【開幕レビュー】モネ、ゴッホ、ゴーガン、話題のレッサー・ユリィも「印象派・光の系譜」あべのハルカス美術館で開催中

クロード・モネ《睡蓮の池》1907年 イスラエル博物館蔵

「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」があべのハルカス美術館で2022年1月28日(金)から4月3日(日)まで開催されています。
モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン、セザンヌ――。イスラエル博物館が所蔵する印象派の巨匠の名作が、まとめて来阪しました。69点の作品のうち、59点が日本初公開です。ユダヤ系ドイツ人の画家であるレッサー・ユリィの作品4点にも、注目が集まります。

イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
会期:2022年1月28日(金)~ 4月3日(日)
休館日:1月31日、2月7日
開館時間:火~金/10:00~20:00 月土日祝/10:00~18:00
※入館は閉館30分前まで
会場:あべのハルカス美術館 (大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
あべのハルカス16階)
観覧料:一般 1,900円/大高生 1,100円/中小生 500円
詳しくは展覧会の公式ホームページ

「光の系譜」をたどる4章構成

第1章の「水の風景と反映」の展示風景。水面の上に立つような気持ちでで「水の風景」を鑑賞できる

本展は、印象派・ポスト印象派の作品を中心に、印象派に影響を与えた作品なども紹介します。

モネら印象派の画家は、移りゆく自然や日常生活の一瞬を捉え、ありのままの「印象」をキャンバスに留めることにこだわりました。そしてゴッホに代表されるポスト印象派の画家は、印象派の影響を受けながらも、独自の表現方法を模索しました。

本展は、「水の風景と反映」「自然と人のいる風景」「都市の情景」「人物と静物」の4章構成です。空が放つ光、水面に反射する光、工場の煙に溶け込む光、人間の内面にともる光―――。作品には、様々な「光」が描き出されています。本展では、作品が放つ「光」を堪能するとともに、”光の表現”がどのように展開され、継承されていったかをたどることができます。

印象派の先駆けとなったコローやクールベ

第1章「水の風景と反映」の序盤では、印象派の先駆けとなった作品を紹介します。

コローやクールベらこの時代の作家は、歴史や宗教を題材としてきたアカデミックな嗜好に反し、何気ない風景や人々の営みを描きました。室内ではなく戸外で、光や空気、川のせせらぎを感じながら描いたのも、彼らの特徴です。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《川沿いの町、ヴィル=ダヴレー》1855–1856年頃
イスラエル博物館蔵

コローの《川沿いの町、ヴィル=ダヴレー》は、銀灰色の空のもとで釣り糸を垂れる人の姿が印象的です。作品が放つ柔らかな光は、時間や空間を超越したような感覚を醸し出します。

シャルル=フランソワ・ドービニー《川の風景、バ=ムードン》1859年 イスラエル博物館蔵

こちらは、ドービニーの《川の風景、バ=ムードン》。ドービニーは、小型船をアトリエとして使用し、川の上で制作しました。コローが描く川の景色と比べると、より現実的な視点が加わっているように感じられます。

続いて、モネに戸外制作の重要性を説いたブーダンや、写実主義を切り開いたクールベの作品も見ることができます。

ウジェーヌ・ブーダン《港に近づくフリゲート艦》1894年 イスラエル博物館蔵
ギュスターヴ・クールベ《海景色》1869年 イスラエル博物館蔵 迫りくる波からは、クールベの反骨精神が感じられる

印象派・ポスト印象派へ

自然を実直に観察した彼らの姿勢は、印象派へと受け継がれていきます。第1章の中盤から、印象派の作品に出会えます。

アルフレッド・シスレー《サン=マメス、ロワン川のはしけ》1885年 イスラエル博物館蔵

シスレーの《サン=マメス、ロワン川のはしけ》は、穏やかな気持ちにさせてくれる作品でした。
実は、印象派のなかでも「もっとも印象派らしい」と言えるのが、シスレーです。シスレーは、明るい色彩や筆触分割など、印象派の描法を貫きました。

クロード・モネ《睡蓮の池》1907年 イスラエル博物館蔵

モネの《睡蓮の池》は、1つ目のフォトスポットになっています。

睡蓮は、モネが愛して止まなかったモチーフでした。自宅の庭に「睡蓮の池」を作ったモネは、人生最後の30年間を睡蓮に費やしました。

本作は、1909年に発表された48点の連作のうちの一つです。睡蓮が浮かぶ水面には、空や雲、樹々が映り込み、溶け合っています。じっと見つめていると、まるで滝が流れているような迫力も感じられる作品でした。

ポール・セザンヌ《川のそばのカントリーハウス》1890年頃 イスラエル博物館蔵

モネ《睡蓮の池》の隣に展示されていたのが、セザンヌの《川のそばのカントリーハウス》。幾何学的な構成や水彩画のような透明感など、セザンヌならではの味わいが感じられる作品です。

ポール・シニャック《サモワの運河、曳舟》1901年 イスラエル博物館蔵

モネの展覧会をきっかけに画家を志したというシニャックは《サモワの運河、曳舟》で、点描で光の輝きを表現しています。モザイクのような一点一点に着目すると、補色が併置されていたり、同系色でまとめられていたりと、表現の精密さに驚かされます。ぜひ色々な角度から本作を味わってみてください。

レッサー・ユリィ《風景》 1900年頃 イスラエル博物館蔵

そして第1章を締めくくるのが、レッサー・ユリィの《風景》。水面に反射するまばゆい光と、映り込んだ樹々が生み出すコントラストにハッとさせられます。

レッサー・ユリィは、ユダヤ系ドイツ人の画家で、印象派とは活動時期が異なるものの、印象派の影響を受けました。「ユリィが表現する光は、印象派の光とは異なる。何かを暗示しているかのようだ」と学芸員の浅川真紀さんは語ります。

自然の中で人々の営みを描く

第2章「自然と人のいる風景」では、自然を描きつつ、人々の営みに焦点を当てた作品が並びます。

カミーユ・ピサロ《豊作》1893年 イスラエル博物館蔵

例えば、農村で働く人々の生活の姿を生き生きと描いた、ピサロの《豊作》。作品からは、ピサロの温かい眼差しが伝わってきます。
印象派の画家の中で最年長だったピサロは、全ての印象派展(全8回)に参加しました。また、若い画家と積極的に交流し、様々な技法を取り入れました。

クロード・モネ《ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて》1894年 イスラエル博物館蔵

モネの異色の作品と言われる《ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて》も展示。じっと見つめていると、藁の束がゆらゆらと踊る女性に見えてくる、不思議な作品です。

ゴッホとゴーガンが一堂に


第2章では、ゴッホとゴーガンの作品を中心とした展示室も。

フィンセント・ファン・ゴッホ《プロヴァンスの収穫期》1888年 イスラエル博物館蔵

《プロヴァンスの収穫期》は、南仏アルルに移り住んだゴッホが、ゴーガンと共に暮らす日々を待ちわびた時期に描かれました。
はねあげるようなタッチには、「ゴーガンが来る♪ゴーガンが来る♪」というワクワク感が滲み出ていて、クスッと笑ってしまいます。

とはいえ、二人の共同生活は2ヶ月で破綻し、「耳切り事件」が発生するのです……。この後ゴッホが辿る運命を想うと、黄金の麦畑が一層眩しく見え、切なさを感じざるを得ません。

ポール・ゴーガン《ウパ ウパ(炎の踊り)》 1891年 イスラエル博物館蔵

もともと、未開の自然に興味があったゴーガン。ゴッホの元を去ったのち、フランスの植民地・タヒチに向かいました。《ウパ ウパ(炎の踊り)》には、炎の周りで踊る先住民の姿が描かれています。メラメラと燃える炎、生き生きと踊る人々の姿から、ゴーガンの創作意欲や強い意思が感じられます。

印象派が描いた社会の「光と影」

カミーユ・ピサロ《ポントワーズの工場》1873年 イスラエル博物館蔵

印象派にとって、急速に様変わりしていく社会や生活も重要なテーマでした。第3章「都市の情景」では、産業化の波が押し寄せ、移りゆく都市生活を描いた作品を紹介。

描かれたのは、娯楽を楽しむブルジョワ階級の市民だけではありません。労働に明け暮れる人々や、田園の中で煙を吐き続ける工場もリアルに描かれました。画家たちは、社会がもたらす「光と影」をカンヴァスに写し取ったのです。

話題のレッサー・ユリィの「夜のポツダム広場」

レッサー・ユリィ 左:《夜のポツダム広場》右:《冬のベルリン》1920年代半ば イスラエル博物館蔵。このコーナーは撮影可

第3章では、レッサー・ユリィの《夜のポツダム広場》《冬のベルリン》が並びます。

レッサー・ユリィ《夜のポツダム広場》1920年代半ば イスラエル博物館蔵

特に印象的だったのが、《夜のポツダム広場》です。描かれている街の雑踏には、現代生活に通ずるものがあり、「この光景、どこかで見かけたような……」と考え込んでしまいます。

道に反射したネオンの光と、靄がかったような空気を見つめていると、絵の中にふらっと踏み出していってしまいそうな感覚になりました。

アルマン・ギヨマン《セーヌ川の情景》1882年頃 イスラエル博物館蔵

ギヨマンの《セーヌ川の情景》には、セーヌ川で働く労働者の姿が描かれています。人々の息遣いや馬の鳴き声、煙の音が聞こえてくるようでした。
ちなみにギヨマンは、鉄道で働きながら活動していましたが、「50歳で宝くじに当選し、ようやく画業に専念できるようになった」という異色の経歴の持ち主です。

石畳の街をイメージした第3章から、喜びに満ちた第4章へ

ルノワールを堪能

ピエール=オーギュスト・ルノワール 左:《レストランゲの肖像》1878年  右:《マダム・ポーランの肖像》1880年代後半 イスラエル博物館蔵

第4章「人物と静物」では、ルノワールの人物画が3点、静物画が3点と、ルノワールの作品が充実しています。ルノワールファンにはたまらない展示空間です。

友人をモデルにした《レストランゲの肖像》では、顔は緻密に描きこまれていますが、指先はラフに描かれ、リラックスした空気を醸し出します。その一方、《マダム・ポーランの肖像》では、流行のファションに身を包み、かしこまった様子の女性が描かれています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《花瓶にいけられた薔薇》1880年頃 イスラエル博物館蔵。撮影OK

ひときわ強いオーラを放っていたのが、ルノワールの《花瓶にいけられた薔薇》。みずみずしいバラの花と、淡く混じり合う背景には喜びが満ち溢れ、私たちを包み込むようです。撮影OK!まさに、カメラに収めて持ち帰りたくなる作品でした。

第4章「人物と静物」展示風景

内面に灯る光を描く

ピエール・ボナール《食堂》1923年 イスラエル博物館蔵

第4章のクライマックスでは、ゴーガンの影響を受けた画家たちの作品が登場します。なかでもボナールやヴュイヤールは、室内で繰り広げられる日常生活をより親密な視点で捉え、人間の内面にも光を当てました。

レッサー・ユリィ《赤い絨毯》1889年 イスラエル博物館蔵

ラストは、レッサー・ユリィ《赤い絨毯》。描かれているのは、裁縫をしている女性の姿です。
11歳で父を亡くしたユリィは、母や兄弟とともにベルリンに移り住みました。母はリネン店を開いて、ユリィたちを育て上げます。ユリィは、裁縫をする母の姿を日常的に目にしたことでしょう。そんなユリィの生い立ちを感じさせる作品です。

黒、赤、白の対比がドラマチックで、見る者の心を揺さぶります。

光の贈り物

学芸員の浅川真紀さん

Light gives life.

開催準備のやり取りの中で、イスラエル博物館から贈られた言葉です。学芸員の浅川真紀さんは、「この言葉を目にした瞬間、はるかイスラエルから光の贈り物が届けられたことを実感した」と振り返ります。

作品が放つ「光」を堪能し、その「光」を心に灯して、困難な時代を生きる糧としてほしい。そんな想いが込められた展覧会です。
ぜひお見逃しなく。時を経て輝き続ける作品から、勇気をもらえることでしょう。

オリジナルグッズも充実

(ライター・三間有紗)

展覧会公式ホームページ

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