【プレビュー】徳川美術館の国宝「源氏物語絵巻」が修復を完了 全巻特別公開へ

尾張徳川家の宝物を伝える徳川美術館(名古屋市東区)が、所蔵する国宝「源氏物語絵巻」(平安時代・12世紀)の修理を終え、全15巻を11月13日から12月12日まで前後期にわけて特別公開する。
国宝「源氏物語絵巻」は、今からおよそ900年前、平安時代の12世紀前半に製作された絵巻で、平安文化を代表する至宝だ。断簡以外で現存するのは徳川美術館所蔵の「徳川本」と五島美術館所蔵の「五島本」だけ。
徳川本は、江戸時代の後期には、名古屋城二之丸と江戸の尾張藩上屋敷に、巻物として収蔵されていた。

明治になり、「源氏物語絵巻」が知られるようになり、展覧会へ出品される機会も増えた。一方で、展示で巻物を開閉するたびに絵巻が損傷することを危惧したのが、尾張徳川家19代の徳川義親だった。義親は、徳川美術館を昭和10年(1935年)に開館するが、その3年前の昭和7年、熟慮の結果、3巻の巻物だった「源氏物語絵巻」の紙の継ぎ目を剥がして分解して、額に入った状態(額面装)にすることを決断した。

当時としては、保存と公開の観点で最善の判断ではあったが、「絵巻」という作品名でありながら、絵巻ではない状態が80年以上続いていた。台紙に貼る額面装は時とともに劣化が進みやすい可能性があり、将来的な保存を考慮して、再び巻物状(巻子装)に戻すことになった。

修復は、平成24年(2012年)から令和2年(2020年)まで、2期8年にわたり実施。その結果、折れや皺は解消され、巻物特有の開閉にも支障のない状態となった。


それぞれの額に分断されていた詞書と絵がつなげられて一続きになったことで、優美な仮名の流れや料紙の微妙な色の変化を鑑賞できるようなり、詞書と絵が互いに響き合う絵巻本来の姿がよみがえったという。
同館では、国宝「源氏物語絵巻」全15場面を日本語と英語で案内する、電子ブックも無料で公開している。
今回は、前期(11月13日~30日)に8場面8巻、後期(12月1日~12日)に7場面7巻が特別公開される。
同期間に、企画展「唐絵-尾張徳川家の中国絵画」も開催され、同じ観覧料で両方を見ることができる。

(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)
修復完了記念 館蔵全巻特別公開 国宝 源氏物語絵巻 企画展「唐絵-尾張徳川家の中国絵画」 |
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会場:徳川美術館(名古屋市東区徳川町1017) |
会期:2021年11月13日(土)~12月12日(日) |
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
観覧料:一般1400円、高・大生700円、小・中生500円 |
詳しくは徳川美術館の公式サイトへ。 |