【開幕レビュー】「山本大貴 ーDignity of Realismー」3月21日まで、千葉県立美術館で

2.5―DIMENSIONAL GIRL(feat.あまつ様×BLUE EGG)

 

山本大貴 ーDignity of Realismー
会場:千葉県立美術館(千葉市中央区中央港1-10-1)
会期:2022年1月25日(火)~3月21日(月・祝)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館)、3月1日(火)
開館時間:9時~16時30分
入場料:一般300円、高校・大学生150円
詳しくは展覧会公式サイト

写真と見間違えるような精巧な写実絵画を描く作家として、注目を集める山本大貴(やまもと・ひろき、1982年~)。初の個展を開いた2011年以降の作品を中心に約40点を選りすぐった「ベストアルバム」のような展覧会が、出身地の千葉市で実現しました。

自画像

入口で目を引くのは、武蔵野美大に入学する前の美術予備校時代に描いた自画像。「自画像と好きな画家の作品を構成して描く」という課題で制作されました。山本は美術コースのある高校を卒業しましたが、表現の方向性に苦しみました。そんな浪人時代に野田弘志らの写実絵画と出会い、目標が定まったといいます。この絵で描かれた静物は野田の作品から引用されています。的確な描写力とともに、独自の作風を目指そうという意気込みも感じられ、今の山本の原点がうかがえます。

A☆I☆W☆S

武蔵野美大大学院修了制作のひとつ「A☆I☆W☆S」も興味深い作品です。近年のコスプレイヤーをモチーフとした作品とのつながりを感じさせます。写実的な描写を追究するとともに、ポップなテーマを選ぶことで「現代性」に力点を置く姿勢が、すでに現れています。

静寂の声

山本は2010年の白日会展で「静寂の声」が富田賞を受賞しました。フェルメールの「ギターを弾く女」の構図を引用しながら、ギターはエレキギターに、壁の画中絵はマティスの「音楽」に置き換えるなど、正統な写実絵画を尊重しながらも、独自に「現代性」を付け加えていきます。

絵のために発注された衣装

山本は自らを映画監督に例えます。写実画家として2次元に写し取る前の3次元のワンシーンを精密に作り上げます。絵のテーマとなるシナリオを練り、モデルにオファーし、その衣装は絵のために特別に発注します。小道具、ヘアメイク、舞台となる部屋から、照明、絵の元となる写真の撮影にまでこだわります。

ノエマの森にて

「ノエマの森にて」は、フランス文学者で古書コレクターとして知られる鹿島茂さんの蔵書を公開しているスタジオを取材しています。革装丁の美しさは、そんなこだわりから生まれています。

ATOMIC GIRL(feat.IKEUCHI Hiroto)

作風の幅が広がったのは、造形作家との池内啓人さんとの出会いがきっかけ。2016年にインターネットで池内さんの作品を知り、近未来をテーマとしたコラボレーションシリーズが始まりました。マスクをつけて、やや不安そうな絵は、現在のコロナ禍を予言していたようにも見えます。

2.5―DIMENSIONAL GIRL(feat.あまつ様×BLUE EGG)

「2.5―DIMENSIONAL GIRL(feat.あまつ様×BLUE EGG)」は、2020年に、日本画家で現代美人画の名手、池永康晟との対決展に出品されました。2人が同じモデルを題材に描きましたが、山本はメイド服を着たポップな現代の美人画を描き、美人画の新しい可能性を開きました。画中画には、敬意を込めて池永さんの作品を描いています。

the Liliac Fairy(from”sleeping Beauty”)

2017年からは、バレエ・ダンサーのシリーズなど、意欲的に新しい分野を開拓しています。同美術館研究員の松田直子さんは、写真以上の絵の精巧さはもちろんのこと、「背景の壁の塗り方などが立体的だったり、キラキラと光を反射するところなどは、ぜひ実物を見て味わって欲しい」と呼びかけています。(読売新聞美術展ナビ編集斑 若水浩)

 

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