【プレビュー】多彩な顔を持つ吉阪隆正の「人」に迫るーー東京都現代美術館「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」 3月19日開幕

吉阪隆正 写真提供:アルキテクト

吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる
会場:東京都現代美術館
会期:2022年3月19日(土)~6月19日(日)
休館日:月曜休館、ただし3月21日は開館し、22日が休館。
アクセス:東京都江東区三好、東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口から徒歩9分、東西線木場駅3番出口から徒歩15分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口から徒歩13分、新宿線菊川駅A4出口から徒歩15分
入館料:一般1400円、大学生・専門学校生・65歳以上1000円、中高生500円、小学生以下無料。
※最新情報は公式サイト(https://www.mot-art-museum.jp/)で確認を。

登山家、冒険家、文明批評家……建築家・吉阪隆正(1917-80)はその領域横断的な活動で「建築界随一のコスモポリタン」と言われてきた。その幅広い活動を紹介するのが、今回の展覧会。生い立ちから建築作品、アラスカやアフリカへの探検の記録などまで、そのユニークな個性が鳥瞰できる。

《吉阪自邸》1955 年 (撮影:北田英治、1982 年)

東京出身の吉阪は、「考現学」の創始者として知られる今和次郎や近代建築の巨匠ル・コルビュジエに師事。人工土地の上の住宅《吉阪自邸》、文部大臣芸術選奨(美術)を受賞した《ヴェネチア・ビエンナーレ日本館》などを手掛けた。設計アトリエである「U研究室」を創設し、「不連続統一体」の考え方に集まった所員や教鞭を執った早稲田大学の大学院の学生たちとディスカッションを重ねながら、集団で建築を作り上げてきた。建築を通じて吉阪が目指したものとは何なのか。30の建築と地域プロジェクトを紹介する。

《ヴェネチア・ビエンナーレ日本館》1956 年 (撮影:北田英治、1997 年)
《大学セミナー・ハウス 本館》1965 年 (撮影:北田英治、1997 年)

その吉阪の仕事だが、2015年には文化庁国立近現代建築資料館に「吉阪隆正+U研究室建築設計資料」が収蔵され、2017年には早稲田大学に日記や原稿などの個人資料が収蔵されている。現在は、これらの資料のアーカイブ化などが進んでいるところだ。展覧会では、吉阪の思想や創造の秘密の解読のカギとなる様々な資料も展示される。

《乾燥なめくじ》1966 年 ⓒ吉阪隆正

展覧会のサブタイトルとなっている「ひげから地球へ、パノラみる」は吉阪の造語を組み合わせたもの。「地域や時代を超えて見渡す」ことなどを意味する「パノラみる」と、自身の表象であり、等身大のスケールとしての「ひげ」。個から地球規模への活動の広がり、という意味が、サブタイトルには込められている。この展覧会の目的は、吉阪の仕事を現代で再評価すること。吉阪の仕事の全体像に触れる公立美術館では初めての展覧会となるという。

《一筆描きのタカ》1979 年 ⓒ吉阪隆正

(読売新聞美術展ナビ編集班)