【全エリア体験レポ】「チームラボプラネッツ」に2つのアート作品とともに「ラーメン店」「花屋」がオープン

teamLab, 2016-2018, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi

東京・豊洲にあるチームラボのミュージアム「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」に10月8日から新たに2つのアート作品が加わった。さらに、それに合わせて、京都発のヴィーガンラーメン店「Vegan Ramen UZU Tokyo」、同ミュージアムの作品に使用されたランを持ち帰りできるフラワーショップ「teamLab Flower Shop」がオープン。アートの場にラーメン店と花屋が加わる意味はなにか? 3つの新トピックスとともに既存作品を含めた同ミュージアムの魅力について、全エリアを体験してレポートする。

新たに加わった2つのアート空間

今回、新たに公開されたのはパブリックエリアに設けられた《空と火のためのロングテーブル》と《虚像反転無分別》という2作品だ。このうち、エントランスを入って右手にある《空と火のためのロングテーブル》は、全面が鏡面になった長いテーブル。東側に立つと、同じく屋外に設けられたアート作品《空から噴き落ちる、地上に憑依する炎》とその周囲の空を写し込み、天地が対象となった“鏡張り”の景色が生まれる。

夜に撮影 teamLab Architects, 2021
日中に撮影 teamLab Architects, 2021

頂点部分に空の色を写し込む《空から噴き落ちる、地上に憑依する炎》は、天候や時間帯によって見え方が変化する作品だ。同様に《空と火のためのロングテーブル》も訪れるタイミングによって見える景色を大きく変える。

teamLab, 2021, Digital Installation, Sound: Hideaki Takahashi

その隣の建物内にあるもうひとつの新作品《虚像反転無分別》は、チームラボが設立当初から表現し続けている空間に書く書「空書」が室内全体に流れるアート作品だ。
本作では、書の墨跡が持つ深さや速さ、力強さのようなものを、新たな解釈によって空間の中へ立体的に再構築。それらをチームラボの作品に共通する概念である「超主観空間」の論理構造によって二次元化している。
室内にはテーブルや椅子が設けられているが、書は立体面と平面を行き来しながらその境界を開放し、鑑賞者自身も空間と一体になったかのような感覚に落ち入る。捉え方は人それぞれだが、生きる力、あるいは人生の無常感みたいなものを感じる空間だ。

ヴィーガンラーメン店の“茶ラーメン”を体験

新たに公開された2つの作品空間では、このタイミングで同時にオープンした「Vegan Ramen UZU Tokyo」が提供するヴィーガンラーメンが食べられる。

同店は昨年3月に京都にオープンし、話題を呼んでいる「Vegan Ramen UZU Kyoto」が原点。京都の店舗でもチームラボとコラボしていることから今回の東京出店が決まった。

メニューの中心は肉や魚を一切使わないヴィーガンラーメンだ。「ヴィーガンラーメン醤油」、「ヴィーガンラーメン味噌(辛)」のほか、東京限定で「ヴィーガンラーメン花(冷)」と「ヴィーガンラーメン茶」という4種のラーメンを提供。報道内覧会のこの日は《虚像反転無分別》の中で「ヴィーガンラーメン茶」を試食できた。

「ヴィーガンラーメン茶」

アート空間の中で食べるラーメンが初めてならばヴィーガンラーメンを食べるのも初めて。さらにお茶スープのラーメンも初めてということで初めてづくしの体験。空書に囲まれた空間でしばらくじっと待つと、おそらく初めて見る深緑のスープをしたラーメンが手前の卓上に運ばれてきた。

ベースとなるスープは、昆布、椎茸に数種の香味野菜を加え、長時間かけて水出しした後に低温で煮出したもの。「ヴィーガンラーメン茶」は、そこに味噌だれと粉末の緑茶を加えているという。

写真だけ撮影させてもらった「ヴィーガンラーメン花(冷)」

ヴィーガンのラーメンと聞いて淡白なイメージを抱いていたが、スープを一口すすってみると、その予想は覆された。スープは軽い口当たりながら深みを感じる味わいだ。一方で、緑茶の風味を残しながら味噌のコクと丸みのあるスープが一見異質な素材をバランスよく取り込んでいる。

既存のアート作品もチェック!

この日はチームラボプラネッツにある既存のアート空間もあらためて体験した。

チームラボプラネッツは最初のロッカーで靴下を脱ぎ、裸足で鑑賞するミュージアムだ。途中、足が水に浸かる空間もあるため、短い丈か膝下くらいまで裾をまくれる服装で訪れたほうがよいだろう。(また、鏡面の床もあるのでスカートよりもズボンがおすすめだ。)

館内は「ウォーターエリア」と「ガーデンエリア」に分かれている。まずは「ウォーターエリア」に進もう。

作品と作品の間には暗闇の道になっている。鑑賞者はチームラボが作り出した空間の中に迷い込み、全身を動かしながら、行く先々で新しいアート体験に出会う。そうした冒険のような体験が、このミュージアムの醍醐味といえる。

《坂の上にある光の滝》では、見上げる先に待つ光の滝を目指しながら水が流れる坂を歩く。滝の音だけが聴こえる静寂の中、裸足に水の冷たさを感じることで、身体で感じるアート体験に必要な五感が研ぎ澄まされる。

teamLab, 2018, Digital Installation

《The Infinite Crystal Universe》は、無数に散りばめられた光の粒の集合体が立体物を描くインタラクティブ作品。鑑賞者はスマホアプリから立体物を飛ばすことができ、それらはぶつかり合いながら空間を変化させていく。
宇宙空間を連想させる無限に続く世界では上下左右に視点を変えることでユニークな写真が撮影できる。

teamLab, 2018, Interactive Installation of Light Sculpture, LED, Endless, Sound: teamLab
teamLab, 2018, Interactive Installation of Light Sculpture, LED, Endless, Sound: teamLab

《人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング》では、デジタルで描かれた無数の鯉が泳ぐ池の中を歩く。鯉は人に触れることで花に変わり、水面に散っていく。
夏はヒマワリ、秋はコスモスと表れる花は季節によって変わる。やがて鯉や花は光線に変化し、カラフルな光の軌跡に包まれる光景が生まれていく。
なお、本作の映像は常にリアルタイムで描き続けられており、人の存在によっても変化するため、2度と同じ光景に出合うことはない。

teamLab, 2016-2018, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
teamLab, 2016-2018, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi

《憑依する炎》は、屋外で見た《空から噴き落ちる、地上に憑依する炎》のベースになった作品。館内で唯一、立ち止まって鑑賞する作品でもある。本作では燃焼する際の機体の分子を線で描き、その集合体によって炎を描いている。延々と揺らぎ燃え続ける炎には焚き火を見ているような不思議な癒しを感じる。

teamLab, 2021, Digital Installation, Continuous Loop, Sound: Hideaki Takahashi

《意思を持ち変容する空間、広がる立体的存在 – 平面化する3色と曖昧な9色、自由浮遊》は、浮遊する大きな球体の中を分け入って歩く作品だ。球体は人に触れたり衝撃を受けることで色を変化させ、音を立てながら周囲に伝播していく。一定ではない球体の中に存在することで鑑賞者は自らも作品の一部であることを体感する。

teamLab, 2018, Interactive Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
teamLab, 2016-2018, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi

《Floating in the Falling Universe of Flowers》は、ドーム空間の中をコンピュータプログラムによって描かれた四季の花々が咲き誇る空間だ。
ここはぜひ、床の上に座って、あるいは寝転がって鑑賞してみて欲しい。360度すべてが花々に包まれる光景から徐々に浮遊感を感じることができるはずだ。

1万3000株のランに包まれる唯一無二の没入体験!

続いて「ガーデンエリア」へ。こちらは今年7月に公開されたばかり。ここで見られる2作品は外光を取り入れているため、日中と日没後で見え方が変わるのが特徴のひとつである。

《Floating Flower Garden:花と我と同根、庭と我と一体》は、なんと1万3000株もの着生ランによって構成された作品だ。
花々が作り出すカーテンは人の存在を感じることで上に上がり、人がいなくなれば再び下がる。つまり人が花を見ているだけではなく、花も人を見ているという双方向のつながりを感じる。分け入っていくといつしか見渡す限りランに囲まれた空間になり、花々の中に埋没する感動体験が味わえる。

teamLab, 2015, Interactive Kinetic Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi

なお、今回新たにオープンしたフラワーショップ「teamLab Flower Shop」では、この作品に使われたランを購入して持ち帰ることができる。

teamLab Flower Shop

もう一方の作品《呼応する小宇宙の苔庭 – 固形化された光の色, Sunrise and Sunset》は、天然の苔庭に「ovoid」という卵球体が無数に置かれた作品。
この空間は日中と日没後で大きく姿を変え、日中は霧の苔庭に銀色の卵球体が浮かぶインスタレーション作品であるのに対し、日没後は61色の「固形化された光の色」で輝くインタラクティブ作品になる。光輝く卵球体は触れることで色を変化させ、その変化は周囲に連鎖していく。

teamLab, 2020, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi

以上、チームラボプラネッツの魅力をお伝えした。読者のみなさんは長いレポートと感じたかもしれないが、これでもかなり”凝縮”している。新たな要素が加わり、「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」はさらにパワーアップした。未知のアート体験の連続に驚き、心動かされるだろう。

(文・写真ともにライター・鈴木翔)

チームラボプラネッツ TOKYO DMM
所在地:東京都江東区豊洲6-1-16 teamLab Planets TOKYO
会期:2022年末まで
開館時間(10月):平日10:00〜19:00、 土曜9:00〜20:00、日曜9:00〜19:00
*最終入場は閉館の1時間前
料金:大人(18歳以上)3200円 大学生・専門学生2500円 中学生・高校生2000 小人(4歳–12歳)300円など
詳しくは公式サイト
Vegan Ramen UZU Tokyoの営業時間などは公式サイト