図録開封の儀!名刀からゆるい将軍直筆の絵まで「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」

徳川将軍の名宝をひもとく

福岡市博物館で7月16日から9月5日まで開催されている特別展「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」の図録を入手した。さっそく「開封」して内容を紹介したい。この図録は通販でも購入可能だ。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

家康の遺体が埋葬された久能山東照宮の宝物

東照宮は日光をはじめ全国各地にあるが、静岡市の久能山東照宮は、徳川家康の遺言に従って亡きがらを埋葬する特別な霊廟である。
その遺言について図録の冒頭で説明されている。
「遺体は久能山に納め、葬礼は江戸の増上寺で行い、位牌を三河の大樹寺に立て、一周忌を過ぎた後に日光山に小さな堂を建てて勧請せよ、八州の鎮守となろう、と告げた」
日光の東照宮が「小さな」規模にならなかったため、遺体とともに愛用の甲冑や刀剣が納められた久能山東照宮は、世界遺産でもある日光東照宮ほど、知名度が高くなかった。ただ、2010年(平成22年)に、社殿が国宝に指定されたことで、注目度があがってきている。
今展では、その久能山東照宮の宝物約150件が一堂に公開されている。展覧会の図録にはその宝物の写真と解説が載っているが、実に多種多彩。だいたい大きく以下の3つにわけられるようだ。

一つは、徳川家康の愛用品
二つは、徳川歴代将軍が奉納した甲冑や刀剣
三つは、将軍やゆかりの人々による書画

健康マニア家康の薬の自作グッズ

杖から時計まで幅広い家康の愛用品

まずは家康の愛用品から紹介する。
家康の愛刀「ソハヤノツルキウツスナリ」など名品はもちろんだが、面白いのが、日用品だ。
剣術の稽古に使ったという木刀や晩年に使ったとみられる杖や、鷹狩りのときにかぶった草で編んだ藺笠など、家康の生活がモノで浮かび上がってくる。
健康オタクだったといわれる家康の製薬道具の青磁鉢と乳棒、薬刻くすりきざみ小刀、薬を入れたガラス壺「びいどろ薬壺」などなど。
家康が使ったメキシコ製の鉛筆は、現存日本最古の鉛筆。鉛筆というと日用品のように思えるが、スペイン国王から送られた洋時計(1573年製、1581年改造、ハンス・デ・エバロ作)のように、当時は非常に珍しいものだった。

鉛筆の下の眼鏡は「シニアグラス」とのこと

名刀「ソハヤノツルキウツスナリ」の意味は?

「ソハヤノツルキウツスナリ」はこの次のページに銘の部分がアップで掲載

「ソハヤノツルキウツスナリ」については、堀本一繁氏(福岡市博物館主任学芸主事)が論考を寄せている。
この刀は家康が生前にもっとも愛用したとされる鎌倉時代に作られた太刀である。茎に「妙純傳持」「ソハヤノツルキ」「ウツスナリ」と銘が刻まれている。
妙純という人物が持っていた「ソハヤノツルキ」という刀を写した(模した)ものなどと様々に解釈されているが、堀本氏は「『ウツス』は写しの意味ではなく、別の語句を考えるべきかもしれない」と問題提起する。この図録を読んだ刀剣ファンの間で、議論が起こっていくかもしれない。

二つ目の徳川歴代将軍が奉納した甲冑や刀剣。
歴代将軍の甲冑や刀剣がずらり。2代将軍秀忠の現存唯一の具足など、その武の美は、圧巻のラインナップだ。

珍しい2代将軍秀忠の具足

ヘタウマな絵のベースにある狩野派の教え

注目したいのが、将軍たちの書画、それも画のほうだ。
甲冑・刀剣については、将軍たちは公の立場である武人としての立場が強く、それぞれの個性が反映されるとは限らない。
将軍たちは、武人のたしなみとして、書や画も学んでおり、なかなかの腕前だ。画は、幕府の奥絵師の狩野派から教わったという。

佐々木あきつ氏(福岡市博物館学芸員)は、「近年、徳川歴代将軍の自筆絵画に注目が集まっている。(略)三代家光の絵を中心に将軍自筆絵画の面白みが取り上げられ、『ゆるい』『かわいい』と人気を博すようになった。将軍の描く絵は職業絵師のそれとは異なり、時に脱力を誘うような仕上がりであることもしばしばあるが、『意外とうまい』と驚く声もあり、いずれにせよ将軍の権威的なイメージとのギャップが好評価につながっている」と図録の論考で指摘する。
「へたうま」に見えるのも、この論考を読むと、狩野派のレッスンによる基本的な技術の取得とともに、将軍だからこそ完成品でない状態の絵も珍重され残されてきたことの背景など、歴史的な経緯からも考えることができるだろう。
そうした理屈をのぞいても、「ゆるい」と感じるのは、やはり家光の「枯木梟図」だが、図録の見開きのセットになっている家光の「松山図」も絶妙なゆるさを感じる。

味わい深い3代家光の画

10代将軍家治の「臥馬図」は、馬を後ろから見た図だが、抽象度がかなりの高さ。家治は絵が抜群にうまかったようで、「古画を模写すれば原本と見分けがつかないと奥絵師たちに感服された」そうだ。

10代家治の「臥馬図」(左)

皇女和宮がみずから描き残した江戸城での火災体験記録

見逃せないのが、「和宮戯画」。
和宮は、14代将軍家茂の正室・和宮親子ちかこ内親王である。天皇家から将軍家に嫁いだ和宮が、文久3年(1863年)に江戸城で発生した火災時の体験を後日、みずから絵と文で書いた、いわば絵日記である。「寒くはあらっしゃらんか」「大変でございますね」などのセリフも再現。江戸城の大奥で起きた出来事を当事者が絵にして残していたとは、驚きだ。和宮に絵心があったことに感謝したくなる。

和宮直筆の火災の記録「和宮戯画」

図録の論考は上で紹介した2本を含む以下の計3本が掲載されている。
・堀本一繁「徳川家康所用・太刀 切付銘 妙純傳持、ソハヤノツルキウツスナリ(無銘 三池光世作)について」
・末吉武史「本殿安置の安鎮曼荼羅図と地神・荒神像」
・佐々木あきつ「徳川歴代将軍の自筆絵画に関するいくつかの覚え書き~狩野派を通じた中国古典の学習について~」

図録は2500円、特別展の会場のほか、通販特設サイト(送料別)で全国から購入できる。
*写真はいずれも図録から。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)
特別展についてはこちらの記事もご覧下さい。
【開幕】徳川将軍ゆかりの品々が集結「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」(福岡市博物館)

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