目指してまいります」と基本理念で謳う美術館だけあって、豊富な所蔵品なのである。「上村松篁と花鳥画」のコーナーも、山口華揚の《木精》など目を引く作品が並んでいる。PC上で画像を見ているだけでは分からない。美術館に足を運んで、実物を直に見てほしい。改めて、そんなことを思った。(事業局専門委員 田中聡)

 

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