【プレビュー】独創的なアイデアと卓越した行動力で社会に介入――「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」 森美術館で2月18日開幕

撮影: 山口聖巴

「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」
会場:森美術館 ほか
会期:2022年2月18日(金)~5月29日(日)
アクセス:東京都港区六本木、東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口徒歩3分=コンコースで直結=、 都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口徒歩6分、 都営地下鉄大江戸線「麻布十番駅」7出口徒歩9分
入館料:平日(当日窓口)は一般1800円、高校生・大学生1200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1500円。
※事前予約制も導入。料金についてなどのさらに詳しい情報は、公式サイト(https://www.mori.art.museum)を参照

2005年、東京で結成されたアーティスト・コレクティブ、ChimPomは、独創的なアイデアと卓越した行動力で社会に介入し、数々のプロジェクトを手がけてきた。そのテーマは、飽食と貧困、日本社会、メディアなど多岐にわたり、メッセージ性の強い作品でありながら、皮肉やユーモアを感じさせるものにもなっている。

Chim↑Pom《ビルバーガー》2018年 ミクストメディア(にんげんレストランのビルから切り出された3階分のフロアの床、各階の残留物) 素材提供:にんげんレストラン、Smappa! Group、古藤寛也 個人蔵(左)Courtesy: ANOMALY(東京) 展示風景:「グランドオープン」ANOMALY(東京)2018年 撮影: 森田兼次

今回の展覧会は、そういうChimPomの初期から近年までの代表作と、新作を紹介する初の本格的な回顧展だ。作品は、都市と公共性、肉体、境界といったテーマ別に展示され、作品鑑賞のための導線を複数設けることで多様な読み解きを可能にする。またアスファルトを用いた空間構成や展示室一室をまるごと使って多数の作品をインスタレーションのようにみせるなど、ダイナミックな展示空間を作っていく。期間中は会場内で多数のイベントやパフォーマンスも行われる予定だ。

Chim↑Pom「酔いどれパンデミック」2019-2020年 個人蔵 委託制作:Manchester International Festival and Contact, 2019 企画:Contact Young Curators Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京) 撮影:Michael Pollard

展覧会のサブタイトル「ハッピースプリング」には、長引くコロナ禍の中でも明るい春が来ることを望み、たとえ待ちわびた春が逆境のさなかであっても想像力を持ち続けたいというChimPomのメッセージが込められている。今回の展覧会のために2点の新作を制作、展覧会場に託児所を開設するアートプロジェクト「くらいんぐみゅーじあむ」では、託児所の運営資金の調達を目的としたクラウドファンディングを実施するという。

「くらいんぐみゅーじあむ」イメージ

過去、ChimPomによる作品のいくつかは、議論を呼び、論争に発展した。この展覧会ではそれらの論争についても、賛否両論を紹介し、複数の視点で再検証する。コロナ禍の現代で顕在化している感染症や疫病患者に対する差別や偏見、汚染や境界などの社会問題を予見するような作品をこれまでの作品で取り上げているChimPom2020年には緊急事態宣言下の東京を舞台に新作を制作するなど、日本社会を観察し続けてもいる。今回の展覧会はこのような活動について今日の社会を参照しつつ、議論のプラットホームになることを目指すという。

Chim↑Pom《LEVEL 7 feat.『明日の神話』》2011年 所蔵:岡本太郎記念館(東京) Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)

(読売新聞美術展ナビ編集班)