世界各地の文化に出会える2022年のおすすめ展覧会4選

インターネットなどで世界の国々との距離はぐっと縮まっているとはいえ、気ままな海外旅行の再開はまだしばらく時間がかかるかもしれません。それでも、2022年は国内に居ながらにして海外文化に親しめる展覧会が各地の美術館や博物館で開催される予定です。その中から、4つの展覧会の担当者に、世界各地の歴史や文化を伝えたいという思いやメッセージを聞きました。(ライター・片山久美子)

西アジア遊牧民の染織 塩袋と伝統のギャッベ展 (たばこと塩の博物館)

バルーチ族の塩袋(1970年頃)

普段何気なく使っている塩ですが、人間や家畜が生きるのに不可欠な役割を負ってもいます。現在のイランを中心とした西アジアの遊牧民が伝統的に使ってきた独特な形の塩袋。羊毛を染め、各部族を象徴する文様を織り込んだこの塩袋は、遊牧民の生活に根差した「塩の役割」を物語ると同時に、染めと織の高い技術に驚かされます。

カシュガイ族のギャッベ(1970年頃)

今回の展示では、同じく伝統的な織物で、遊牧生活の中で織り手が自由な発想で動物や草木の文様を織り込んだ敷物「ギャッベ」にも重点が置かれています。展示は、すべて初公開の約90点で構成されます。

主任学芸員の高梨浩樹さんは「塩袋は色糸と織り技を駆使した染織品としても美しく、粗い織りで素朴な意匠を描く伝統的なギャッベ、天然染料の色ムラが美しい絨毯など、通常非公開の個人資料から選り出した他の染織品と合わせて鑑賞し、日本人にはなじみのない遊牧という文化に触れていただければと思います」と話しています。

ヨーロッパのテキスタイルは日本でも人気ですが、アジアのデザインにも注目が集まるかもしれません。

 

丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織 塩袋と伝統のギャッベ展
会 場:たばこと塩の博物館(東京都墨田区横川)
会期:2022年2月26日(土)~5月15日(日)
開館時間:午前10時~午後5時(入館締切は午後4時30分)
休館日:毎週月曜日(ただし3月21日は開館)、3月22日(火)
入館料:一般・大学生 100円 小・中・高校生 50円 満65歳以上の方 50円
詳しくは館の公式HP(https://www.tabashio.jp)へ。

 

邂逅する写真たち――モンゴルの100年前と今 国立民族学博物館

モンゴルのイメージは?と聞かれてまず浮かぶのは、果てしなく広がる草原に、馬を自在にあやつる遊牧民の姿。子どもの頃に読んだ絵本『スーホの白い馬』の世界です。でも、モンゴルって本当にそれだけ?

本展は、かつてのモンゴルと現在のモンゴルが時空を越えて出会う「体験型」の写真展。100年前の外国人の目から見た宗教都市ウルガ(現在のウランバートル)と、気鋭のモンゴル人写真家が映し出す現在のウランバートルの素顔とが「みんぱく」で出会い、新しいモンゴルの姿を見る者の目に際立たせてくれます。
日本・モンゴル外交関係樹立50周年を記念する本展の実行委員長・島村一平准教授からのメッセージです。
「100年前の欧米を中心とした探検家たちがまなざししたモンゴル。そして現代のモンゴル人写真家がまなざした自国モンゴル。本展示は、写真をめぐる100年の時空を越えた邂逅-出逢い-をテーマにしています。それは、エキゾチックな過去の姿との出逢いかもしれないし、オルタナティブな現代(モダニティ)との出逢いかもしれません。
いずれにせよ、従来のモンゴルイメージとは全く異なるモンゴルの姿に出逢えます」

日本・モンゴル外交関係樹立50周年記念特別展「邂逅する写真たち――モンゴルの100年前と今」
会場:国立民族学博物館 (大阪府吹田市千里万博公園10-1)
会期:2022年3月17日(木)~ 5月31日(火)
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週水曜日(ただし5月4日(水)は開館)
入館料:一般880円、大学生450円、高校生以下無料
詳しくは館の公式HP(https://www.minpaku.ac.jp/ai1ec_event/23187)へ。

 

ヒンドゥーの神々の物語  福岡アジア美術館

年明け早々の1月2日(日)に開幕するのは、インド亜大陸の神々の姿を拝める展覧会。地理的にも歴史的にもアジア文化の交流拠点だった福岡で、創立から約20年、アジア文化の紹介に努めてきた福岡アジア美術館。今回は、古代から現代までのインドの信仰とヒンドゥーの神々の系譜をたどります。

T. K. プットゥサミ《ヴィシュヌの一切相(ヴィシュヴァールーパ)》20世紀前半 福岡アジア美術館

破壊と創造の神シヴァや、象の頭をしたガネーシャなど、日本でも名を知られる神々をモチーフとした美術品や民俗画をたっぷりと堪能できる本展覧会。展示は、まずは古代インダス文明以前の自然信仰から生まれた素朴な出土品から始まります。

《シヴァ》19世紀後半-20世紀前半、福岡アジア美術館(黒田豊コレクション)

続いて、17世紀以降、王族やイギリスの高級官吏らのために、ヒンドゥーの神々をモチーフとして制作された細密画やガラス絵などの美術品にため息をつき、民衆の熱狂的な信仰心に根ざした民俗画や刺繍にパワーを感じる展開に。現代の神々は、さらにパワーアップしてインターネットで世界を駆け巡ります。時代を追って実にさまざまな形で表現された神々の姿に出会える展示構成です。インド独立75周年・日印国交樹立70周年を記念する特別展です。

ムケーシュ・シン《火神アグニ》2013年、作家蔵

担当学芸員の中尾智路さんは「ある個人コレクターの膨大かつ多彩な収集品を核に、500点近い作品で古代から現代までの神々のイメージの変遷をたどる展覧会、是非ご覧いただきたいと思います」と話しています。
断片的に見聞きして知ってはいても、それぞれの神について伝わる物語や、人々の信仰から生まれた作品に込められた意味をあらためて知り、インドの文化をより深く味わう良い機会になりそうです。

インド独立75 周年・日印国交樹立70 周年記念特別展 ヒンドゥーの神々の物語
会場:福岡アジア美術館 (福岡市博多区下川端町3-1)
会期:2022年1月2日 (日)〜 3月29日 (火)
開館時間:午前9時30分~午後6時(金・土曜日は午後8時まで)※ギャラリー入室は閉室30分前まで
休館日:水曜日
入館料:一般200円 高大生150円 中学生以下無料
詳しくは館の公式HP(http://faam.city.fukuoka.lg.jp/)へ。

パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂 アーティゾン美術館

アジアがテーマの展覧会を3展ご紹介したところで、4展目はヨーロッパに目を向けてみましょう。フランスを代表する芸術の殿堂、パリ・オペラ座に多面的に迫り、その魅力にどっぷり浸かることができる展覧会です。

シャルル・ガルニエ《ガルニエ宮ファサードの立面図》フランス国立図書館蔵
Charles GARNIER, Front view of the Facade of the Palais Garnier, Plan
Garnier O3, BnF, Music Department, BMO

パリ・オペラ座と言えば、バレエやオペラの殿堂として知られる劇場です。ミュージカル『オペラ座の怪人』の舞台としてもお馴染みですね。このオペラ座の歴史を17 世紀から現在までたどりつつ、さまざまな芸術分野との関連性を示すことで、その魅力を総合芸術的な観点から浮き彫りにするのが本展の狙いとのこと。その範囲は、絵画、彫刻、版画、文学、音楽、舞台芸術、映画、建築と多岐にわたり、オペラ座がいかに多様な芸術と関わり合い、それによって輝いてきたかが明らかになります。

エドゥアール・マネ《オペラ座の仮装舞踏会》1873年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

今回の展示で特に重点が置かれている時代が、19世紀から20 世紀初頭。ロマンティック・バレエやグランド・オペラ、ロシア・バレエの流れを汲んだバレエ・リュスが開花した時代です。
学芸員の賀川恭子さんは「アーティゾン美術館という名の下、新しい美術館として開館してから初めての海外展です。フランス国立図書館をはじめとする国内外の美術館、コレクションからの約200点の作品で、パリ・オペラ座の重厚かつ華麗な魅力をお届けします。フランスを代表する美の殿堂をお楽しみください」と、意気込みを語ってくれました。

パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂
会場:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋)
会期:2022年11月5日(土)~ 2023年2月5日(日)*入館は閉館の30分前まで
開館時間: 午前10時~午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)
休館日:月曜日(1月9日は開館)、12月28日~1月3日、1月10日
入館料:日時指定予約制
ウェブ予約チケット 1,800 円、当日チケット(窓口販売) 2,000 円、学生無料 (要ウェブ予約)
詳しくは館の公式HP(https://www.artizon.museum/)へ。

片山久美子(かたやま・くみこ) 通信社記者、駐日外国公館広報などを経て現在フリーランスのライター、翻訳者。美術館、博物館では、気が付くと解説パネルやキャプションをじっくり読んで書き手を想像したりしています。

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