【レビュー】「ハリー・ポッターと魔法の歴史」 ホグワーツの生徒になった気分で魔法界の源を学ぶ(前編)

「ハリー・ポッターと魔法の歴史」第1章「旅」の展示風景(兵庫県立美術館で)

特別展「ハリー・ポッターと魔法の歴史」が11月7日まで、兵庫県立美術館で開催されています。
1990年、作家J.K. ローリングがマンチェスターからロンドンに向かう列車の中で思いついた、少年「ハリー・ポッター」の物語。5年の歳月をかけて練り上げられた物語は、世界的ベストセラーとして、20年以上にわたって親しまれてきました。
本展では、原作者J.K. ローリングの直筆原稿やスケッチに加え、大英図書館が所蔵する貴重な書籍や資料などを展示し、ハリー・ポッターの世界の源となった言い伝えや魔法の歴史を紐解きます。
本展の見どころを前編「魔法の世界にみずから没入する」と後編「J.K. ローリングの創作の秘密に迫る」の2つの切り口で紹介します。(後編はこちら

特別展「ハリー・ポッターと魔法の歴史」第6章「天文学」の展示風景

「ホグワーツ魔法魔術学校で学んでみたい」夢がかなう

ハリー・ポッターの物語の根底には、何世紀にもわたって親しまれてきた風習や伝説、信仰があります。だからこそ世界中の人々が、物語の世界観に引き込まれたのでしょう。登場する多くの魔術や生き物が、実際の記録や神話で言い伝えられてきたことが本展を見るとわかります。

「いつかホグワーツ魔法魔術学校で学んでみたい」と願っていた方には、絶好の機会です。
2〜9章にかけて、ホグワーツでハリーたちが学ぶ科目に沿って構成されているため、ホグワーツの生徒になった気分が味わえるのです。
まずは、それぞれの章のタイトルを紹介しましょう。

  • 2章 魔法薬学
  • 3章 錬金術
  • 4章 薬草学
  • 5章 呪文学
  • 6章 天文学
  • 7章 占い学
  • 8章 闇の魔術に対する防衛術
  • 9章 魔法生物飼育学

これだけでワクワクしませんか。

第2章では、セブルス・スネイプ先生でおなじみの「魔法薬学」に関する資料を展示。魔術の象徴として古くから知られる「破裂した大鍋」(20世紀 魔術・魔法博物館蔵)が目に入ります。
大鍋は、ホグワーツに入学する生徒が最初に持ち込む道具の一つでもあります。大鍋の前に立つと、ハーマイオニーが、材料をかき混ぜながらポリジュース薬を作るシーンが思い浮かびました。

(中央左)「破裂した大鍋」(20世紀)魔術・魔法博物館蔵。第2章「魔法薬学」

J.K. ローリングは、薬草や魔法薬の名前を考える際、薬剤師ニコラス・カルペパーの薬草書を参考にしたそうです。第4章「薬草学」では、これらの薬草書が展示されています。

「薬草書」15世紀 大英図書館蔵 ©British Library Board

「薬草学」といえば、スプラウト先生によるマンドレイクの授業を思い出す方も多いのではないでしょうか。中世の薬草書でマンドレイクは、頭痛や耳の痛み、痛風、精神異常に効く一方で、収穫には危険が伴うと伝えられてきました。
そのマンドレイクの根(イングランド 16世紀または17世紀 サイエンス・ミュージアム蔵)の標本をぜひお見逃しなく。

呪文学、占い学、物語の世界に没入

物語に欠かせない「呪文学」も学べます。不思議な音に誘われて展示室に入ると、飛び回る「金のスニッチ」が目に飛び込んできました。物語で大活躍した「透明マント」や「オルガ・ハントのほうき」など、興味深い品々にもご注目!

(中央左)「透明マント」(年代不詳)個人蔵(中央上)「オルガ・ハントの箒」魔術・魔法博物館蔵(中央下)《クィディッチをするハリー・ポッターとドラコ・マルフォイの習作》ブルームズベリー社蔵 第5章「呪文学」の展示風景

そのほか、シビル・トレローニー先生の「占い学」や、ハリーにとって重要な科目だった「闇の魔術に対する防衛術」も。

第7章「占い学」の展示風景
(右)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《魔法円》(1886年)テート蔵。第8章「闇の魔術に対する防衛術」の展示風景

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの《魔法円》(1886年 テート蔵)には、防衛のための円を描く魔女が描かれています。『ハリーポッターと死の秘宝』でハーマイオニーが保護呪文を使う場面を彷彿ほうふつさせました。

(左)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《人魚》(1900年)ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ蔵(中央)「人魚ミイラ」日本(1682年寄贈?)瑞龍寺(通称 鉄眼寺)蔵 第9章「魔法生物飼育学」

クライマックスを飾るのは、9章「魔法生物飼育学」。ドラゴンやユニコーン、人魚など、物語で登場した不思議な生物について学べます。

会場の奥へ進めば進むほど、物語の世界に没入できる特別展「ハリー・ポッターと魔法の歴史」。妖しく神秘的な魔法の虜になることでしょう。
(ライター・三間有紗)

特別展「ハリー・ポッターと魔法の歴史」
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)、阪神岩屋駅(兵庫県立美術館前)から徒歩約8分、JR神戸線灘駅南口から徒歩約10分
会期:2021年9月11日(土)~11月7日(日)。月曜休館
開館時間:午前10時~午後6時(入場は閉館の30分前まで)
観覧料(日時指定制):一般1,800円(当日2,000円)、大学生1,300円(当日1,500円)、高校生以下無料、70歳以上1,000円など
各時間帯とも予約不要の「当日券」を会場にて若干数販売。数量限定で、なくなり次第終了
2021年12月18日(土)~2022年3月27日(日)に東京ステーションギャラリーにも巡回する
詳しくは展覧会公式サイト(https://historyofmagic.jp/)を参照

レビュー後編はこちらをご覧ください。「ハリー・ポッターと魔法の歴史」 直筆原稿やメモでJ.K. ローリングの創造の秘密にせまる

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