モチモチの木、きりえ【プレビュー】「生誕100年 滝平二郎展~ものがたりを描いた画家」秋田県立近代美術館で9月11日から

《モチモチの木COVER》1971 年28.5 x 48.5cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

生誕100年滝平二郎展~ものがたりを描いた画家
会期 2021911日(土)〜1114日(日) 会期中無休
会場 秋田県立近代美術館(横手市赤坂字富ヶ沢62-46
観覧料金 当日一般1200円、大学生以下無料
詳細は同館のHP
《かまくらの夜》1978 年24.0 x 22.7cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

『モチモチの木』などの絵本の挿絵や朝日新聞日曜版の“きりえ”で知られる作家・滝平たきだいら二郎(19212009年)の生誕100年を記念し、過去最大規模の回顧展「生誕100年滝平二郎展~ものがたりを描いた画家」が、秋田県立近代美術館(横手市)で911日(土)から1114日(日)まで開かれる。

ゆかりの秋田で画業を振り返る

画業初期の木版画から、絵本の原画、新聞に掲載された“きりえ”、さらに下絵などを含め、300 点以上を展示する。

《モチモチの木COVER》1971 年28.5 x 48.5cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)
《八郎pp.26-27》1967 年31.2 x 46.7cm 木版・きりえ/和紙・洋紙、墨・油性一色摺り(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)
《花さき山COVER》1969 年30.0 x 49.0cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

 

滝平は、児童文学作家の斎藤隆介(19171985年)とのコンビで、『モチモチの木』(1971年)や『八郎』(1967年)、『花さき山』(1969年)などの名作となる絵本を出した。滝平と斎藤のコンビは、戦後、滝平が秋田を訪れたときの出会いがきっかけだったという。

《秋田にて》1951 年30.0 x 22.8cm 木版/和紙、油性墨一色摺り(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)
《青い炎》1968 年70.0 x 49.5cm 木版/和紙、油性多色摺り、銀箔(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

人間とその生にまつわる物語

一貫して人間とその生にまつわる物語を主題とした滝平。今展では、代表作を通じて、作風の変化を見てとれるほか、創作の過程が分かる下絵も展示する。

《急がばまわれ》1975 年20.5 x 28.5cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

《急がばまわれ(下絵)》1975 年22.2 x 30.0cm 原稿用紙、鉛筆・カッター(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

一世を風靡した”きりえ”

 

滝平の画風が一世を風靡したのが“きりえ”。

滝平は1950年代から木版画と平行して、“きりえ”を試みていた。1969年から朝日新聞家庭版の連載で「きりえ」という技法名で紹介されたカットが掲載され、709月からは同紙日曜版に移動した。社会が大きく変化する70年代、古き良き時代を季節感とともに映し出す滝平の“きりえ”は絶大な人気を博した。

(左)《もらい風呂》1970 年41.5 x 13.9cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(右)《雨あがり》1971 年41.0 x 14.1cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

絵本『モチモチの木』の挿絵も、きりえで描かれたもの。彼らの絵本に通底する勇気や優しさがあらわれている。

『モチモチの木』について、同館の担当学芸員・鈴木京さんは、「勇気のある子供だけが見ることができる「モチモチの木」のかがやき。この大木は物語をつらぬく象徴的な存在であるとともに、主人公・豆太の心の成長や勇気を示す役割を果たしています。誰かのために、不安や恐怖に打ちち、困難に立ち向かうこと。これは戦争を生き抜いた滝平にとっても斎藤にとっても、心に秘めたテーマだったのではないでしょうか」と話す。

《猫山pp.20-21》1983 年28.5 x 48.6cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)
《ソメコとオニpp.20-21》1987 年27.5 x 47.0cm きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩(ⓒJIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.)

朝日新聞日曜版の連載終了後の1980年代の彼らの絵本は、コミカルで楽観的な空気が漂うようになるが、その根本には反骨精神がひそんでいるという。展示される『猫山』(1983年)や『ソメコとオニ』(1987年)からも、彼らの変わらぬ精神や願いを感じ取れる。

(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

生誕100年滝平二郎展~ものがたりを描いた画家
会期 2021911日(土)〜1114日(日) 会期中無休
会場 秋田県立近代美術館(横手市赤坂字富ヶ沢62-46
観覧料金 当日一般1200円、大学生以下無料
詳細は同館のHP