【プレビュー】自然への愛情を込めて――「牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児」展 東京ステーションギャラリーで4月16日開幕

©Yanagi Shinobu

「牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児」展
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
会期:2022年4月16日(土)~7月10日(日)
休館日:月曜休館、ただし5月2日、7月4日は開館
アクセス:JR東京駅丸の内北口改札前
入館料:一般1300円、高校・大学生1100円、中学生以下無料
※障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)
※会期中一部入れ替えあり(前期:4月16日~5月29日、後期:5月31日~7月10日)
※詳細情報はウエブサイト(https://www.ejrcf.or.jp/gallery)で確認を。

アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)はヨーロッパと日本、20世紀前半と後半、というように活躍した地域も時代も異なるが、ともに牧歌的で楽園のような風景を、自然への愛情をこめて描き出した。人と自然が調和する世界への憧憬に満ちた彼らの作品は、絵を見ることの喜びを改めて思い出させてくれる。この展覧会では、両者の代表作を含む計116点の作品を展示する。

藤田龍児《デッカイ家》1986年 星野画廊蔵

京都で生まれた藤田は、20代の頃から画家として活動していたが。48歳の時に脳血栓で倒れ、翌年再発したことで、右半身不随となってしまう。利き腕が動かなくなったため、一度は画業を諦めたが、懸命なリハビリで左手に絵筆を持ち替え、画家として再スタートする。再起後、初の個展を開いた時、藤田は53歳になっていた。初期の藤田は抽象性の強い幻想的な作品を描いていたが、大病後は打って変わって親しみやすいのどかな風景を描くようになる。その作品群は、見る者の遠い記憶を呼び起こすようで、しみじみと心に沁みてくる。

アンドレ・ボーシャン《川辺の花瓶の花》1946年 個人蔵(ギャルリーためなが協力)

ボーシャンはもともと苗木職人として園芸業を営んでいたが、41歳の時に第一次世界大戦が勃発し、徴兵される。46歳で除隊した時には、農園は破産し、心労から妻は心を病んでしまっていた。ボーシャンは病妻の世話をしながら、絵画を描き始めたのである。ボーシャンが描いたのは、山や川、草原や丘、そこに生い茂る木々や咲き誇る花々など、なじみのある故郷の風景、苗木職人として接していた植物の生き生きとした姿。そうした絵の中には、しばしば神話や歴史に登場する人物が描き込まれた。豊かな自然描写と素朴な人物表現の取り合わせには、何ともいえない味わいがある。

アンドレ・ボーシャン《芸術家たちの聖母》1948年 個人蔵(ギャルリーためなが協力)

ボーシャンと藤田、時代も国も異なる二人の作品は、牧歌的な雰囲気に満ち、楽園を思わせる明るい陽光と豊かな自然に満ち溢れている。二人は幸福な環境の中でこれらの作品を描いたのではない。破産した農園と病身の妻、あるいは大病による半身不随という苦境の中から、理想郷を夢見ていったのだ。その作品は、コロナ禍の中で生きる現代の人々にとっても、希望を与えてくれるように見える。

藤田龍児《静かなる町》1997年 松岡真智子氏蔵

(読売新聞美術展ナビ編集班)

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