NHK Eテレ「ねこのめ美じゅつかん」の制作者に聞く 「軽い気持ちで見て」「美術を次の世代に」

怪盗ネコが美術館に潜入!(『箱根の印象派にしのび足』より)

軽いけど深い、短いけど濃い。わずか10分だが、NHKのEテレで放送の美術番組「ねこのめ美じゅつかん」は、なんとも印象に残る番組だ。
番組を制作するNHKエデュケーショナルの牧野望チーフプロデューサーと、コンパスの伊場健一郎プロデューサーの2人に、番組の意図や、主人公であるネコに込めた思いをインタビューした。(聞き手・読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

番組名 ねこのめ美じゅつかん
放送日時 2021年8月31日(火)、9月7日(火)、9月8日(水) いずれも22:45~22:55
放送局 Eテレ(NHKプラスで、放送中や放送後7日間、パソコンやスマホで視聴できる) 

アートは渇望されている

ネコ目線で眺める印象派の印象は?(『箱根の印象派にしのび足』より)

―8月31日放送回『箱根の印象派にしのび足』では、箱根のポーラ美術館にネコの怪盗が潜入して、印象派の絵画を狙うという設定でした。もちろん盗みはせず、印象派の絵画をわかりやすく紹介する、という内容ですが、どうしてこのような番組を企画したのですか?

牧野望チーフプロデューサー 「no art, no life」というドキュメンタリー番組を制作し、関連して昨年夏(2020年7月23日~9月6日)に、東京藝術大学大学美術館で開催した特別展「あるがままのアート −人知れず表現し続ける者たち−」(NHKなど主催)を企画しました。
多くの美術館が休館を余儀なくされる中、(当時としてはまだ珍しかった)事前予約制にするなど感染症の対策を徹底した上での開催となりましたが、2万2455人(来場2万685人、ロボット鑑賞1770人)もの来館者がありました。
上野の美術館はシニアの層が多い印象がありますが、このときは子供連れや若い世代がとくに目立ち、コロナ禍だからこそ「アートは渇望されている」と思ったのがきっかけです。
外出がままならない中、アートを視聴者に届けることができれば、「心のビタミン」になるのではと企画しました。

『新宿のゴッホにごあいさつ』では大女優とその付き人ネコが登場

―今年3月に「ねこのめ美じゅつかん」の1回目と2回目が放送され、今回が3~5回目ですが、なぜネコなのですか。

牧野 子供たちや子育て世代、若い世代に、アートや芸術の素敵さを知ってもらいたい。裾野を広げたい。
そのためには、「美術は高尚なもの」と押しつけないようにしたい。<ネコ>なら、どうだろうかと。

―ネコはみんな好きですからね(笑)

アートとねこはにている

自由がスキ 縛られるのがキライ

ときどきヒトのココロをふりまわす

という番組冒頭の言葉も腑に落ちました。

牧野 最初に美術館に撮影を申し込んだときは、「ネコが忍び込む番組」と言うと、「えー?」と驚かれました。
あと、<潜入路>を裏口にできないかと相談すると、「防犯上ちょっと」と言われたり(笑)。
それでも、実際の美術館で<名画を盗もうとする怪盗>という設定が通るのも、ネコならでは、ですね。人間では難しかったでしょう。

さっそうと忍び込む怪盗ネコ(『箱根の印象派にしのび足』より)

―(8月31日放送の)ポーラ美術館は、天井部がガラスの建築なので、CGのネコ2匹がその天井からうまく潜入することができていましたね。

伊場健一郎プロデューサー 自然光を取り入れている点が魅力の美術館なので、忍び込むシーンの撮影は、天気の良い日を選びました。
撮影できるのが、開館前後の朝か夜に限られているので、雨が降ってしまい、ロケを延期したこともありました。
箱根の山の中にあり、天気の変化が激しいため、撮影前は美術館担当者に何度も電話で現地の様子を聞きながら進めました。

―印象派だけに、天気が雨や曇りだとがらりと印象が変わりますね。

伊場 10分の番組ですが、撮影にはものすごく時間をかけています。
朝、開館するギリギリの時間まで使わせてもらいました。
撮影には、僕たちスタッフだけでなく、美術館の人も立ち会います。学芸員や広報の担当者だけでなく、警備の方など、館全体で協力してくれました。

ネコの目線なので、床に近い位置から作品を見上げる、通常の美術品の撮影にはないアングルなどもあります。
大人の鑑賞法とは違う、小さな子供の目線に近い。これまで作品が見たことのある人も、目線を変えることで発見があるかもしれません。

ネコが虎と対決?(『和歌山の古寺でにらめっこ』より

牧野 撮影した美術館(8月31日・9月7日放送)や寺院(9月8日放送)のみなさんが共通して持っているのは、こうしたすばらしい美術品が日本にあること。特に若い世代にそのことを知ってもらいたい、アートと触れることで愉快になったり、豊かな気持ちになったりできることを、次世代に伝えていきたいという強い思いを感じました。

ただ、さきほど話したように「高尚なもの」と押しつけるつもりはありません。
「ネコ目線の美術ってなんだろう」という軽い気持ちで見ていただければ。
また家族みんなで気軽に旅行ができるようになった時に、番組で取り上げた場所を思い出して、旅先の候補にあげてもらえればうれしいです。


牧野望(まきののぞむ) 1991年NHK入局。主にドキュメンタリーの番組演出・制作。現在は「no art, no life」「知恵泉」を担当。主な作品「人知れず表現し続ける者たち」「京都人の密かな愉しみ」等。このほかにドキュメンタリー映画「千年の一滴 だししょうゆ」「陶王子 2万年の旅」(公開中)

伊場健一郎(いばけんいちろう) 1977年生まれ。東京造形大学卒業。番組制作会社コンパスに所属。主にドキュメンタリーや自然、山岳スポーツ等の番組やコンテンツを制作。現在はBS朝日「ウチ、“断捨離”しました!」やMBS「情熱大陸」などを担当。


番組名 ねこのめ美じゅつかん

『箱根の印象派にしのび足』8月31日(火)

『新宿のゴッホにごあいさつ』9月7日(火)

『和歌山の古寺でにらめっこ』9月8日(水)

いずれも22:45~22:55
放送局 Eテレ

NHKプラスで、放送中や放送後7日間、パソコンやスマホで視聴できる。NHKオンデマンド(有料)では3月放送の1回目と2回目も見ることができる(放送1年後まで)。

ねこのめ美じゅつかんの番組ホームページはこちら


アートの楽しさを再発見できる美術展ナビのインタビューまとめ

直前の記事

9月19日(日)にBS日テレで再放送 news zero カルチャー特別版『中村倫也とバンクシーと壁と。』

【放送日】9月19日(日) 14:00~ BS日テレ 【タイトル】news zero カルチャー特別版『中村倫也とバンクシーと壁と。』 【出演者】中村倫也(展覧会アンバサダー) 9月4日(土)に日テレ(関東ローカル)で放

続きを読む
新着情報一覧へ戻る