【レビュー】美の手法を追い求めた二人 開館55周年記念特別展「速水御舟と吉田善彦 -師弟による超絶技巧の競演-」 山種美術館(東京・広尾)で開催中

日本画の手法を追い求めた速水御舟(1894-1935)と吉田善彦(1912-2001)。師弟である二人の超絶技巧により生み出された、山種美術館コレクションの「顔」とも言うべき作品を中心に、同館所蔵以外のもの合わせて63点が展示されている。
開館55周年記念特別展「速水御舟と吉田善彦 -師弟による超絶技巧の競演-」
山種美術館(東京・広尾)
会 期 9月9日(木)~11月7日(日)
開館時間 午前10時~午後4時 土・日・祝日は午前10時~午後5時(入館はいずれも閉館30分前まで)
※今後の状況により変更することも
休館日 月曜日=9月20日(月・祝)は開館、9月21日は休館
入館料 一般1300円ほか 中学生以下無料
JR恵比寿駅西口・地下鉄日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
詳しくは同館ホームページへ
第1章 速水御舟-日本画の挑戦者-

「絵画修業の道程に於て一番私が恐れることは型が出来ると云うこと」と述べた御舟の、挑み続けた技法と変化していく画風に沿って展示は流れていく。墨のにじみやぼかしなどの特性を生かした技法、写実を突き詰めた時代、黄土や群青といった色へのこだわりとそれを脱した絵、琳派の構図を取り入れた屏風…。展示の説明もていねいで御舟の技法へのこだわりと画風の変化がよく分かる。







照明を落とした第二展示室に入ろうとすると、正面の《炎舞》が目に飛び込んでくる。闇の中から立ち昇る炎のバチバチという音が聞こえてきそうだ。だが、実際の室内は音ひとつない。闇の中で舞う炎と蛾。御舟が「二度と出せない色」と語った深い闇を背にした炎に引き込まれて、自分が蛾になってしまったかのようだ。

第2章 吉田善彦-御舟に薫陶を受けた画家-
善彦は17歳で親戚の御舟に弟子入りする。御舟に師事したのは御舟が急逝するまでの6年間という短い期間だったが、制作姿勢や実験的な試みに接することができた。戦中・戦後は法隆寺金堂壁画の模写にも参加した。古画の風化した美しさを追求するようになり、金箔ともみ紙を使った「吉田様式」と呼ばれる独自の世界を生み出す。この様式を初めて用いた《桂垣》や《寒林》、《青木原》、《雪原》、《東大寺講堂跡》、《春暁阿蘇》など山種美術館所蔵以外のものも含め展示している。

法隆寺金堂壁画模写事業に助手として参加していた期間に描かれた。この事業に参加して「第二の故郷」と述べるほど奈良に魅了されることになる。
彩色した紙をもみほぐして金箔を被せ、さらに淡い色彩を施す「吉田様式」と呼ばれる手法で描かれた絵。あわあわとした輪郭で、柔らかい不思議な光を放っていた。

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)