【レビュー】「手わざ-琉球王国の文化-」(東京国立博物館)文化財の模造復元品から琉球王国の繁栄を知る

「玉御冠」 令和元年度(原資料:18~19世紀)沖縄県立博物館・美術館蔵、前~中期展示

東京・上野の東京国立博物館で「手わざ-琉球王国の文化-」が開催中です(3月13日まで)。かつて琉球王国として独自の文化を育んだ沖縄。その豊かな文化の多くは有形・無形を問わず、戦争や近代化で失われてしまいました。本展では、沖縄県立博物館・美術館が平成27(2015)年度から取り組んできた「琉球王国文化遺産集積・再興事業」の成果として、琉球王国繁栄の証でもある文化財の模造復元品とそれらを生み出した手わざの数々が紹介されています。

「四季翎毛花卉図巻」令和元年度(原資料:康煕51(1712)年)、沖縄県立博物館・美術館蔵 通期展示(巻替あり)
【手前上】「三御飾(美御前御揃)御酒器(金盃・銀製流台・托付銀鋺・八角銀鋺)」平成28~30年度(原資料:琉球王国時代(第二尚氏時代))【手前下】「朱漆巴紋牡丹沈金透彫足付盆」令和2年度(原資料:16世紀)、いずれも沖縄県立博物館・美術館蔵、通期展示

模造復元品とは、オリジナルとなる原資料を調査・研究したうえで、可能な限り製作当時と同じ材料や技法で復元したもの。複製品(レプリカ)との大きな違いは、見た目だけでなく、技法についても復元するという点で、学術的な意義があるところにあります。

本展に並ぶのは、絵画、木彫、石彫、漆芸、染織、陶芸、金工、三線の8分野にわたる模造復元品の数々。その中でも、筆者が個人的に気になった作品をいくつか紹介します。

琉球王国文化の花形、紅型

琉球・沖縄といって多くの人の頭に思い浮かぶのが、華やかな紅型びんがたではないでしょうか。こちらの「白地しろじ流水りゅうすい菖蒲しょうぶちょうつばめ文様もんよう紅型びんがた苧麻ちょま衣裳」は、「ンチャナシ」と呼ばれる王家の夏の衣裳をプルシャンブルーや臙脂えんじなど当時の色材を用いて布の表裏両面から染めて復元したものです。流水や菖蒲、蝶、燕といった大和的な意匠から、琉球王国文化が日本の影響を受けていたこともうかがい知れます。

「白地流水菖蒲蝶燕文様紅型苧麻衣裳」令和元年度(原資料:18〜19世紀)、沖縄県立博物館・美術館蔵、前〜中期展示

琉球王国時代の型紙は、細い糸で文様同士をつないだものが使われていたとのこと。今ではこうした糸掛けの型紙は使われていないそうですが(先に紹介した衣裳も紗張りの型紙で製作)、今回は型紙自体を復元したものも展示されています。

(左)「白地流水菖蒲蝶文様紅型型紙」平成28年度(原資料:18〜19世紀)、沖縄県立博物館・美術館蔵、前〜中期展示(右)紅型の製作道具と材料 沖縄県立博物館・美術館蔵、通期展示

原資料と見比べられる「やちむん」

そして、琉球・沖縄といえば、やちむん(やきもの)も忘れてはならない存在。この3段に分かれたユニークな形のやちむんは、何に使うものかわかりますか?

右が模造復元、左が原資料。「擬宝珠形丁子風炉」平成30年度(原資料:琉球王国時代 19世紀)、いずれも沖縄県立博物館・美術館蔵、前〜中期展示

擬宝珠形ぎぼしがた丁子ちょうじ風炉ぶろ」は、香りを楽しむための道具といわれています。一番下の炉の部分に炭を入れて熱し、その上の釜に水を張って丁子(クローブ)を浮かべて使うんだそう。今でいう、アロマポットのようなものでしょうか。

原資料と並べて展示されているので、見比べてみるとその再現度に驚かされます。やきものは、土はもちろん、焼成環境によっても出来上がりに差が生まれるもの。白地と呉須による染付の色のバランスも見事で、完成までにはきっと何度も試行錯誤を繰り返したのだろうと想像できます。

ちなみに、原資料で欠けている蓋のつまみ部分は、残された写真資料から複数の形を検討した結果、この形になったんだとか。

本作のように、原資料とあわせて展示されている作品もいくつかあり、見比べてみるのも一興です。

右が模造復元、左が原資料。「面取網代文三彩抱瓶」令和元年度(原資料:琉球王国時代 19世紀)、いずれも沖縄県立博物館・美術館蔵、通期展示

貝摺奉行所で作られた漆器

琉球王国には、首里王府のための漆器製作を担う「貝摺かいずり奉行所」という部署がありました。この「黒漆くろうるし雲龍うんりゅう螺鈿らでん東道盆とぅんだーぶん」は、そこで製作された典型的な琉球漆器の一つを復元したものだそう。夜光貝などの貝殻を使った「螺鈿らでん」による美しい装飾が全体に散りばめられています。

「黒漆雲龍螺鈿東道盆」令和2年度(原資料: 19世紀)、沖縄県立博物館・美術館蔵、前〜中期展示

あまり馴染みのない「東道盆(とぅんだーぶん)」とは、琉球王国で客人をもてなす際に使われた器のこと。四角や六角形、円形などいろいろな形があり、中には小皿が仕切りのように収められていて、さまざまな宮廷料理が盛り付けられるようになっています。本来はおもてなしの器ですが、本作には皇帝の象徴でもある五爪ごそうの龍が螺鈿で施されていることから、中国皇帝への献上品などとして製作されたものだと考えられているといいます。

今回の復元事業「琉球王国文化遺産集積・再興事業」には県内外の研究者や職人たちが携わりました。その数は100人以上にものぼります。製作工程についてのパネル展示や映像を見ていると、琉球王国文化を今に伝える人々の努力の結晶が未来へとしっかり受け継がれていくとともに、今後新たな発見があることを願わずにはいられません。

本展で紹介された作品の一部は、東京国立博物館で5月3日に開幕する特別展「琉球」にも並ぶとのこと。特別展「琉球」の予習として、足を運んでみるのもおすすめです。
(ライター・岩本恵美)

特別企画 沖縄県立博物館・美術館 琉球王国文化遺産集積・再興事業 巡回展
「手わざ-琉球王国の文化-」
会期:2022年1月15日(土)~3月13日(日)
会場:東京国立博物館 平成館企画展示室
休館日:月曜日
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
入館料:一般1,000円、大学生500円
※会期中、一部の作品は展示替えを行います。
【前期展示】2022年1月15日(土)~2月6日(日)
【中期展示】2022年2月8日(火)~2月20日(日)
【後期展示】2022年2月22日(火)~3月13日(日)
詳しくは東京国立博物館公式サイト

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