利休と与謝野晶子の生家のそばにあるミュージアム「さかい利晶の杜」 昭和初期の旅を吉田初三郎のパノラマ鳥瞰図とともに追想 企画展「与謝野寛・晶子夫妻の旅」

施設の外観{提供}写真

「さかい利晶の杜(りしょうのもり)」とは、大阪府堺市にある2015年に開館したミュージアムです。関西に住んでいる人にとっても、あまり聞き慣れない名前かもしれません。「利晶」とは、千利休と与謝野晶子のこと。つながりがなさそうですが、実は2人の生家の半径300メートル以内に位置することにちなんでいます。「千利休茶の湯館」と「与謝野晶子記念館」が入っており、二人をテーマとした常設展のほか、茶の湯を体験(現在は感染症対策のため中止)することができる施設です。

「与謝野寛・晶子夫妻の旅 ―パノラマ地図でたどる観光名所―」

2021年11月20日(土)から2022年1月23日(日)までは、企画展「与謝野寛・晶子夫妻の旅 ―パノラマ地図でたどる観光名所―」が行われています。美術ファンに注目していただきたいのは、大正から昭和にかけて活躍した鳥瞰図画家・吉田初三郎のパノラマ地図が複数展示されていることです。

吉田初三郎「旭川市を中心とせる名所交通鳥瞰図」(堺市博物館蔵)

与謝野寛・晶子夫妻は、生涯にわたって数多くの旅行をしました。単なる観光旅行ではなく、講演会やイベントなどに参加するための出張でもありました。夫妻は、12人の子どもたちの学費や生活費を稼ぐために、各地で講演したり、歌を詠んだりしたのです。夫妻の旅行回数がもっとも多かったのが、昭和6年(1931)でした。本展では、昭和6年の夫妻の旅のなかでも、北海道・九州・四国の3つの旅に焦点を当て、52点の資料や作品を紹介します。
初三郎は、与謝野晶子と同時期に活躍した画家。目玉のひとつが、3メートル以上におよぶ函館市のパノラマ地図原画です。

吉田初三郎「函館市を中心とせる道南景勝交通鳥瞰図」(堺市博物館蔵)

広大な函館の情景を、鳥のように空高い目線で俯瞰できる一方で、名所や建物、交通機関などの細部が一目瞭然でわかります。地図の中には、夫妻が訪れた五稜郭や函館図書館が描かれています。

五稜郭もはっきり

人々の暮らしが豊かになり、交通手段が発達した昭和初期には観光ブームが到来し、与謝野夫妻に限らず多くの人々が旅行を楽しみました。旅行のお供として人気だったのが、「旅行案内」。初三郎のパノラマ地図や名所の説明が掲載された「旅行案内」は、現代の「ガイドブック」のような役割を果たしました。

鮮やかなパノラマ地図が掲載された当時の「旅行案内」は現代でも通用しそう

晶子と初三郎は活動時期こそ重なるものの、特に交流があったわけではありませんでした。そんな二人は、昭和6年の別府の旅で初めて顔を合わせます。
晶子は、亀の井ホテルの創業者・油屋熊八が主催した全国大掌大会(手のひらの大きさを競う大会)で祝辞を読むために別府を訪れました。同時に、初三郎も大会の企画者のひとりとして、別府へ向かったのです。海地獄の前で撮影された集合写真には、夫妻と初三郎の姿が写っています。

与謝野夫妻と初三郎が写る別府温泉海地獄で。立っている人物のうち右から4人目晶子、5人目寛、2人の前の和服の男性が吉田初三郎
各地のパノラマ地図の部分写真を集めたコーナーは現代人にとっても興味深い

出口の扉を彩るのは、吉田初三郎「亀の井ホテル鳥瞰図」

コンパクトな展示室のなかに、昭和初期の旅の空気がぎゅっと詰まった本展。矢内一磨学芸員は、「新型コロナウイルスの感染拡大で行動を制約されるなかで、ささやかな旅気分を味わっていただきたいという想いを込めて企画した」と語ります。ぜひ足を運んでみてください。

晶子が訪れた定山渓温泉、湯布院温泉、道後温泉などの入浴剤も販売

(ライター・三間有紗)

「与謝野寛・晶子夫妻の旅 ―パノラマ地図でたどる観光名所―」
会場:さかい利晶の杜(大阪府堺市堺区宿院町西2丁1番1号)
会期:2021年11月20日(土)から2022年1月23日(日)
開館時間:午前9時~午後6時(最終入館午後5時30分)
休館日:第3火曜日(12月21日、1月18日)、年末年始12月29日~1月3日)
観覧料:大人300円 高校生 200円 小中学生 100円
詳しくは公式ホームページ(https://www.sakai-rishonomori.com/

直前の記事

新着情報一覧へ戻る