北斎の魅力 多角的にとらえる 「THE北斎 -冨嶽三十六景と幻の絵巻-」

葛飾 北斎「桜に鷹」(前期展示)すみだ北斎美術館蔵

展覧会名:「THE北斎 -冨嶽三十六景と幻の絵巻-」

会期:2021年7月20日(火)~9月26日(日)。月曜休館、ただし8月9日、9月20日は開館し、8月10日、9月21日を休館 

会場:すみだ北斎美術館(東京都墨田区、JR総武線両国駅から徒歩9分、都営大江戸線両国駅から徒歩5分)

観覧料:一般1200円、高校生・大学生900円ほか

※詳しい料金などは公式サイト(https://hokusai-museum.jp/thehokusai2021/)を参照

北斎の魅力とは何だろうか。

大胆な構図? 精緻な描写力? それとも着想の面白さ?

すみだ北斎美術館で開催中の「THE北斎」を見ていると、それはすべて正解であり、それだけがすべて正解ではないことがよくわかる。「構図」「描写」「着想」、この3要素が複雑に組み合わさって、その絵の魅力が生まれているからだ。

葛飾 北斎「桜に鷹」(前期展示)すみだ北斎美術館蔵

例えば、「桜に鷹」などに見られる精緻で写実的なタッチ。デッサン力の高さは「北斎漫画」などでもおなじみだ。観察眼の鋭さは、江戸川柳などでいう「うがち」の精神に通じるものがある。

葛飾 北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」(前期展示)すみだ北斎美術館蔵
葛飾 北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」変わり図(前期展示)すみだ北斎美術館蔵

「冨嶽三十六景」の中でも有名な「山下白雨」を見ていると、その「着想」の面白さもよくわかる。山頂部分は快晴だが、ふもとの辺りでは雷が鳴っている。その対比をきわめてシンプルに描いているのだが、後に摺られた、山裾に松林が加えられた「変わり図」と比べると、はるかにシャープでソリッドだ。「何を描くか」のテーマ設定、「どう描くか」というアプローチ、2枚を比べると北斎のアイディアの鋭さが際立つ。

葛飾 北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(後期展示)すみだ北斎美術館蔵
葛飾 北斎「諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧」(前期展示)すみだ北斎美術館蔵

そして、「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」や「諸国瀧廻り」の「木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧」でみられる構図のすばらしさ。スケール雄大で躍動的な自然を、抽象から具象まで、様々なアイディアとテクニックを使いながら世界を描き出していく。〇や△など、幾何学的な意匠をも効果的に使いながら、一瞬の動きを切り取ったり永の静寂を表してみたり。まさしく融通無碍な筆致なのである。

葛飾 北斎「隅田川両岸景色図巻」両国橋から柳橋付近(前期展示)すみだ北斎美術館蔵

今回は、両国橋付近から新吉原へと向かう隅田川両岸の風景を描いた「隅田川両岸景色図巻」をすみだ北斎美術館では5年ぶりに公開。優雅な雰囲気を漂わせた絵巻物で、おっとりと楽しんで描いているような雰囲気が見て取れる。

特に派手な仕掛けも大向こう受けしそうなケレンもない今回の展示だが、ストレートなアプローチで北斎の多角的な魅力を伝えてくれる。かゆいところに手の届くような解説は、「すみだ北斎美術館」の名前にふさわしい。

〈葛飾 北斎「桜に鷹」ほか四面版木火鉢〉個人蔵、すみだ北斎美術館寄託(通期展示)

(事業局専門委員 田中聡)


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