【プレビュー】閉塞感を打ち破る笑いと反骨 「没後160年記念 歌川国芳」展 太田記念美術館で9月4日から

「相馬の古内裏」個人蔵(PARTⅡ)

 

没後160年記念 歌川国芳
会場:太田記念美術館(東京都渋谷区)
会期:2021年9月4日(土)~10月24日(日)
PARTⅠ 憂き世を笑いに!―戯画と世相   9月4日(土)~26日(日)
PARTⅡ 江戸っ子を驚かす!-武者と風景 10月1日(金)~24日(日
休館日:月曜日(9月20日は開館)、9月21日、9月28日~30日(展示替えのため)
アクセス:JR山手線「原宿」駅(表参道口)より徒歩5分、東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前」駅(5番出口)より徒歩3分
入館料:一般1000円、大高生700円、中学生以下無料
詳しくはハローダイヤル(050-5541-8600)

江戸時代後期の浮世絵界を牽引した歌川国芳(1797~1861)。ありとあらゆるジャンルの作品を手掛け、多くの弟子を育て、現在も大勢の熱心なファンを抱える人気絵師のひとりだ。当時も不安定な世情の中、ユーモアあふれる戯画で庶民の人気を集めた国芳。本展では国芳の生涯と作品をあらためて振り返り、その魅力に迫る。コロナ禍の閉塞状況だからこそ、彼の作品に触れて私たちも元気をもらいたい。主な出展作品を紹介する(Ⅰ期、Ⅱ期で全点展示替え)。

「ほふづきづくし 八そふとび」(PARTⅠ)

国芳は10代後半で浮世絵師としてデビューし、売れない時期をすごしたあと、30代前半で描いた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」シリーズで大ブレーク。以後は勇壮や武者絵やコミカルな笑いを誘う戯画、独自の風景画、美人画、役者絵、子供絵など精力的に手掛けた。

「木曽街道六十九次之内 御嶽 悪七兵衛景清」(PARTⅡ)

反骨精神でも知られた。当時の幕政を暗に風刺していると受け止められた戯画もあり、奉行所に呼び出されることも。しかし国芳はへこたれることなく、次々に新しい作品を生み出していった。

「里すゞめねぐらの仮宿」(PARTⅠ)
「山海愛度図会 えりをぬきたい」(PARTⅡ)

新境地の開拓にも余念がなかった。大画面いっぱいの巨大モチーフで度肝を抜き、洋風表現を取り入れた風景画やさわやかな美人画など多彩な魅力にあふれる。常に現状を打破しようとするその姿勢も、見習いたいものだ。

「道外とうもろこし 石橋の所作事」個人蔵(PARTⅠ)

長い毛を振り乱して踊っているのは、歌舞伎役者に扮したとうもころし。後ろにみえるのは長唄の太夫と笛で、どちらも擬人化された野菜。野菜が歌舞伎を演じるというアイデアが斬新で、国芳のユーモアを凝縮したような逸品といえる。

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)