【プレビュー】「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵ー武者たちの物語」 森アーツセンターギャラリーで1月21日開幕 武者絵の世界を刀剣、鐔も交えて再現

歌川国貞「武蔵坊弁慶 御曹子牛若丸」 文化10-11年(1813-14)頃 William Sturgis Bigelow Collection ALL Photographs Ⓒ Museum of Fine Arts, Boston

世界最高水準の日本美術コレクションを誇るボストン美術館。その所蔵品から厳選された刀剣と武者絵の浮世絵などを紹介、時代を飾った英雄たちの物語を描き出す豪華な展覧会だ。

<開催概要>

展覧会名:ボストン美術館所蔵 「THE HEROES 刀剣×浮世絵ー武者たちの物語」

会期:2022年1月21日(金)~3月25日(金)※会期中無休

会場:森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ森タワー52階)

開館時間:午前10時~午後8時(火曜日のみ午後5時まで、最終入館は閉館30分前まで)

日時指定券:一般2100円、大学生・専門学校生1500円、高校生・小中学生1000円

展覧会公式サイト(https://heroes.exhn.jp/

武者たちの物語を描いた浮世絵版画(=武者絵)と、武者絵と共通のイメージがデザインされた刀剣の鐔(つば)、そして刀剣を通して、英雄たちが活躍する物語を時代に沿ってたどっていく。菱川師宣、勝川派、歌川国貞、歌川国芳、月岡芳年など有名絵師の名作がそろう。

<神代の武勇譚>

歌川国芳「武勇見立十二支 辰 素盞雄尊」 天保13年(1842)頃 William Sturgis Bigelow Collection

古事記、日本書紀などに伝えられた神代の物語。天照大神の弟、スサノオは粗暴なふるまいで高天原を追われる。ヤマタノオロチを退治したストーリーは有名。

<平安時代の武者>

歌川国貞「渡辺ノ綱 坂田金時 平井保昌 源頼光」 文化12年(1815)頃 William Sturgis Bigelow Collection

源氏、平氏の二つの武家が大きな力を持ち始める。清和源氏の三代目、源頼光には土蜘蛛退治、大江山酒吞童子退治、市原野の鬼童丸退治などの武勇伝説が伝わる。

「土蜘蛛退治図鐔 銘 松涛軒吾竹貞勝」 (つちぐもたいじずつば めい しょうとうけんごちくさだかつ)
明治時代(19世紀) Charles Goddard Weld Collection

<源平時代の英雄>

「武蔵坊弁慶 御曹子牛若丸」 (むさしぼうべんけい おんぞうしうしわかまる) 歌川国貞 文化10-11年(1813-14)頃 William Sturgis Bigelow Collection
「橋弁慶図鐔」 江戸時代(19世紀) William Sturgis Bigelow Collection

改めて説明するまでもない牛若丸と弁慶。京の五条橋で対決し、主従の盟を結ぶ。

北尾政美「巴御前」 天明7-寛政2年(1787–90)頃  William Sturgis Bigelow Collection

こちらも名高い、源義仲に仕えた女武者の巴御前。

<鎌倉時代の物語>

歌川国貞「源頼朝公富士之裾野牧狩之図 三枚続」 文化10年(1813)頃 William Sturgis Bigelow Collection

源頼朝が建久4年(1193)5月に富士の裾野で行った大規模な狩猟。この場で曽我兄弟が父のかたきを討った。

<「太平記」の武将たち>

歌川国貞「大森彦七」 文政11-13年(1828-30)頃 Bequest of Maxim Karolik

鎌倉幕府の滅亡、南北朝の動乱などを描く「太平記」。楠正成は湊川の合戦で討ち死にしたが、のちに怨霊となって敵方の大森彦七を襲ったという怪異な伝説が伝えられている。

<川中島合戦>

歌川国芳「川中島信玄謙信旗本大合戦之図」 弘化2年(1845)頃 William Sturgis Bigelow Collection
歌川国芳「信州川中島大合戦之図」 弘化2年(1845)頃 William Sturgis Bigelow Collection

宿命のライバル、上杉謙信と武田信玄が5度にわたって戦った川中島合戦。二人の一騎打ちは初期浮世絵の時代から最も人気のある画題のひとつだった。

<小説のヒーローたち>

卍楼北鵞「椿説弓張月 巻中略図 山雄(狼ノ名也) 主のために蟒蛇を噛んで山中に骸を止む」 天保11年(1840)頃 William Sturgis Bigelow Collection

19世紀になると伝奇的な長編小説が次々に出版され、冒険譚が人気を博した。武者絵の題材も、『平家物語』『太平記』などの古典の軍記物ばかりでなく、小説の登場人物も取り上げられるようになる。「椿説弓張月」は鎮西八郎為朝の冒険物語だ。

<ボストン美術館の名刀>

ボストン美術館は約600口の日本刀を収蔵しており、その中から厳選した20口を展示する。平安時代から江戸末期までの日本刀の歴史を概観できる構成になっている。

「太刀 銘 安綱」  平安時代(11世紀) William Sturgis Bigelow Collection
「短刀 銘 備前国福岡左兵衛尉長則 正安二年八月日」   鎌倉時代 正安2年(1300) William Sturgis Bigelow Collection
「太刀 銘 三条吉則作」  室町時代(15世紀) William Sturgis Bigelow Collection
「金梨子地家紋散糸巻太刀拵」  江戸時代(17世紀) Charles Goddard Weld Collection

118点の武者絵はすべて日本初出展。鮮やかな刀剣、鐔の精巧な作りにも目を見張る。庶民の人気を博した武者絵の世界をリアルに味わえそうだ。

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)