【レビュー】「創業200周年記念 フィンレイソン展」(京都文化博物館)北欧フィンランドのデザインの世界へ没入

ムーミン×フィンレイソン 展示風景

「創業200周年記念 フィンレイソン展−フィンランドの暮らしに愛され続けたテキスタイル−」が、京都文化博物館で2021年10月9日(土)から2022年1月10日(月・祝)まで開催されています。
北欧フィンランドのインテリアは、多くの人々の暮らしを彩ってきました。フィンランド最古のテキスタイルブランドであるフィンレイソンも、その一つです。フィンレイソンは、ムーミン柄の生地を制作する数少ない会社としても知られています。
本展では、フィンレイソン社の創業200周年を記念して、約250点の資料や原画、生地見本などを展示。フィンレイソンのテキスタイルの魅力に迫ります。

女性の雇用や通貨の発行も 先進的だった19世紀のフィンレイソン

第1章「地域社会を支えたタンペレ紡績工場」では、タンペレ歴史博物館が所蔵している糸見本や生地などを紹介し、200年にわたるフィンレイソンの歴史をひもときます。
1820年、英国スコットランド人のジェームズ・フィンレイソンがタンペレに紡績工場を設立しました。これが、フィンレイソン社の始まりです。

第1章 展示風景(左)紐とロープの見本ボード 1900年代初 タンペレ歴史博物館所蔵(中央)紐、縄見本  1900年代初 タンペレ歴史博物館所蔵(右)生地の製品ラベル(紙)1910-20年代 タンペレ歴史博物館所蔵

フィンレイソンは、タンペレの人口の3分の1もの人を雇い、 フィンランドで初めて女性を雇用しました。
さらに、工場内に学校や図書館、病院などを開設。病院では、薬や医療を無料で提供したそうです。フィンレイソン社は、労働者に充実した福利厚生を提供してきたのです。
特に注目したいのが「フィンレイソン通貨」です。クリミア戦争(1853-56年)による通貨不足を解消するために、フィンレイソン社は独自に通貨を発行し、給料を支払いました。フィンレイソン通貨はルーブルやコペイカと同等に扱われ、市内の大半の店舗で使用できたそうです。
地域の人々の生活や健康を支えてきたフィンレイソン。その姿から、福祉先進国フィンランドに通じるものを感じます。

原画や生地見本で没入するフィンレイソンの世界観

フィンレイソンは、1951年にフィンランド初の自社アトリエを設立し、社内デザイナーを登用しました。以降、優れたデザイナーによって革新的なデザインが生み出され、テキスタイルブランドとして成長し続けてきました。

第2章「フォルッサデザインアトリエの設立とデザイナーの活躍」では、原画や生地見本をデザイナーごとに展示しています。

第2章 展示風景(右)「コロナ」生地見本(プリント・綿)2001年 アイニ・ヴァーリ タンペレ歴史博物館所蔵(左)「コロナ」生地見本(プリント・コットン)1958-60年 アイニ・ヴァーリ タンペレ歴史博物館所蔵

もっとも多く紹介されていたのが、アイニ・ヴァーリの作品。
1950年代に生み出された「コロナ柄」は、人気デザインとして21世紀初頭に復刻されました。どことなくリズミカルなこの柄を「ジャズ」と呼ぶのだとか。

第2章 アイニ・ヴァーリの原画などの展示風景
第2章 アイニ・ヴァーリの原画などの展示風景
第2章 アイニ・ヴァーリの原画などの展示風景

アイニ・ヴァーリは、リンゴや花、幾何学模様など、様々なモチーフをテーマに幅広いデザインを手がけました。足を進めるごとに、展示室の表情がくるくると変わります。

おなじみのゾウの柄の制作秘話も

第2章 展示風景「エレファンティ(象)」生地見本(プリント・綿)2012年 ライナ・コスケラ フォルッサ博物館所蔵

こちらのゾウの柄は、フィンレイソンを知らない方でも、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。ライナ・コスケラの「エレファンティ(象)」というデザインです。

実は、エレファンティ(象)は、ヘルシンキ芸術大学とフィンレイソンが主催したデザイン・コンペで入賞したことをきっかけにデビューしたそうです。
ライナ・コスケラがコンペのために描いた下絵も見ることができます。下絵を見ると、当初は象の背中に日よけや鞍が描かれていたものの、最終的に削除されたことがわかります。

第2章 展示風景「エレファンティ(象)」スケッチ(トレーシングペーパー・フェルトペン)1969年 ライナ・コスケラ ライナ・コスケラ所蔵

1970年代に日本を訪れたウッラ・ペルホの原画も展示。フェルトペンで描かれた点々は、刺し子のようにも見えます。どことなく日本らしさを感じさせる、不思議な作品でした。

第2章 ウッラ・ペルホの原画などの展示風景

ここでは紹介しきれないほど、多くのデザイン原画や生地見本に巡り会えます。ぜひ会場で、お気に入りのデザインを探してみてください。

第2章アヌ・サーリの原画などの展示風景

ムーミン×フィンレイソン

フィンレイソンは、ムーミンの作者「トーベ・ヤンソン」からムーミン柄の生地を制作する許諾を得ている企業の一つです。「ムーミン×フィンレイソン」の展示室では、リーサ・コタによって描かれたムーミン柄の原画や生地見本が展示されています。
中には、「ムーミン谷の夏まつり」「ムーミン谷の冬」などのお話のイラストを元にデザインされた原画も。じっと見つめていると、今にもキャラクターが動き出しそうな気がしてきました。それぞれの原画に、ムーミンのストーリーが息づいているのかもしれません。

ムーミン×フィンレイソン 展示風景
ムーミン×フィンレイソン 展示風景

未来へ続くデザイン

「創業200周年を迎えて」の章では、現在フィンレイソンで活躍しているデザイナーの作品を見ることができます。

「オッツォ」原画データ 2013年 サミ・ヴッリ フィンレイソン社所蔵

フィンレイソン社は、リサイクル商品の生産にも積極的に取り組んでいます。最終章「サステナブル」では、古いシーツをリユースして作られたテープを展示。このテープは、裂き織のラグやクッションなどの製品として、再び世に送り出されるのです。

Rag Rag(ラグ・ラグ)シーツをリユースして作られたテープ

選びきれない!グッズも豊富

グッズコーナーも充実。最後の最後まで、時間が経つのを忘れて楽しめます。

文具やキッチン用品、インテリアなど、様々なアイテムが販売されています。ここにあるグッズだけで、部屋を丸ごとコーディネートできてしまうのでは……?

もちろんムーミングッズも

お気に入りのデザインのグッズがあるか、ぜひ探してみてください。筆者は30分は売り場を行ったり来たりし、複数のグッズを購入しました。
(ライター・三間有紗)

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