【レビュー】妖怪とは何か。百鬼夜行とは何を意味するのか――「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」展 豊田市美術館

ホー・ツーニェン《百鬼夜行》2021年 ©︎Ho Tzu Nyen 撮影:ToLoLo Studio

「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」
会場:豊田市美術館
会期:2021年10月23日(土)~2022年1月23日(日)
休館日:月曜休館、ただし1月10日は開館。 年末年始は12月27日~1月4日が休館。
アクセス:愛知県豊田市、名鉄豊田市駅、または愛知環状鉄道新豊田駅から徒歩約15分
入館料:一般1000円、高校生・大学生800円、中学生以下無料
※詳しい料金などは公式サイト(https://www.museum.toyota.aichi.jp/)を参照

現在、過去、未来。様々な時空で人々がまどろむ時、脳裏を移ろいゆく異形の者たち。意識の奥底に潜んでいる不安や欲望、DNAの中に隠されている元型……「ホー・ツーニェン  百鬼夜行」展でまず提示されるのは、真っ暗な空間の中でスクリーンに映し出される百鬼夜行の様子である。ランウェイを歩くモデルのように、ただただ通り過ぎていく100体の妖怪たち。彼らは何を表しているのか。眠っている日本人たちは何を感じているのか――。

ホー・ツーニェン《百鬼夜行》2021年 ©︎Ho Tzu Nyen 撮影:ToLoLo Studio

1976年にシンガポールで生まれたホー・ツーニェンは、映像、演劇、インスタレーションなど多彩な表現手段を駆使するアーティスト。アイデンティティーの源である東南アジアの歴史を軸にした作品を生み出している。4映像作品で構成される今回の作品も例外ではない。その世界は、日本が関わったアジアの歴史の深部に踏み込んでいく。

ホー・ツーニェン《百鬼夜行》2021年 ©︎Ho Tzu Nyen 撮影:ToLoLo Studio

ホー・ツーニェンにとって妖怪とは、日本人の集団的無意識の象徴なのだろう。2番目の映像で紹介されるのは、36の妖怪のプロフィールである。水木しげるの世界から飛び出してきたような「べとべとさん」=上図=から浮世絵チックな意匠、タヌキやキツネのような土俗的な存在まで、多様なイメージが提示される。そして、その中から、徐々にひとつのテーマが集約されてくる。戦いのエキスパートである天狗、顔のない存在としてののっぺらぼう……、第3の映像でクローズアップされるのは、第二次世界大戦中の日本軍の諜報活動である。「顔のない人間」としての諜報員の存在、「マレーの虎」と呼ばれた日本人盗賊を利用しようとした「ハリマオ作戦」。第二次世界大戦時の彼らの行動と百鬼夜行が重なる。

ホー・ツーニェン《百鬼夜行》2021年 ©︎Ho Tzu Nyen 撮影:ToLoLo Studio

そして最後の映像で強調されるのは、「虎」のイメージだ。中国でも日本でも東南アジアでも「強さ」の象徴だった「虎」。狩りの対象となり、戦争の時代には悲劇的な死を遂げ、日本でドラマの主人公となり、高度成長の後は魅惑的な女性としても描かれた「虎」。アジアの「虎」は今後、どう変貌していくのか。百鬼夜行の妖怪たちは今もどこかで蠢いているのか。シンガポール人であるホー・ツーニェンは、われわれ日本人に問いかけているようだ。(事業局専門委員 田中聡)

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