【開幕レビュー】『安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展』 漫画版ファーストガンダムの世界を超絶美麗な直筆イラスト約500点とともに振り返る 角川武蔵野ミュージアムで

『安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展』が埼玉・所沢市のところざわサクラタウン 角川武蔵野ミュージアム3階のEJアニメミュージアムで行われている。本展では2001年から2011年までガンダム専門漫画雑誌『ガンダムエース』で連載された安彦良和による漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の直筆原画やイラストを約500点以上展示している。開催期間は1月22日(土)から3月21日(月・祝)まで。なお、2月18日(金)を境に前期・後期に分かれ、展示替えがある。(ライター・鈴木翔)

安彦良和が描く漫画版「ファーストガンダム」

昭和54年(1979年)にテレビ放送が始まった富野由悠季総監督のアニメ『機動戦士ガンダム』において、キャラクターデザインや作画監督、アニメーションディレクターを務め、初期段階から中心メンバーの役割を担った安彦良和。2001年に連載がスタートした『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(以下、THE ORIGIN)は、その安彦が『機動戦士ガンダム』を原案に、いわゆる“ファーストガンダム”の物語を漫画として描き直した作品だ。

会場入口

『機動戦士ガンダム』のストーリーについては、多くの人がよく知るところなので説明不要だと思うが、卓越した画力と並ぶ『THE ORIGIN』の魅力は、アニメでは描かれなかった設定や主人公のアムロ・レイをはじめとするキャラクターの心情描写が安彦独自の解釈を交えながら加えられているところにある。また、全23巻の中に“赤い彗星”シャア・アズナブル誕生までの軌跡や一年戦争の前夜を描いたオリジナルストーリーが収録されているのも大きな特徴だ。

それでは『THE ORIGIN』展の宇宙(そら)へ飛び立とう!

名シーン、名ゼリフに囲まれる圧倒的展示数

安彦自身の監修による展示はストーリーの進行に沿って5つの章で構成されている。入場して名シーンが綴られるオープニングシアターを鑑賞した後には、あの忌まわしき“コロニー落とし”が描かれた前説パートの原画が展示されている。

オープニングシアターにはガンダムエースの歴代表紙も勢揃い
「始動編/激闘編」の展示風景

そして「RX-78-02」ガンダムとパイロットスーツに身を包んだアムロの巨大タペストリーが飾られた「始動編/激闘編」の章に入ると、左右の壁にところ狭しと原画が並べられた空間に出る。やはり約500点以上という圧倒的な展示数には唸らされるものがある。

各キャラをイメージした色の壁面で彩られた会場

最初の壁には記念すべきガンダムエース第1号とコミックス1巻の表紙イラストが展示されている。悲しみに暮れる幼なじみのフラウ・ボゥを支えるアムロ、そしてアムロの操作により業火の中を立ち上がるガンダム。そして、その隣には僕らのマドンナ、セイラさんが。早くもテンションは最高潮だ。

サイド7から始まるストーリー

カラーイラストだけでなく原画の方も味わい深い。絵自体ももちろん見応えがあるが、アニメのガンダムを見て育ったオールドファン世代からすると、やはり数えきれないほどの印象深いセリフが心に刺さる。

「親父にだってぶたれたことないのに!」の名シーン

そしてコマ割りの巧みさも光る。アニメでは一瞬で流れていってしまうところを、いくつかのコマを使ってじわりじわりと伝えている。こうして印象深いシーンを立ち止まって見られるところも漫画ならではの良さといえるだろう。

超美麗なカバーイラストに心震える

続く「過去編」は『THE ORIGIN』のオリジナルストーリーにあたる部分の展示だ。すでに映像化もされているこのパートを通じて本作を知った人も多いのではないだろうか。

キャスバルとして生を受けた若き日のシャア

初めにはザビ家の謀略によって運命を切り裂かれるダイクン一家のイラストがある。その横には、キャスバル・レム・ダイクン、エドワウ・マス、シャア・アズナブルと名前を変えて、復讐の鬼としてジオンのエースパイロットに上り詰める“赤い彗星”のイラストも展示されている。

映像版でも印象的なキャスバルのワンシーン

長年ガンダムエースの表紙を飾り続けてきた作品だけに『THE ORIGIN』にはものすごく多くのカバーイラストが残されている。本展ではそれらが余すことなく展示され、雑誌名などのコピーが乗らない生の状態でじっくりと鑑賞できる。

ガルマ様やランバ・ラル大尉

安彦の筆力が冴えわたるイラストからは、アムロの思春期特有の繊細さや思慮深く傲慢なシャアの性格、気高さを持ち合わせたセイラの芯の強さなどが色濃く滲み出ている。これらの作品は今後も続いていくガンダムの歴史の中で貴重なレガシーになっていくことは間違いない。

激闘のセリフを立体展示

一年戦争の戦いは後半から終盤にかけて激しさを増し、その中で描かれる群像劇も複雑になっていく。ガンダムに乗る前は普通の少年だったアムロも一人前の兵士として大人びた表情に変わっていくのが分かる。ここにニュータイプの少女・ララァを交えてアムロとシャアの対立はさらに深まっていく。

物語のキーパーソンになるララァ
ドズル・ザビ夫妻のイラストには幼き日のミネバ姫の姿も

後半の「ひかる宇宙編/めぐりあい宇宙編」の空間には、さまざまな思惑入り混じる言葉の数々が吹き出しとともに立体展示されていて、ガンダムがロボットアニメでありながら、実は人間ドラマであることを改めて感じさせられる。

セリフの立体展示
2人の決戦は終盤へ…

そしてア・バオア・クーの最終決戦では、お互いモビルスーツを乗り捨て、生身の戦士として争うアムロとシャアの決戦が濃密に描かれ、あの『めぐりあい』の名曲とともにフィナーレへ繋がっていく。

安彦良和の仕事場の再現展示

原画展示の後には、安彦良和の仕事場を再現した展示もある。実は安彦の自宅兼仕事場は本展の会場と同じ所沢市にあり、ここは『THE ORIGIN』の故郷ともいえる街なのだ。この空間では安彦のインタビュー映像も見られるので、作家本人の制作へのこだわりに耳を傾けたい。

そしてフォトスポットで「マチルダさぁぁぁぁん!!!」

『安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展』は、埼玉・所沢市のところざわサクラタウン 角川武蔵野ミュージアム3階のEJアニメミュージアムで3月21日(月・祝)まで開催中。鑑賞後はフォトスポットでマチルダさんと思い出の一枚を撮って、作中のアムロのように「ひゃっほおお」とゴキゲンな気分で帰ろう。

ところざわサクラタウン開業1周年記念 安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展
会期:1月22日(土)~3月21日(月・祝)
※前期:1月22日(土)~2月18日(金) 後期:2月19日(土)~3月21日(月・祝)※前期、後期で展示替えあり
休館日:毎月第1・第3・第5火曜日(祝日の場合は開館・翌日閉館)
会場:EJアニメミュージアム(埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン 角川武蔵野ミュージアム3F)
開館時間:10:00~18:00(入館締め切りは閉館30分前)
※ただし2月18日(金)は展示入れ替えのため15:00閉館
入館料:通常当日券2000円、グッズ付き当日券(ガンダムVer.)5400円、グッズ付き当日券(シャアザクVer.)4900円
詳細は展覧会ホームページ:https://the-origin-ten2022.jp

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