【プレビュー】ケストナーの楽しくも辛辣なメッセージ、今こそ問い直す 「どうぶつかいぎ展」 PLAY! MUSEUMで2月5日から

『エーミールと探偵たち』『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』などの児童文学作品で今も世界的な人気を誇るエーリヒ・ケストナー(1899~1974)の著書、『動物会議』を主題にしたユニークな展覧会です。

展覧会名:企画展示「どうぶつかいぎ展」

会期:2022年2月5日(土)~4月10日(日)

休館日:2月27日(日)

会場:PLAY!   MUSEUM(東京・立川、JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分)

開館時間:10時~18時(平日は17時まで/入場は閉館の30分前まで)

ウェブサイト(https://play2020.jp/

ケストナーの代表作のひとつ、『動物会議』は1949年の出版。第二次大戦が終わり、各国の首脳たちは世界平和を維持するために会議を重ねますが、成果が上がりません。人間の無能ぶりに腹を立てた動物たちが、人間のこどもたちを救うために大会議を開催する、というユーモアと皮肉に満ちたお話です。「争いをやめ、未来のため、子どもたちのために、大人たちが話し合う」という問題提起は、現代にあってもさらに強く私たちに突き刺さってきます。

今回は、ケストナーの数々の名作でタッグを組んだ挿絵画家・ヴァルター・トリアー(1890~1974)の作品を紹介。トリアーが『動物会議』で描いたかわいらしい動物たちの複製原画を展示します。

絵本『動物会議』原画/ヴァルター・トリアー/1947-49年/オンタリオ美術館蔵 ©Art Gallery of Ontario
絵本『動物会議』原画/ヴァルター・トリアー/1947-49年/オンタリオ美術館蔵 ©Art Gallery of Ontario
『動物会議』/エーリヒ・ケストナー著、ヴァルター・トリアー絵/池田香代子訳/岩波書店刊

さらにこの物語を8つの場面に分け、ジャンルの異なる8人のアーティストがケストナーのメッセージをそれぞれ再解釈。絵画、立体、映像などの様々な表現で語り継いでいきます。

「ケストナーとトリアー」ヨシタケシンスケ/2021年

参加アーティストは植田楽(造形作家)、梅津恭子(ぬいぐるみ作家)、鴻池朋子(現代美術家)、junaida(画家)、秦直也(イラストレーター)、菱川勢一(映像作家)、ヨシタケシンスケ(絵本作家)、手塚貴晴(手塚建築研究所)という今、注目の錚々たる顔触れが揃いました。

第1幕「まったく、人間どもったら!」

「無題」梅津恭子/2021年
「無題」梅津恭子/2021年

第2幕「動物ビルで会議があるぞ!」

「無題」秦直也/2021年
「無題」秦直也/2021年

第3幕「世界をきちんとしてみせるよ!」

「めざせ動物ビル」村田朋泰/2021年
「めざせ動物ビル」村田朋泰/2021年

第4幕「世界一へんてこな動物ビル」

「無題」植田楽/2021年
「無題」植田楽/2021年

第5幕「子どもたちのために!」

「いざ、動物会議」菱川勢一/2021年

第6幕「連中もなかなかやるもんだ」

「どうぶつの糞模型 アライグマ」鴻池朋子/2022年/紙粘土、木の実、他

第7幕「人類がふるえあがった日」

「闇の世界 夢の世界」junaida/2021年

エピローグ 動物会議はつづく

「ケストナーとトリアーの最終日」ヨシタケシンスケ/2021年

不毛な分断と対立が続く現実世界。ケストナーの楽しくも、痛烈なメッセージを大人と子どもが一緒になって感じ、考え、語り合う機会になったらステキですね。

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)