「旅した気分になれそうな2022年の展覧会」を妄想タイムリープで先回り紹介!

2022年のオススメの展覧会を、美術展ナビに寄稿しているライターのみなさんに紹介してもらってきました。今回は、有名旅行ガイドからライターを始めたキャリアを持つ鈴木翔さん。旅をしたいあまり「タイムリープ(時間旅行)」してしまった鈴木さんが今年行われる展覧会を<未来形>で紹介します。

旅に飢えた2年間をリベンジしたい!

2021年の美術鑑賞は東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『ザ・フィンランドデザイン展』で締めくくった。最初から最後まで北欧デザイン満載の空間。異国の薫りが漂う展覧会は旅をライフワークとする僕の好奇心を大いにくすぐった。思えば旅といえるような旅行が満足にできていないこの2年。あぁ、旅がしたい、旅がしたい、旅がしたい…。

(*ここから筆者の妄想の旅が始まります)

そんな思いに駆られながら帰りの渋谷センター街を歩いていると、現代の渋谷では珍しいトップク(特攻服)を着た少年の肩に強くぶつかって体勢を大きく崩した。あ、コケる…、寒空の下で冷たくなったセンター街の地面に後頭部が着きそうになったその時、目の前が真っ白な光に包まれた。えっ? これはいったい…。

渋谷センター街(鈴木翔撮影)

東京国立博物館で1月14日開幕『特別展 ポンペイ』

目が覚めると、なぜか漫画「テルマエ・ロマエ」で見たようなローマ人の服を着ている。でも、周りは見覚えのある風景で、目の前には東京国立博物館の平成館が立っている。むむ…、信じられないことだが、タイムリープして、どうやら1月14日から始まる『特別展 ポンペイ』の会場に来てしまったようだ。

ポンペイ遺跡といえば、古代ローマの紀元後79年に起きたヴェスヴィオ火山の大規模噴火により火山灰に埋もれた巨大都市の跡として知られている。現在のナポリ近郊に位置する遺跡は、図らずも一瞬にして埋もれたことで往時の姿をそのまま留め、街ごと約2000年前の暮らしと文化を伝える貴重な資料になった。現在では50以上あるイタリアの世界遺産の中でも屈指の人気スポットだ。

ポンペイ遺跡(美術展ナビ編集班撮影)

イタリアには何度か行ったことがあるものの、なかなか足を運ぶことができなかった世界遺産が向こうから来てくれて感動。

ナポリ国立考古学博物館から名品の数々が来日する本展は、インフラ、宗教、社会、食、仕事など多角度的にポンペイの記憶を伝える構成となっている。数々のフレスコ画とともに展示される生活用具からは日本が弥生時代だった2000年前のこの時代に、古代ローマの人々が非常に豊かで高度な文化による暮らしをしていたことが伝わってくる。

うーん、でも何だか急にグラグラと耳鳴りがする。これはまさか噴火の音…デスカ。ちょっと目眩がすると視界にまた、あの不思議な光が広がった…。

 

京セラ美術館で3月25日開幕『兵馬俑と古代中国〜秦漢文明の遺産〜』

今度は漫画「キングダム」の歩兵みたいな服を来ている。そして目の前に立っている和洋折衷の豪奢な建物は京都の京都市京セラ美術館のようだ。なるほど、どうやら今度は3月25日から5月22日まで同館で開催される「兵馬俑と古代中国〜秦漢文明の遺産〜」に来てしまったようだ。

「秦」といえば、まさに「キングダム」のストーリーの題材にもなっている中国史上初の統一国家だ。春秋戦国時代と呼ばれる周辺国との争いを制し、秦が統一を果たしたのは紀元前221年のこと。そして、この国を治めた始皇帝の威光を伝える記録として万里の長城と並んで最も有名なのが、現在の中国西部・西安近郊の始皇帝陵で見ることができる兵馬俑である。

兵馬俑(鈴木翔撮影)

広大な地下の陵墓の中に眠る死後の皇帝を守る目的で作られたとされる兵馬俑。人や馬の姿を模して作られた像の数は何と8000体以上といわれ、世界を驚かせた1974年の発見から現在まで発掘が続けられている。京都にその一部が来日する。

また、本展では秦に続いて紀元前202年に建国された「漢」にも着目している。前漢、後漢合わせて延べ約400年続いた漢の時代は、古代中国の黄金時代ともいわれている。「高祖」を名乗った劉邦、徹底した中央集権体制を敷き漢を全盛期に導いた武帝、後漢を興し漢王朝再興の祖となった光武帝ら、秦の始皇帝同様に魅力的な皇帝たちが存在し、壮大な歴史のドラマが描かれてきた。

それら2つの帝国の歴史や文化を初来日の一級文物(中国における国宝級の品々)を含めた約200点の展示で知る本展。秦で作られた大きな兵馬俑と漢で作られた小さな兵馬俑の比較考察や秦始皇帝陵とエジプトにあるピラミッドとの類似性なども紹介され、きっと古代中国を旅する気分に浸れるだろう。

実物の人間と等身大で作られた兵馬俑。その勇姿を見ていると、馬や兵が草原をかける草原の様子が頭の中に浮かんできそうだ。ダダダダダ……何だか目眩が、あ、また、あの光だ…。

東京国立博物館で5月3日開幕『沖縄復帰50記念 特別展「琉球」』

今度はかりゆしウェアを着ている。これではまるで「時をかける少女」じゃないか…。また東博の前にいるようだけど、今度は5月3日から6月26日まで開催される『沖縄復帰50記念 特別展「琉球」』に来ているらしい。

2022年は沖縄の復帰50周年の年にあたる。15世紀から19世紀後半まで450年にわたり琉球王国だった沖縄では、東アジアの周辺各地と交易関係を結びながら、工芸や祭祀、生活様式において独自の文化が築かれてきた。本展には東博の所蔵する貴重な琉球関連のコレクションを中心に、琉球国王の冠や琉球の伝統工芸・紅型による王族の衣装など国宝の「尚家宝物」を含めた約100点が展示される。

現代の「うちな〜文化」の源流にもつながるような記憶、また未来への思いも詰まった展示は、青い空と海からだけでは知ることのできない沖縄の深い歴史を教えてくれることだろう。

沖縄(鈴木翔撮影)

さて、琉球展を見終わって東博を出ると、沖縄の日差しのように春の太陽がまぶしい…、その光を浴びているうちに、また周囲が真っ白になった…。

東京ステーションギャラリーで10月14日開幕『鉄道開業150周年記念展 鉄道と美術の150年(仮)』

次はどこだ…と思ったら、今度は学ランを来て列車に乗っていた。車内の感じは大井川鐵道などで乗れるSLよりももっと古い。近くの紳士が読んでいる新聞をのぞき見ると「明治5年」と書かれている。明治5年は西暦だとたしか1872年で今から150年前にあたる。…ということは、まさかここは日本で初めて開業した新橋〜横浜間の鉄道の車内か。前に座っていた女性に「あの〜、この列車はどこに行くのでしょうか?」と聞いてみると「10月14日から来年1月9日まで『鉄道開業150周年記念展 鉄道と美術の150年(仮)』が行われる東京ステーションギャラリーですよ」と教えてくれた。

東京駅(鈴木翔撮影)

へぇ、赤レンガ建築の中で鉄道の歴史を美術を絡めてたどる展覧会か、それは興味深い。ところで、麗しきご婦人、君の名は?…と聞き返そうとしたが、機関車の煙突から吐き出された煙がモクモクと僕の周りを包んで、だんだんと意識が遠のいていく…。

そして…、

気付くと渋谷のセンター街のあの場所に戻ってきていた。「大丈夫ですか?」と転んだ僕に手を差し出してくれたのは、金髪をツンツンに逆立てた少年だった。「ありがとう」と返事をすると、少年は仲間の二人組を追って去っていった。う〜む、まさかこれは漫画でありがちという“夢オチ”というやつか? いや、だがしかし、さっきまでの旅に出たい気持ちが不思議と満たされている。旅に飢えた2年間をリベンジできたような気がした。
(注)このコラムはフィクションですが、2022年も世界の歴史と文化を感じる展覧会が目白押し。海外などの遠くへ自由に旅行できない日々がもう少し続きそうですが、美術展で旅気分を味わいましょう。
(ライター・鈴木翔)

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