【プレビュー】「信じるココロ」展――「信じる」をキーワードに浮世絵を読み解く 太田記念美術館で2月4日開幕

葛飾北斎「諸国瀧廻り 相州大山ろうべんの瀧」

信じるココロ
会場:太田記念美術館
会期:2022年2月4日(金)~2月27日(日)
休館日:月曜日
アクセス:東京都渋谷区神宮前、JR山手線原宿駅から徒歩5分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
入館料:一般800円、高校生・大学生600円、中学生以下無料
※最新情報は、公式HP(http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/)で確認を

民間信仰で賑やかだった江戸時代。大寺院から町中の稲荷社まで多数の寺社で毎月のように縁日が行われ、「出開帳」などのイベントにも多くの人々が集まった。庶民の関心は江戸市中にとどまらず、近場では江ノ島の弁財天や大山石尊社、遠方では富士山から伊勢神宮まで、行楽を兼ねて人々は繰り出していったのである。流行り廃りが激しいのも江戸庶民の信仰の特徴だった。当時の世相を描いた浮世絵は、こうした流行を現代のSNSのように伝え、拡散する役割を果たした。浮世絵に描かれた「信仰」や「迷信」、「うわさ」、「ちょっと怪しいニュース」……。今回の展示は「信じる」がキーワードだ。

歌川広重「伊勢参宮宮川の渡し」

移ろいやすい江戸の民間信仰を象徴するのが突如として人気となる「流行神(はやりがみ)」。嘉永2年(1849)に回向院で出開帳が行われた於竹如来が好例だ。この時期には、内藤新宿正受院の奪衣婆、日本橋の翁稲荷も人気となった。歌川国芳をはじめとする絵師たちがこれらの「流行神」をこぞって描き、浮世絵がこの流行をさらに拡散させた。

歌川国芳「奪衣婆の願掛け」

一例がこの絵。ちょっと困った顔をした老婆を沢山の人々が取り囲んで、手を合わせて拝んでいる。内藤新宿の奪衣婆がモチーフだ。奪衣婆とは、三途の川のほとりで亡者の衣服を剥ぎ取る鬼婆のことである。「背が高くなりたい」「力持ちになりたい」「素敵な人と結婚したい」――、好き勝手な願い事に、呆れ顔の奪衣婆。歌川国芳らしいユーモアにあふれている。

作者不詳「大都会無事」

庶民の生活の中ではさまざまな迷信が信じられており、迷信と浮世絵との関わりも深かった。安政2年(1855)に起きた「安政の大地震」の後には、「鯰が地震を引き起こす」との迷信に基づいた「鯰絵」が数多く描かれた。疱瘡や麻疹、コレラなどが流行した際にも、病気にまつわる迷信を題材にした戯画風の作品が出版された。

作者不詳「海出人之図」

「ちょっと怪しいニュース」や「本当か嘘かわからないようなうわさ」も、しばしば浮世絵の題材ともなった。作者不詳「海出人之図」で描かれているのは、越後国で海中から出現したという人魚のような不思議な女性。女性は「これから伝染病が流行るが、自分の姿を絵に描いて家内に貼ると難を逃れる」と予言して消えたと言う。他にも本所を舞台にした「都市伝説」を題材にした「本所七不思議之内」などが紹介される。

三代歌川国輝「本所七不思議之内 置行堀」

(読売新聞美術展ナビ編集班)

新着情報をもっと見る