【プレビュー】――上田薫と現代の作家たちによる「リアルな絵画」を紹介 「上田薫とリアルな絵画」展 茨城県近代美術館で10月26日から

「上田薫とリアルな絵画」 |
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会場:茨城県近代美術館 |
会期:2021年10月26日(火)~12月12日(日) |
休館日:月曜休館 |
アクセス:水戸市千波町、JR水戸駅南口から徒歩約20分、北口8番のりば(平日は南口2番のりばからも)で「払沢方面、または本郷方面」行きのバスに乗車し、「文化センター入口」で下車約5分。 |
入館料:一般870円、満70歳以上430円、高校生、大学生610円、小、中学生370円ほか。 |
※最新情報は公式サイト(http://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/)で確認を。 |
上田薫(1928~ )は、日本におけるスーパーリアリズムの第一人者として広く知られる画家。割れたなま玉子の殻から中身が落ちる瞬間を描いた絵は有名だ。ほかにも上田は、スプーンですくい取られたアイスクリーム、シャボン玉、水の流れといった身近なモノの一瞬の姿をリアルに表現する作品の数々で高く評価されてきた。写真を利用して対象をクローズアップで描くことにより、肉眼による認識をはるかにしのぐ視覚世界を現出させ、観る者の知覚に揺さぶりをかけて新たなリアルに対する思索へと誘うのだ。

この展覧会は、上田の仕事を代表的なシリーズによって振り返るとともに、現代の作家によるリアルな絵画表現を併せて紹介する。光が作り出す複雑な様相、人物表現の現代性など、それぞれの関心に基づいて独自のリアリティーを追求している作家たち。半世紀を超える上田の表現をたどることは、現代のアートシーンで活躍する作家たちの「リアル」を考える上でも重要な意味を持つに違いない。

展示される作品は56点。うち上田の作品は35点。展示は、上田の「玉子」シリーズで始まる。続いて提示されるのが、現代作家による多様な「リアル」。橋爪彩の「Girls Start the Riot」は、西洋絵画の静物画などの伝統を踏まえつつ、謎めいた雰囲気で見る者の視線を惹きつける。山本大貴の「Standing Figure (feat. IKEUCHI Hiroto)」は、アニメなどのサブカルチャーの要素を取り入れて、現代的な女性像のあり方を追い求めた。このほか、様々な現代作家による光の表現にもスペースを割く。

展覧会の最終章となるのは、様々なシリーズを通じてモノのリアルを追及する上田の幅広い作品世界。近年は身近なモチーフに目を向けて野菜や果物が目に鮮やかな「サラダ」シリーズなどの意欲作を発表している。会期中、11月6日に昭和女子大の木下亮教授による講演会「リアルの基層と現在」を行うなど、関連イベントの開催も。イベントの詳細は、前記公式サイトで。

(読売新聞美術展ナビ編集班)