【インタビュー】コロナ禍の中の「想い」を込めて――吉祥寺美術館で鉛筆画展「心の灯り」を開催中の土田圭介さん

撮影・青山謙太郎

東京・武蔵野市の吉祥寺美術館で個展「心の灯り」(1月8日~2月27日)を開いている土田圭介さんは、10Hから10Bまで硬軟様々な鉛筆を駆使する鉛筆画家だ。紙の上に描き出される独自の幻想的な世界。それが表すものは何なのか。そのスタイルはどこから生まれたのだろうか。(聞き手は事業局専門委員 田中聡)

撮影・青山謙太郎

――吉祥寺美術館での土田さんの鉛筆画展は2020年の「心の旅 モノクロームの世界で描く心のカタチ」以来ですね。

 土田 2020年の時は実はコロナ禍で開幕が延期になって、4月11日から6月7日までの会期だったのが、6月1~7日の一週間しか開催できなかったんです。それが残念で。今回の展覧会にはその時の「リベンジ」みたいな気分もあります。

 ――その時と今回は、何か違いがありますか。

 土田 前回は、美術館では初めての大がかりな展覧会。「これまでの自分の歩みを全部見せてやろう」と思って、100点ぐらいの作品を展示室に詰め込んだ感じでした。まあ、一週間の会期とはいえ、それを見に来ていただいた方もいるわけですから、同じものを見せるわけにも行かない。今回はもう少しメリハリを付けて50点くらいの作品を展示することにしました。

土田圭介《行方》2021年

1974年、新潟県で生まれた土田圭介さんは高校卒業後、会社員生活を経験した後に京都造形短大に進学。卒業後、千葉県を拠点としてアーティスト活動を行っている。年に1回程度のペースでギャラリーなどでの個展を開くほか、各種グループ展に参加している。

――その中で目玉になるのが、大作《行方》。この作品には、どういう想いを込められたのですか。

土田 ボクの作品は、基本的には何気ない「心の動き」を形にしていくものです。その「心の動き」もふだんは、ほんのちょっとしたこと、例えば「風に吹かれて気持ちがいい」とかいうことを表現している。ただ、この作品は違う。コロナ禍の中で色々な人がいろいろな想いを持つじゃないですか。それを運搬する「船」のイメージがまずあって、喜び、哀しみ、いろんな感情を「あかり」として乗せた「船」がどこかに旅をしている。そんなイメージで描きました。普段、私はあまり「他人に見てもらう」ことを意識しないんですが、これは「見る人の目を意識して」描いた。そういう意味では、自分の中では、これまでの作品とは違うものなんです。

撮影・青山謙太郎

――描くには相当時間がかかったのではないですか。

土田 前面の絵の部分は薄い鉛筆で描き始め、だんだんと色の濃い鉛筆を使っていきます。背景は逆の作業。何度も何度も上書きをしていくことで、ボクの絵は出来ていきます。そういう作業を重ねて、この作品には半年近くかかりました。

土田圭介《プロローグ》2009年

――10Hから10Bまで硬軟様々な鉛筆を使って、縦の線を重ねていく。そういう手法は、何をきっかけに生み出されたのですか。

土田 短大時代、何か自分に特徴的な技法を持ちたくて、油彩、水彩、色々な画材を試していたんですよ。なにしろ、中、高校時代から絵ばっかり描いてきたような同級生ばかりの中、会社を辞めて美学校に来たボクは、シロウトがひとりでいた気分でしたから。いろんな画材をためしたけど、なかなかしっくりくるものがない。「初心に戻ろう」と思って、紙に鉛筆で絵を描いてみたら「意外と面白いな。これでいいんじゃないか」と思ったんです。それから「画材ではなく、描く内容で勝負しよう」と思うようになりました。鉛筆画をやるようになって、先輩の木下晋さん、篠田教夫さんには影響を受けましたね。

土田圭介《telephone line》2012年

――土田さんの作品は、幻想的な雰囲気を持ったものが多いですが、何か特に影響を受けたものはあるのですか。

土田 そもそも子どもの頃から絵を描いたり、粘土などでモノを造るのは好きだったんです。小学生の時にファミコンが発売されて、ボクも「ドラゴンクエスト」や「イース」みたいなRPGにはまりました。学校の図書館にあったアーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズ、さらにいえば大友克洋さんの漫画『AKIRA』……、そういう作品のイメージが、ボクの描く世界の原点にはありますね。

撮影・青山謙太郎
土田圭介鉛筆画展「心のあかり」
会場:武蔵野市立吉祥寺美術館
会期:2022年1月8日(金)~2月27日(日)
休館日:1月16日、2月16、24日
アクセス:東京都武蔵野市、JR中央線吉祥寺駅中央口(北口)から徒歩約3分、コピス吉祥寺A館7階
入館料:一般300円、中高生100円、小学生以下・65歳以上、障害者の方は無料
詳しくは美術館HP(http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/index.html)を参照。
撮影・青山謙太郎

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