大阪・藤田美術館が4月にリニューアルオープン 「みる」「きく」「はなす」を助ける場に 創始者の思いを受け継いで

国宝《曜変天目茶碗》(藤田美術館蔵)

2017年6月から大規模改修工事をおこなっていた藤田美術館(大阪市都島区網島町)が2022年4月1日にリニューアルオープンする。

同館は、明治維新後に起きた文化財(仏教美術品など)の海外流出を莫大な私費を投じて防いだ大阪財界の重鎮で実業家の藤田傳三郎(1841年~1912年)とその息子達(平太郎、徳次郎)により築かれたコレクションを軸に1954年に開館。
国宝9件、重要文化財53件を含む約2000件のコレクションを所蔵しており、瑠璃色に輝く国宝「曜変天目茶碗ようへんてんもくちゃわん」(国宝指定された3碗のうちのひとつ)を保有する館として、ご存じの方も多いのではないだろうか?

新しい建物の外観

開館から約60年、同館の建物は、明治~大正期に建てられた藤田家の邸宅の蔵を改装し、展示室として再利用してきた「蔵の美術館」だった。藤田家の邸宅は1945年の大阪大空襲で焼失してしまったが、蔵と中の美術品は延焼を免れたエピソードが残る。

同館は、老朽化にともない、全面的に建て替えられ、ガラス張りでオープンなエントランスを持つ美術館に生まれ変わった。年間を通じて開館できるよう、展示室の中を自由に変更できる仕様にしたのが、今回のリニューアルの大きなポイントだ。今後は、毎月展示の一部のみテーマと作品を替え、今までなかなか展示される機会が無かった作品も観覧できるようになる。

新しい建物の展示室「蔵」

さらに、美術品を通じて老若男女問わず、文化や芸術に親しんでもらえるよう、新たに憩いの場として土間や茶屋スペースが設けられた。昨年(2021年)4月から、先駆けて茶店や高野山から移築した多宝塔がある日本庭園の開放が始まっている。

土間
茶店
多宝塔と茶室

藤田清ふじたきよし館長は、「従来のミュージアムにある〇〇ルームといった談話室のような形では無く、エントランスをかなりオープンにして、お茶やお団子を食べながら美術やアートを通して、色々な人と交友が持てる場にしました。地域の方々が年代を問わず、失敗を恐れずになにかにチャレンジし、課題を解決するような、いかようにでもアウトプットできる場になれば。単なる美術館の建て替えで無く、美術館がある網島あみじまの地と一緒に発展していけたらと思っています」と新しい館への思いを語ってくれた。

藤田美術館の藤田清館長

傳三郎と息子達の「これらの国の宝は一個人の私有物として秘蔵するべきではない。広く世に公開し、同好の友とよろこびを分かち、また、その道の研究者のための資料として活用してほしい」という文化財、美術品へ想いは代々受け継がれてきたが、今回の全面リニューアルは、この想いを受け継いだだけでなく、さらに発展させた形になる。

同館では、多種多様な文化や芸術にふれる機会を提供しながら、来館者へ「みる・きく・はなす」の助けとなることに尽力していくという。美術品やアートをきっかけにコミュニケーションが活性化する“場や機会を生み出す”美術館。4月1日のリニューアルオープンが本当に楽しみだ。
(ライター・いずみゆか)

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