【プレビュー】「ボストン美術館展 芸術×力」東京都美術館で7月23日開幕 力とともにあった美術の歴史を振り返る

《メアリー王女、チャールズ1世の娘》アンソニー・ヴァン・ダイク 1637年頃 Museum of Fine Arts, Boston Given in memory of Govsrner Alvan T. Fuller by the Fuller Foundation

ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)
会場:東京都美術館(東京・上野公園)
会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日)
休室日:月曜日、9月20日(火) ※ただし9月19日(月・祝)は開室
アクセス:JR上野駅公園口から徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅から徒歩10分、京成電鉄京成上野駅から徒歩10分
観覧料 一般 2,000円/大学生・専門学校生 1,300円/65歳以上 1,400円 (日時指定予約*7月1日から予約販売開始)
高校生以下無料(日時指定予約必要)。未就学児は日時指定予約不要
詳しくは公式HP(https://www.ntv.co.jp/boston2022/)で確認を。(All photographs © Museum of Fine Arts, Boston)

市民ら有志によって設立され、1876年、アメリカの独立100周年記念日に開館したボストン美術館。古代エジプトからヨーロッパ、アジア、アメリカに至るまで、開館当初は約6000点だったコレクションは現在では50万点近くに及んでいる。そのコレクションから「芸術と力」をテーマに作品をチョイスしたこの展覧会は、2020年4月から東京都美術館、福岡市美術館、神戸市立博物館の3会場で予定されていたが、コロナ禍で中止に。約2年の時を経て、ほぼ同じ内容で東京都美術館の1会場で開催されることになった。

芸術の力。古今東西の権力者たちは、数々の形でそれを利用してきた。威厳に満ちた肖像画、精緻に描写された物語、美しい工芸品……一流のアーティストに作らせた芸術品の数々は宮廷を彩り、時に外交の場で利用されてきた。この展覧会では、芸術作品が担っていたそういう役割に焦点を当て、力とともにあった芸術の歴史を振り返る。

《モンスーンを楽しむマハーラジャ、サングラーム・シング》インド北部(メーワール、ラージャスターン地方)、ムガル帝国時代、1720-1725年頃 Museum of Fine Arts, Boston Gift of John Goelet

古代エジプトのファラオや19世紀のフランス皇帝ナポレオンなど、統治者の姿は人々を圧倒する姿で絵画や彫刻に記されてきた。また、宗教的な儀式を執り行うことも為政者の重要な役割だった。外交の場では、より強い国への貢ぎ物、自らの支配下にある地域への下賜品などに使われることもあった。様々な国々、様々な時代。今回展示される約60点の美術品の半数以上は、日本初公開のものだという。

《玉座の聖母子と聖司教、洗礼者聖ヨハネ、四天使》ニッコロ・ディ・ブオナッコルソ 1380年頃 Museum of Fine Arts, Boston Gift of Thomas O. Richardson

権力者たちは、芸術を自国の統治や外交に役立てただけではなく、そのパトロンともなった。その暮らしを彩る豪華な調度品も、力や富の象徴となっていた。時代を超えて女性たちが愛した工芸品やジュエリー、権力者たちが収集し代々継承してきた重要な美術品も展示される。

《平皿「マルメゾン城の植物のセルヴィス」より》フランス、セーヴル磁器製作所 フランス、1803-1804年 Museum of Fine Arts, Boston  Gift of Mr. and Mrs. Henry R. Kravis

日本関連の美術品も数多い。この展覧会のために修復されて「里帰り」するのは、江戸時代に伊勢長島藩を治めた大名・増山雪斎の《孔雀図》。さらに、「国内にあれば国宝」といわれる《吉備大臣入唐絵巻》《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》も「里帰り」する。遣唐使・吉備真備の活躍を描いた前者と、平治の乱をテーマに「合戦絵巻の最高傑作のひとつ」と言われる後者、両作品が同時に展示されることは、きわめて貴重だ。

《孔雀図》増山雪斎 江戸時代、享和元年(1801) Museum of Fine Arts, Boston  Fenollosa-Weld Collection

(読売新聞美術展ナビ編集班)

オフィシャルサポーター要潤さんインタビュー