スペイン出身の世界的アーティスト「ミケル・バルセロ展」から注目の3点を三重県立美術館の学芸員が紹介

現代を代表するアーティスト、ミケル・バルセロの大自然を着想源にした独創的でダイナミックな作品が並ぶ会場

10月24日まで三重県立美術館で開催されている「ミケル・バルセロ展」の見どころを、同館の坂本龍太学芸員に解説してもらいました。 同展は来年1月13日から3月25日まで、東京オペラシティアートギャラリーに巡回する予定です。

海のスープ 

《海のスープ》 1984年 作家蔵 ⓒADAGP, Paris&JASPAR, Tokyo, 2021. Photograph:ⓒAndre´ Morin

 ミケル・バルセロは1957年にスペインのマジョルカ島で生まれました。《海のスープ》はバルセロがまだ駆け出しの頃の作品です。 

長さ約3メートルのカンヴァスに、スープの入った楕円だえん形のおわんが描かれています。スプーンの柄を表す木の棒は、実際にカンヴァスに突き刺さっています。渦を巻き、お椀からあふれるスープは、しけた海のようです。

バルセロは素材が混ざり合うスープと、様々な生命が住まう海に類縁性を見いだしました。

本作では、海という「大宇宙」とスープという「小宇宙」が重なり、ダイナミックな世界が表現されています。  

とどめの一突き 

《とどめの一突き》 1990年 作家蔵 ⓒADAGP, Paris&JASPAR, Tokyo, 2021. Photograph: ⓒAndre´ Morin

 スペインと言えば、闘牛を思い浮かべる人も多いでしょう。この作品は、闘牛士が雄牛にとどめを刺す瞬間を表現した一枚。画面いっぱいに描かれた円の中、下の方に闘牛士と雄牛の姿が見えます。

主役である彼らの姿は小さく、砂などを混ぜた絵の具によって描かれた闘牛場は、離れて見ると、まるで火山の噴火口のようです。


バルセロは、イタリアで見たヴェスヴィオ火山を闘牛場のようだったと言っています。本作でこの二つのイメージを重ねたのでしょう。


噴火口と闘牛場という、ともに生と死の緊張感が一瞬にして高まる場が、時空を越え、カンヴァス上で一つになっています。


下は熱い 

《下は熱い》 2019年 作家蔵 ⓒADAGP, Paris&JASPAR, Tokyo, 2021. Photograph: ⓒAgusti´ Torres

バルセロの芸術を語る上で、「海」は欠かせません。地中海に浮かぶマジョルカ島に生まれたバルセロは、幼いころ、海に潜り、魚やタコなどを捕ったそうです。そうした体験は彼の芸術制作の重要な着想源となっています。

《下は熱い》では、海面に浮かぶ魚たちが描かれます。写真からではわかりにくいのですが、カンヴァスの切れ端で作られた魚の顔は、実際に画面から飛び出ています。


タイトルは海底で起きた異常をほのめかしているのでしょうか。水温の上昇に驚いた魚たちが、まさに海面から顔をのぞかせているようなユニークな作品です。
 

(坂本龍太・三重県立美術館学芸員)

ミケル・バルセロ展
会期: 2021年8月14日から10月24日まで
*感染症対策のため8月27日~9月30日まで臨時休館した
会場: 三重県立美術館(津市大谷町、電話059・227・2100)
観覧料: 一般1000円、学生800円、高校生以下無料
休館日:月曜
詳細は同館のHP

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